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放課後のレイプ魔

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「い、いや……!!!!!!!」
夜の公園に女のくぐもった声が響く。
女には猿轡がされており、声は小さく漏れるだけ。
「彼」は、植え込みの蔭で女を組み敷いていた。

あたりは漆黒に包まれており、人通りは絶えている。
誰も「彼」の姿を見ることはできないはずだった。
「……!! ……!!」
女は身を振るって抵抗する。
しかし、「彼」の怒張したものはすでに女の秘部へ突き刺さっている。
いくら暴れようとも、彼の抽送を邪魔することはできない。

ぬちゃ……っ、ぬちゃ……っ

「彼」が腰を振るたびに、湿った音がする。
そのたびに女はおぞましさと快感の入り混じった複雑な表情を浮かべるのだ。
ああ、これだから──

──レイプはやめられない。

相手など誰でも良い。
「彼」はこの女の名前も素性も一切知らない。
彼は、人食い鮫のように獲物を求めてこの公園で待ち構えていただけ。
そこに、この無防備な女が通りかかったというわけだ。

女は恐怖に引き攣った表情で「彼」を見る。
女の瞳の中に映り込む「彼」の顔は、吸血鬼ドラキュラ。
無表情なドラキュラ伯爵のマスク。

腰を奥まで突き込んだ。
女の身体が弓なりに反る。
くくっ、やはり、恐怖で緊張しきった女の締まりが最高だ。
「彼」はそのままスパートをかけ、激しい抽送の後に女の中で精を放った。
女がびくびくと痙攣する。

「彼」は女の中から自分の槍を引き抜いた。
「ふふふ、覚えておけよ。おまえを犯したのは──Xだ。『放課後のX』」

そう言い聞かせると、彼は大振りのサバイバルナイフを取り出した。
刃が一瞬だけ闇にきらめいた。
女の顔に恐怖が浮かび上がる。

「X」はナイフの刃先を女の会陰部に当てると、すうっと引く。
二本の直交した線を描き、Xの字を描く。
その線上に後から鮮やかな血の球が盛り上がってきた。

「くくくっ」
と彼は無表情なマスクの奥で笑った。

 

学校のチャイムが鳴った。

ここは相原翔史の通う、都内の某三流私大の講義室。
講義が終わり、学生達はざわめきながら部屋を後にしようとする。

「ああ、皆さん」
教授がマイクを通して呼びかけた。

「最近、この学校の近辺で強姦事件が頻発しています」
講義室が静まり返る。

「犯人が逮捕されるまで十分に気をつけて。
女生徒はひとりで帰宅したりすることのないようにしてください」
教授の言葉が終わると、講義室のざわめきが一層大きくなった。

「──連続レイプ魔って、ニュースでやってる『放課後のX』だろう?」

「ドラキュラのマスクをかぶってるんだって。怖いわ」

「『放課後のドラキュラ』と呼ぶ人もいるらしいよ」

「二十件近くのレイプ事件を起こしているらしい。
でも、犯人はまったく目星がついていないんだ」

大学はここ最近、『放課後のX』の話題で持ちきりだ。
メディアではローカルニュースで少し取り上げられる程度だが、近所での注
目度は高い。

そんなクラスの噂話には加わらず、翔史はノートを片付けると、すぐさま席
を立った。

翔史はこの大学の三年生であるが、友人達との関わりは少ない。
目立たず、地味で人畜無害な男という一定の評価を得ていた。
しかし、それも限度を過ぎたのかも知れない。

気弱でなんにでも従順にやってきた彼を、無抵抗主義者と勘違いしていじめ
の標的にする奴が現れてしまったのだ。

 

「──おい、相原ぁ」
いそいそと講義室から退散しようとした翔史に、背後から声がかけられる。
「なんだい」
翔史は振り返りながら、穏やかな口調で問いかけた。
確認する前から相手はわかっていた。
いつもくだらないことで翔史にかまってくる男、石黒だ。

「なぁ、相原。実は、おまえに頼みがあるんだ」
果たして、大柄で強面の石黒が背後には立っていた。
「──実はな、ある場所に落し物をしてしまってな。
おまえに取ってきて欲しいんだよ」

石黒はニヤニヤしている。
こんな時は明らかに罠を張っている。
「僕は忙しいんだ。落し物なら自分で拾いに行けばいいだろう?」
翔史ははっきりと断った。
しかし、石黒は譲らない。
「おまえでなければ取れないんだよ。すぐに終わるから──」
石黒は低い声で言った。
「──さっさと取ってこいよ」
翔史の襟首を掴む。
「それとも、殴られるか?」

翔史は心の中で舌打ちした。
石黒ごときに遅れはとらないが、面倒を起こして目立つことが彼は何より嫌
だった。

昼の翔史は、空気のようにならねばならないのだ。

「──わかったよ。その落し物ってのはどこだい?」
翔史は苛立つ気持ちを押し殺し、できる限りのんびりした声で言う。
「ふふふ、そうこなくっちゃな。こっちだよ」
石黒が意地悪げに笑った。
そして、連れて行かれたのはなんと、女子用のトイレであった。
石黒の奴め、おまえは小学生か?
翔史は心の中で毒づいた。しかし面には微塵も出さない。

「その個室の中に大切な物を落としてしまったんだ。取ってきてくれ」
ニヤニヤする石黒。
ちっ、もう大体ネタは割れたが、仕方がない。
翔史は素早く女子トイレに入り、個室のドアを開けた。

「きゃあっ!!」
その途端に、女の甲高い悲鳴が上がった。
「あ……っ」
中の便器に座っていたのは女生徒。
ただし、翔史の予想とは少し違った人物だった。

──柏木恭子。

石黒の周囲にいる頭の軽い女達とは一線を画す存在。
頭脳明晰にして人を惹きつける、華のある美しさを持った学部の女王。
それが恭子だった。

一瞬、翔史は彼女はただの被害者に過ぎないのかと思った。
しかし、わざわざ個室の鍵が開けてあったこと。
今、下着を下ろすわけでもなく足を組んで便器に座る恭子のにやついた表情。
彼女は、疑うこともなく共犯者なのであった。

「相原、あんた、女子トイレを覗くなんて、大変な事をしたわね」
恭子は冷たい笑いを浮かべて言う。
「もし私が訴えたら、あんたの人生、終わるわよ」
「そんな……、僕は石黒くんに頼まれて……」
「俺はそんなこと知らないぜ」
すぐ背後から、石黒の声がした。
「おまえが勝手に覗いたんだろう?」
石黒がへらへらしながら言う。
大方の予想はついていたのだが、相手が柏木恭子とは思っていなかった。
これは少し、厄介なことになるかも知れなかった。

「──相原、私の靴を舐めな」
と、柏木恭子は便器からすっくと立ち上がって言った。
「……靴を?」
恭子は片脚を上げて便器に乗せる。
今日の彼女は太腿も露わなミニスカートだから、そんな格好をすれば際どい
高さにまでずり上がってしまう。
「舐めたら、許してあげるわ」
恭子は傲然と言う。
女王のような彼女には、どうやら嗜虐癖があるようだった。

もし権力のあるこの女を敵にまわしたら、空気のように存在を消す大学生活
など望むべくもない。
翔史は胸の中でしまった、と呟いた。
しかし、何よりもここは目立たないのが第一だ。
身を低くしてこのピンチを乗り切るのだ。
「……わかったよ。舐めたらいいんだね」
翔史は便器の上に掛けられた恭子の足に顔を寄せた。
大きなモノトーンのリボンのついたミュールである。そのリボンの部分をそ
っと舐めた。

「私ね──おまえみたいな弱い男がキライなのよ」
翔史の頭上から恭子の氷のような声が聞こえてきた。
「おまえみたいなゴミ虫がキライなの」
不意に翔史の髪が掴まれた。
そして、強烈な力で頭を便器の中に突っ込まれる。
「……っ!! ……っ!! ぶはっ、ごほっ、な、何しやがる!!」
あまりの怒りに一瞬、我を忘れて怒鳴る翔史。

「ゴミ虫をトイレに流して何が悪いの?」
恭子が弾けるように笑う。
そして、再び頭が便器に突っ込まれる。
ジャケットを脱がされ、上から詰め込まれる。
「あんたはきっとどんな女にも相手にされず、一生童貞で死んでいくんでし
ょう。
だって、ゴミ虫に抱かれたい女なんているわけがないもの。

──もし、あんたに抱かれるくらいなら、私は死を選ぶわ。

ふふふっ、このゴミ虫、トイレで流されてしまえ。あんたなんて、死んでし
まえばいいのに」
恭子の哄笑が響いた。

一瞬だけ頭上を振り仰いだ翔史の目に写った恭子の高慢な顔。
顔の下に広がるスカートと、レースの黒いTバックショーツ、はちきれんば
かりの尻肉。

貴様、俺を怒らせやがったな。

翔史の胸の奥に黒い怒りが沸々とわきたつ。
おまえを俺の前に這い蹲らせてやる。
翔史の唇の端が歪んだ。おまえこそ、

──死にたくなるほどの屈辱を味あわせてやるぜ。

 

深夜の公衆トイレ。
「放課後のX」は今夜も哀れな被害者を犯している。

薄汚れたタイルの上に女を四つ這いにさせ、背後から腰を打ちつける。
腰が女の尻を打つと、鈍い肉の音がする。
そして、そのたびに女は髪を振り乱し快楽に咽び泣く。

「X」にとって、レイプは「狩り」だった。
狼が羊の群れを襲うのに似ている。
理由などない。
本能なのだ。

狼が羊を追い回して喰らうこと。
逃げ惑う女を犯し、陵辱し尽くすこと。

まるで原始の肉食動物に戻ったような動物的な興奮と酩酊感。

遥か太古、人間がまだ狼だった頃の遺伝子が甦るように、血が沸きたつ。
昼の生活では味わえない「生きている実感」。
すべての物が鮮やかに色づき、何もかもが薔薇のような香りを放つ。
あらゆる感覚が極限まで研ぎ澄まされる覚醒。

それは、破滅と隣り合わせで初めて得られる魔性の悦楽。

だが、弱い羊ばかりでは、狼の牙も錆びてしまう。

そう、時には
──強い羊を狩ることがあってもいいはずだ。

 

すべてが闇に包まれる深夜。
「放課後のX」は、帰途にある柏木恭子の後をつけていた。

恭子はご機嫌な様子で人通りの少ない夜道を歩いていく。
テニスサークルのコンパですっかり帰りが遅くなったのだ。
警戒心も無くし、千鳥足。

(くくく、毎日尾行けてきた甲斐があったぜ。まさに絶好の条件だ)
「X」は恭子の暮らしぶりを徹底的に調べ上げ、尾行し続けてこの好機へと
辿りついたのだった。

大学にほど近い場所に下宿している恭子は、自転車通学である。
「X」はその自転車をコンパの最中に盗んで、近くのどぶ川に叩き込んだ。

タクシーを呼ぶには家が近すぎる。
今日の所は歩いて帰ろう。

──その僅かな心の隙間を、凶悪なレイプ魔は見逃しはしない。

「X」は唇を歪めると、音もなく恭子の背後に近づいた。

 

柏木恭子は、夜道をひとり歩いていた。

ほろ酔いで、とても気分が良い。
まるで、雲の上を歩いているよう。
それは、決してアルコールのせいだけではなかった。

(うふふ、貴志先輩と仲良くなっちゃった)
白石貴志は、以前から恭子が思い焦がれていたテニス部の憧れの美男子。
その彼と、先ほどまでのコンパで意気投合したのだ。

(貴志先輩、私に彼氏いるの? って聞いてきたな。あれって、やっぱり遠まわしなアプローチなのかしら)
そんなことに思いを巡らせるだけで、恭子は天にも昇る心地だ。

(貴志先輩の方からメールアドレスと電話番号聞いてきたな。絶対、私に興味を持ってる。うまくしたら、先輩と付き合えるかも)
翔史の前では高慢な女王だった恭子も、恋する男に対しては純情な面があるのだった。

その時、バイブレーションとともに大音量の着メロが流れた。
恭子は携帯を取り出してパカッと開く。

「柏木さん、ふたりきりで会えないかな。惣社公園のベンチで待ってる!」

送信者:白石貴志

恭子の胸が高鳴った。
(先輩が待っている)

そうだ。
貴志先輩は公園の大きな入り口から来ると思って待っているはずだ。
そこを背後から近づいておどかしたら、きっと驚くに違いない。
夜遅いけれど、それほど長い距離ではない。大丈夫なはずだ。
恭子は、その思いつきに胸を躍らせ、進路を変えて山の方へ続く裏道を通ることにした。

その時、彼女の少しだけ後方で、薄く笑った男がいることに、勿論彼女は気づくはずもなかった。

 

(意外と、怖いわね……)

恭子は、人通りの絶えてしんと静まりかえった裏道をひとり歩いていた。
大通りを使わなかったことを後悔している。
よりにもよって、今日は新月。
街灯もない、真の闇。
恭子の脳裏に、ふと「放課後のX」のことが思い浮かんだ。

(そんな、都合良くこんな時に出たりしないわ)
彼女は敢えて強がって自分を奮い立たせた。そうしないと怖かったからだ。
なぜなら──

──さっきから、足音がふたつ聞こえていたからだ。

あたりは真の闇。
もし誰かが潜んでいたとしても、到底見つけることはできない。
急いで。
急いで先輩の下に行こう。
恭子はしばしば後ろを振り返りながら歩いていく。
走りだしたら、それを契機に何者かが襲ってきそうな予感がしたからだ。
また振り返る。
しかし、後ろには誰もいない。
では、この足音は何なのだ。

──誰だ。

恭子は、ぴったりと足を止め、後ろを向いた。
足音は消える。
じいっと目を凝らしてみるが、人の姿は見当たらない。

幽霊の正体見たり枯れ尾花、という。
(私も案外小心者ね。ただの聞き違いだわ)
恭子はほっと息をついて、前を振り向いた。

そこには、ドラキュラのマスクをかぶった男が悄然と立っていた。

恭子は、絶叫を上げて風のように走り出した。

 

行き先も考えずに、とにかくあの男を背に逃げる逃げる。
全力疾走。
身なりなどかまっていられない。
髪を振り乱し、服が脱げかかる。
それでもおかまいなしだ。
つむじ風のように疾駆。

(あれが、放課後のレイプ魔、「X」だ)
ドラキュラのマスクをかぶっていると、聞いたことがある。
間違いない。

どんなに必死で走っても、やはり恭子は女だ。体力に限界がある。
彼女はやがて息が乱れ、足元が怪しくなってきた。
しかしそれでも捕まるわけにはいかない。
無我夢中で走るばかり。

しかし、振り返ると不気味なマスクを被ったレイプ魔は手を伸ばせば届くほどの距離にいる。
(~~~~~~~~!!)
再び恭子は必死になる。

「ははは、逃げろ、逃げろ」
後方から、愉快げな男の声が聞こえる。
なんということだ、この男は息を乱していない。

必死になって逃げ惑う恭子の姿を見て、楽しんでいるのだ。

恭子は泣きそうになった。

 

どれくらい、走っただろうか。

恭子は疲れ果ててばったりと倒れ込んだ。
(もうだめだ……、走れない)
無力感が押し寄せる。
立ち止まることは即ちレイプを意味する。
だから、必死で走った。だが、もう限界だ。

すっかり公園の雑木林の奥に入ってしまい、もはや人の姿など見つけるべくもない。
よりによって、こんな所でレイプ魔とふたりきりとは。

「……どうした? もう逃げないのか? くくくっ」
男は気に障る笑い声を立ててゆっくりと恭子に近づいてくる。
まるで獲物に近づいてくるガラガラ蛇だ。
恭子は体中で荒い息をするのに必死で、何も口にできない。
ただ、恐怖に引き攣った顔で、地面を這いずって逃げようとするばかり。
腰が抜けたように無様な逃げ方だ。

「なぜ、おまえを捕まえずに逃げさせ続けたか、わかるか?」
表情のない不気味なドラキュラマスクは語る。

「おまえに精一杯の抵抗をさせたかったからだよ。
しかし、それでもおまえは俺に敗れて犯される。

つまり、おまえはただ犯されるだけじゃない。

その敗北感に打ちのめされながら犯されるんだ。

──女の屈辱感、敗北感、それこそが『放課後のX』にとって最高の美味なのさ」

そして異常性欲者は、くくくっ、と不気味な笑い声を立てて近づいてくる。
男は、瞬間、電光のように恭子に飛び掛かり、その服を引き裂き始めた。

 

「やめろよっ!! ふざけんなっ!!」
恭子は滅茶苦茶にもがいて、レイプ魔に蹴りを入れようとする。
僅かでも威嚇しようと、口調も乱暴にする。
「いいね、もっと抵抗しろ。もっと暴れろ。

──無駄な抵抗を踏みにじってレイプするのが俺は大好きなんだ」

蹴った足を押さえられれば、身体を跳ね上げる。
腹を押さえられれば、首を左右に振り乱す。
恥も外聞もない。
とにかく暴れる。

「やぁだっ!! てめぇ、ふざけんなよッ!! 殺すぞッ!!」
「ああ、その精一杯の虚勢が最高だ」

恭子が泣き喚く間にも、「X」は手慣れた手つきで服を破り、剥ぎ取っていく。
みるみる恭子の白いへそ、ショーツ、おおぶりの乳房が露わになっていく。

不気味なレイプ魔は恭子の乳房を掴んだ。
世にもおぞましい感触だ。
「てめぇ、触ンなよっ!! 気持ち悪いんだよっ」
男は恭子の抵抗を無視して乳房を揉みたてる。
(気持ち悪い……、最悪っ、最悪だっ)
恭子の目から涙があふれだす。
そして、ついにショーツが剥ぎ取られ、恭子の股間を隠すものはなくなった。

(入れさせないっ、それだけは許さないっ!)
恭子は腰を引く。
この悪魔のような男のものを受け入れることだけは絶対に嫌だ。
どんなことをしても避けねばならない。
男を殴ろうとして握りこぶしを振り上げる。
その時、闇の中に青白い光が走った。

ガチャッ

恭子の両手首は、強固な手錠で戒められていた。

 

レイプ魔は恭子の両脚を抱え上げ、愉悦の谷間へと指を差し入れた。

にちゃ……っ

「触んなよっ!! 死ねっ!!」
気の強い恭子は精一杯抗うものの、両手をつながれ、脚をひねり上げられては、女の谷間を守ることはできない。
陵辱者のされるがままだ。

にちゃ……っ、にちゃ……っ

「気持ち悪いんだよっ!」
しかし、口ではそういうものの、恭子は花唇に快楽の兆しを感じ始めていた。
この不貞な陵辱者は乱暴なようでいて、とても繊細な愛撫を施してくるのだ。
ねちっこく、それでいてここぞという所には激しく。
そして、恭子の意思に反して、彼女の奥の襞はギュウギュウと収縮を繰り返す。
まるで、卑猥にも男根を求めているかのよう。
この男の愛撫は、あまりにも巧みに恭子の性感をとろかしていく。
続けられれば、理性のタガが外れてしまいそうだ。

「や、やめろ……よ……」
「なんだ、声が弱々しくなってきたな。感じてきたのか?」
「だ、誰が……っ!」
恭子は真っ赤になって否定する。
「そうは言っても……ほら。おまえの大切な所はこんなに俺の指を締め付け
てきて離さない」
「そ、それは……」
「おまえは感じているんだよ」
陵辱者はたたみかけるように言う。

「──レイプ犯に触られて感じているんだ」

くくくっ、と男は笑った。

(そんなことはない、絶対にない!)
恭子は必死で唱え続ける。
彼女の自我は崩壊寸前だった。

「俺はな」
と闇の中に浮かび上がるドラキュラは言う。
「暴力はできる限り振るわずに犯す。暴力によってではなく──

──快楽で屈服させるのが俺の流儀だ」

見ると、いつの間にか「放課後のX」は己の男根を取り出していた。
「やだ……っ、それだけはいや……っ、許して……っ」
恭子の目から涙がこぼれる。
なぜ嫌なのか。
犯されることが嫌なのか。
それとも、快楽で我を失うのが嫌なのか。
もはやそれすら、恭子にはわからなくなっていた。

しかし、悪の陵辱者は恭子の言葉を無視。
ズブズブと彼女の秘肉へと男の槍を沈めていった。

 

恭子は両脚を肩に担がれ、正常位で陵辱鬼に串刺しにされた。
(~~~~~~っ!!)
意識が飛びそうになる。
目の前が真っ白。
心は快楽に塗りつぶされて空白なのに、肉体は燃え上がる。
まるで制御できない快感炉の暴走。
「くくく、最高の締め付けだ。俺からそんなに精子を搾り出したいのか?」
悪魔が楽しげに言いながら腰を振る。
恭子は否定したい。
だが、槍が突き込まれる度に気絶しそうな快楽が送り込まれ、何も口にでき
ない。
そして、その度に悪魔の言葉通りに彼女の腟肉が狂ったような収縮を連発す
る。
まるで秘部が淫乱な別人格を持ったようだ。

(ああ、どうしてなの。どうしてこんなに感じるの?)
彼女は、過去の恋人達とのノーマルなセックスよりも明らかに興奮していた。
(私は淫乱なのかしら。今まで気づかなかっただけで……)

それは、どうしても認めたくない。
だが、こんなにも気持ちが良い。

放課後のドラキュラは恭子の身体をひっくり返した。
後背位である。
「今度は、お高くとまったおまえを後ろから犯してやるぜ。雌犬のようにな」
男の言葉に、恭子はぞくっとする快感を覚えて、身を震わせた。

「ふふん、これは驚いたな。貶められて感じるなんて、どうやらおまえはマ
ゾのようだぞ」
男は馬鹿にしたように笑った。
「ち、違うわっ! 私はマゾなんかじゃない!」
(絶対に違うはずだ……っ!!)
しかし、背後から犯される屈辱的な姿勢に、紛れもなく恭子は興奮している
のだった。
身体中が真っ赤に火照り、熱い。
情欲の狼が腰を尻肉に打ち付けるたびに、背筋を貫くような激烈な快感に襲
われる。
恭子は髪の毛を振り乱して喘ぐ。
汗がべったりと身体に張り付いている。

(……あっ、まずい……)
恭子は、堪え切れない鼓動を秘肉の底に感じた。
「あ……っ、あ……っ」
その変化に男は気付き、腰を激しく突きこみ始めた。
「いやだ……っ、やだ……っ、私、こんなのでイキたくない……っ」
「イクんだよ。おまえはレイプ魔に外で犯されてイクんだ。

──くくく、おまえは変態女だって、自ら証明するんだ」

恭子の秘部の奥で痙攣が起こった。
そして、それは身体中に伝播。
恭子の世界は真っ白になり、「かはっ」と喉の奥から言葉にならない声を
洩らして恭子は果てた。
男は世にも楽しげな笑い声を立てて、そんな彼女の中に思うさま精液を吐き
出したのだった。

 

(私は、イカされた……。レイプ魔に犯されて、イッてしまった……)
恭子はポロポロと涙をこぼす。
(もう駄目だ。私は元に戻れない)
すっかり気力を失った恭子の様子を見て、男は彼女から離れている。

しかしその時、すぐ近くで恭子の携帯の着メロが鳴った。
メール。
(貴志先輩!)
恭子の目が見開いた。
そうだ、まだ惣社公園のベンチに彼が待っているはずだ。
携帯を素早く拾う。

恭子は正気を取り戻し、素早く立ち上がって駆け出した。
貴志先輩なら、自分を救ってくれる。
その希望が恭子を地獄から生還させた。
両手に手錠をかけ、全裸のまま彼女は夜の闇を走る。
背後から、放課後の悪魔が追いすがってくるのを感じながら。

 

携帯を開き、110番をコールすることも試みる。
しかし、少しでも走る速度を落とすと男の手が迫る。
全力疾走することで、やっと悪魔の手から逃れることができるのだ。

(このまま、先輩の待つベンチへ走り着こう)
そうすれば、何はともあれ助かる。

まっとうな世界へ戻れる。

走る。
走る。
しかし、手錠につながれた手は不自由極まりない。
携帯を使おうとすると、瞬時に男の手が伸びてきてそれを奪おうと掠める。
恭子は全力疾走に切り替えざるを得ない。
嫌な予感がした。
この男はさっき、わざと恭子を捕まえずに走り回らせた。
まるで、猫が鼠をいたぶるように。
まさか、今回も……、

──泳がされている?
この丘を越えれば、いよいよ貴志先輩の待つベンチが見える……。

もう少し、という所で恭子は腰に大きな衝撃を受けて地面に投げ出された。
背後から体当たりを受けたのだ。

──負けるか。

恭子は這いずって前へ進む。
そして、遠く微かにベンチが見えた。
そこには、ぽつんと座った男の背中がひとつ。

「貴志先輩っ!!」
恭子は力の限り怒鳴る。
「助けてっ、先輩、助けてっ!! ……もぐっ」

後ろから口に布のような物を押し込まれた。
声が出ない。
(貴志先輩、気付いて……っ!!)

しかし、ベンチに掛けた貴志は気付かない。

「さて」
と、背後の悪魔は恭子を乱暴に組み敷いて言った。
「今度は、あの男のすぐ近くでおまえを強姦してやる」
強姦魔は愉しげに囁いた。
今や、恭子がここまで泳がされた意図は明らかだった。
恭子は力の限り首を横に振って拒絶の意思を示す。

「あの男のすぐ近くでおまえは感じるんだ。

おまえが淫乱な雌豚だって、骨の髄まで思い知らせてやる。

くくく、俺が犯すのはおまえの身体だけではない。

──俺は、おまえの心まで犯す」

冷酷な陵辱者は、凶悪な男の牙を恭子の中に抉り入れた。

 

(嫌だ、嫌だ)
男の悪意を具現したような槍に突かれ、恭子は涙をこぼす。
先ほど犯され続けたせいで、秘肉は快楽の受け入れ態勢をとっている。
彼女の意思とは反対に男の欲望を引き込むように収縮する。
「くくく、きつく締めるなよ。そんなに気持ちがいいのか?」

(違う)
と思っても、恭子の女の襞は貪欲にペニスから快楽を引き出すのだ。
気持ちが良すぎる。
気が狂いそうだ。
そして、それは邪悪な陵辱者の言葉を裏打ちするようで。

屈辱の極致だった。

突然に、口から布が取り払われた。
「!?」
男の槍が不意打ちに恭子の子宮の奥底に突き込まれる。
「ああああっ!!」
反射的に甲高い声を上げる。
そして、背筋が凍った。

──貴志先輩に、聞こえる。

もう、助けを求められるような状態にない。
ただ、出るのは快楽の声。
もし、こんな姿でいやらしくあえいでいるのを見られたら……。

「どうした、気持ち良いなら、声を出してもいいんだぞ。くくくっ」

悪魔が不気味に笑いながら、腰のリズムを早めた。

「………っ!! ……っ!! ……っ!!」
恭子は唇を噛み締めて声が出そうになるのを耐える。
一体どうした立場の逆転だろう。
唯一の助けを前に、必死で沈黙しなければならないなんて。

恭子は、恋焦がれた先輩の前でレイプ魔に犯され、あえいでいる。

なんという、快楽の地獄なのだ。

「くくっ、どうした。あの男に助けて欲しいのではないのか。それとも、野
良犬のように犯されて感じる、淫乱の本性を見られるのが嫌なのか?」
「……い、淫乱なんかじゃない」
小さく反論するが、男に秘肉を抉られると、襞が収縮する。
まるで、もっと、もっと肉棒を……、と卑しくねだるかのように。

「そんなに見て欲しいなら、俺が呼んでやろうか。おーいっ」
恭子は反射的に男のマスクの口に手をあてた。
「お願い、やめて。こんな姿見られて友達皆に知られたら、生きていけな
い」

禍々しいドラキュラのマスクの向こうで、男の目が笑った。
「いいだろう。だがその代わり」
と男は言った。

「俺の勃起したものをしゃぶってもらおうか」

 

なぜ、レイプ魔の薄汚いペニスを恭子が口にしなければならないのか。

理不尽だが、逆らうことなど叶わない。
恭子は両手を戒められたまま、ひざまずいた。
そして、仁王立ちになった陵辱者の股間に唇を寄せていった。
あむ……っ

恭子は男の醜い亀頭を呑んでいく。
つん、と鼻をつくような嫌な臭いがする。
どぶのような臭いだ。
彼女は最悪の気分でそれをしゃぶりはじめるのだった。

「くくく、なかなか巧いじゃないか。いつもチンコばっかりしゃぶっている
のか」
恭子はあまりの屈辱に顔が真っ赤になる。
「本当におまえはチンコが好きなんだな、淫乱な雌豚め」
そんなことまで言われて馬鹿にされ、なお彼女は奉仕を続けるしかない。

恭子は口の中で男の勃起をゆるゆると揉みしだく。
舌を使って裏筋を舐め上げる。
陵辱者は満足げに呻き、ぴくぴくと玉袋が揺れる。

口唇が続いた後。
「おい、今度は玉袋を舐めろ」
と男は高圧的に言った。
「い、いやよ」
恭子は口からペニスを吐き出して言う。
「やれ」
「いや」
「仕方がないな。あそこにいる男を呼ぶしかないか」
大仰に口に手を当てて叫ぶ仕草を見せる陵辱者。
「……わかったわ」
彼女は力なくうなだれた。
その頬に。

ビシッ

何か弾性のある物がぶつけられた。
恭子は目を見開く。
それは、男のペニスだった。
「もう俺に逆らうんじゃないぜ」

ビシッ

恭子はペニスで頬を張られたのだ。
彼女の白い頬に、ねばついた粘液が糸を引く。

彼女の顔は、再び屈辱と怒りで真っ赤になった。
燃えるような瞳で、それでも恭子は男の股間の奥へ顔を寄せていく。

 

押さえきれない怒りを胸に、恭子は舌を伸ばす。
ちぢれ毛の乱れ生えた皺だらけの袋に。
ぺろぺろと舐めると、まるで自分が犬になったような気がする。
泣きたい。
また、股間の奥は饐えたような性臭が猛烈にするのだ。

「くくく、おまえは本当にチンコを舐めるのは上手だな」
陵辱者が屈辱的な賛辞を贈ってくる。
恭子は口の中に袋を含む。
そして中の玉をアメのように転がし、舌先でちろちろとくすぐる。
その度に男の玉がぴくっと上に挙上する。
下がってきては、舐めるたびに上に引き上げられる。

「……最高だ。たまらん」
男は不意に恭子の頭を掴むと、その口にペニスを差し込んだ。
「!?」
「そろそろイキたくなった」
男はそれだけ告げると、乱暴に腰を降り始めた。
「!!!」
恭子の喉の奥に乱暴にペニスが突きたてられる。
嘔吐の発作が湧き上がる。
目から涙がこぼれ、咳き込む。
しかし、そんなことはお構いなしに男は恭子の喉を犯し続けるのだ。
(やめて、やめて……っ)
彼女が許しを乞おうと上目遣いに陵辱者の顔を見る。
「ああ、気持ちがいい。出すぞ。おまえの口に出すから飲み込めよ」

(~~~~~~~~っ!!)
恭子の口の中で、一度ペニスが大きく膨れ、爆ぜた。
勢いよくねばねばした液が射出されてくる。
(苦い……、苦くて、臭い……、気持ちが悪い……)
「さあ、飲め」
彼女は思い切り首を左右に振り、吐き出そうとした。
その頭が押さえ込まれる。

「飲め。飲まないと、おまえの口の中に小便をしてやるぞ」
恭子は泣きそうになった。
しかし、口の中にこの男の小水を受けることを考えたら発狂しそうだった。
仕方なしに、死ぬ思いで男の汚い欲望の液を嚥下していく。

「くくっ、くくくくっ」
男は恭子の口の中でペニスを振った。
すると、むくむくっとそれが硬直してくる。
「さて、またおまえを犯してやるぞ」
陵辱者は恭子を地面に押し倒した。

彼女の意識は屈辱のあまり何かの閾値を越え、むしろ茫とした霧の中にある
ようだった。

 

恭子は、地面に仰向けになり、犯され続けていた。

何度絶頂に昇っただろう。
背後から、横から、そして今、前から。
身体は燃えるように熱く、ねっとりとした汗でべたべたになっている。

(ああ、もう何も考えられない。気持ちがいい)
陵辱者の丹念な愛撫と巧みな責めによって恭子の身体はどこもかしこも性感
帯となっていた。
思考は飛んでいる。
すべての考えから解き放たれ、ただ快楽だけを求める幸せなる白痴。

男は何度目かの頂上へ向け、恭子を追い詰めていた。
腰のピッチが上がり、恭子の身体がぴくぴくと跳ねる。
そして──止まった。

「や、止めないで」
恭子は言った。
「もっと、もっとして」
もはや彼女は快楽しか頭にない。理性はどこかに飛んでいる。
男は表情のないドラキュラのマスクの裏でくくくっ、と笑う。
「もっと犯して欲しいのか?」
「そうよ。あなたに私を犯して欲しいの。もっと突いて欲しいの!」

「この、俺に、犯して欲しいんだね」

男は区切るように言いながら、マスクに手をかけてゆっくりとそれを脱ぎ捨
てた。
「──この相原翔史に、犯して欲しいんだね、柏木恭子さん」
「放課後のX」こと、相原翔史はくくくっ、と笑った。

恭子は瞠目して真っ青になった。

 

なんということだ。
この陵辱者が、あのクラス一目立たない男だなんて。
恭子が見ているだけでイライラする、あの、ひ弱な男だなんて。

まして、恭子は先日翔史を罠にかけ、あまつさえ便器に頭を押し込んだばか
りなのだ。
──その、ゴミ虫のように嫌っている男に犯されている。
「柏木さん、気持ち良いのかい?」
翔史はくくくっ、と笑いながら腰を送った。
秘奥を突かれて恭子の身体がピクンと跳ねる。
さらに翔史が腰をまわしてやわやわと秘部をこね回すと、彼女の身体は快感
に溶けていくのだ。

(ゴミ虫に感じさせられるなんて……)
屈辱感で目の前が真っ暗になる。
だが、今や彼女の身体は全身が性感帯。
そのゴミ虫の思うがままに蹂躙され、喘ぐのみなのだ。
「俺のチンコがもっと、欲しいのかい、柏木さん」
翔史はニヤニヤしながら訊ねる。
「だ、誰が、おまえのものなんか……」
かろうじて学部の女王としての尊厳を保とうとするが、言葉とは裏腹に身体
は陥落寸前だ。
「さっさと、その汚いものを抜きなさいよ」

しかし、ただでさえ、先ほどまで絶頂の直前まで押し上げられていた身体だ。
快感の洪水に、理性の堤防は決壊寸前。
「くくくっ、柏木さん。チンコ抜いてしまってもいいのかい?」
翔史はゆっくりとペニスを抜いていこうとする。
(……っ!!)
恭子の襞が収縮し、翔史のペニスを逃がすまいとするかのように締め付けた。
屈辱的だ。屈辱的だが。

もはや、我慢ができない。

「──お願い……、相原のペニスで私を突いて」

「くくっ、ははは。はははははっ。

いいだろう。おまえの大嫌いなゴミ虫が、おまえを犯してやるよ」

翔史は悪魔のように凄絶な笑顔を浮かべて、嵐のごとく恭子を突きまくった。

『──もし、あんたに抱かれるくらいなら、私は死を選ぶわ』

そう言った恭子の言葉を思い出すことで、いよいよ翔史の快感が増す。

恭子の理性が飛び、彼女は絶望の中で夢と現の狭間に消えていった。

 

恭子が目を覚ますと、少し離れた場所に相原翔史が腰を掛け、煙草を吸って
いた。
意識が戻ってくるより前に、聞きなれた着メロが目の前で鳴る。
「!」
翔史がすっと立ち上がってこちらに寄ってくる。
先に携帯を取らなければ。

──携帯を取って、助けを呼ばなければ!

恭子は目覚めたばかりとは思えない俊敏さで携帯を掴み取り、風のように駆
けだした。

ディスプレイのコールの名前には、白石貴志、とある。

ホールドボタンをプッシュ。

「もしもし、先輩、助けて!! 今あなたのすぐ後ろにいるの!!」
絶叫する。

「助けてだって? 助けてじゃなくて──」
「──チンコぶちこんで、の間違いじゃないかい? くくく、この豚女」
時が、止まる。
恭子が振り向くと、そこには、見覚えのある白石貴志の携帯を持った相原翔
史が立っていた。

「柏木さん、これはコンパの帰りにあの男からスリ取ったものなんだよ」
くくくっ、と翔史が笑う。

恭子は遠くに見えるベンチを振り返った。
一陣の風が吹いて、白石貴志の後姿が揺らぐ。
その姿は大きく傾いで、ジャケットとカツラがずり落ちる。

後に残ったのは、抜け殻となった一本の植木だけ。

最初から、この悪魔の掌の上で、踊らされていた……?

あの、一番最初のメールから……!

「こ、この──」

と、掠れた声を搾り出す。

「この、悪魔──」

恭子はそれだけ呟くと、失神した。

 

授業終了のチャイムが鳴る。
ざわざわし始める大学の講義室。

いつもと同じだ。

「ねえ、相原」
翔史がノートを片付けていると、目の前に柏木恭子が仁王立ちになった。
「ちょっと付き合いなさいよ」
彼女は高慢な顔で翔史を見下ろしている。

すると、周囲の学生達が「またか」という顔をする。
また、柏木恭子のいじめがはじまったよ、と。

傲然と歩いていく恭子の後ろに、おどおどとした態で翔史がついていく。
学生達は同情の目と、若干の侮蔑を込めてふたりを見送った。

いつもの光景だ。

恭子は翔史の手首を掴んで乱暴に歩き出す。
講義室を出るや、すぐに隣の小部屋へと翔史を引っ張り込んだ。
後ろ手に鍵をロックする。

 

──そして、恭子は潤んだ瞳で翔史を見つめた。

「なんの用かな、柏木さん」
翔史はのんびりした声で言った。
「わ、わかってるでしょ」
「さぁ、わからないな。僕はバカだから」

この落ち着き払った翔史の態度が恭子を苛立たせる。
わかっているくせに。
わかっていながら、わざととぼけている。

「あんたなんて大嫌いよ」
悔しい、という気持ちがそんな言葉として表現された。

「く……っ、チンコを出しなさいよ」
「へえ、チンコを?」
「さっさと、出しなさい」
「僕は別に出したくなんてないね」
「だ、出しなさいっ!」
つい、大きな声が出る。

「──チンコを出してください、お願いします、だろう? くくくっ」
翔史は気弱な仮面を脱ぎ捨てて高圧的に命令した。
「ち、チンコを出してください……」
恭子が下手に出ても、翔史は容赦ない。
「おまえが自分で出すんだよ」

「ぐ……っ」
ひざまずいてズボンを降ろす恭子。
すでに勃起していたペニスが弾け出る。

 

ああ、これだ。
これを求めていた。
恭子の股間はぐっしょりと濡れている。
もう条件反射だ。抗うことなどできない。

恭子は吸い寄せられるように翔史のペニスを頬張った。
大学の一室で、ゴミ虫と蔑んだ男のペニスを咥えて興奮している。
ああ、なぜこんなことになったのか。
だが、もうこれがないとダメな身体になってしまった。
隣の教室では、きっと皆は恭子が翔史を嬲っていると思っているに違いない。

しかし事実は逆だ。
恭子は、この矮小な男の奴隷となって奉仕しているのだ。

学部の女王様は、同時にクラスのゴミ虫の奴隷でもある。
否定しようとも、身体が屈服してしまっている。

悔しい。

学校では女も男も、彼女に一目置いている。
なのに、彼女はひざまずいて、この男の汚いペニスをねだらねばならない。

恭子は、レイプで狂わされた。
もはや、この男のレイプによって与えられる快感なしには生きていけない。
だから、屈辱に耐えてペニスをねだる。
このような、矮小な男に。

時に、石黒らとともに翔史をいたぶらねばならないことがある。
だが、散々に優越感を味わった後は、その相手にひざまずいて屈服しなけれ
ばならないのだ。
なんという皮肉だろう。
この男を貶めれば貶めるほど、自らを貶める結果になる。
そして、貶められることで感じてしまう身体に、改造されてしまったのだ。

恭子は、例の夜以後に白石貴志と交際を始めた。
だが、すぐに恭子の方から別れた。

あの夜連続して受けたレイプによって、恭子はもう普通の恋愛では満足でき
ない身体になっていたのだ。

そして屈辱に耐え、自ら翔史にペニスを求めたのだ。
それから、こうして毎日翔史のペニスをねだる服従の日々を送っている。

 

「わ、私に……入れてよ」
恭子は翔史を睨みつけ、真っ赤な顔で言った。
「私を犯してください、だろう?」
プライドの高い彼女は唇を噛む。
だがプライドよりも、切羽詰った女の襞の悲鳴を鎮めるのが先だった。

「わ、私を、犯して……くださいっ」

「くくくっ」
と翔史は笑った。

 

翔史は恭子を立たせて、後ろから彼女を貫いた。
恭子が呻き声を上げて身体を振るわせる。

腰を叩き込むと、すぐさま恭子は感じ始めた。
すでに、翔史のペニスが欲しくて仕方のない状態だったのだ。

「くくく、大学で犯されて感じるなんて、おまえは最低の淫乱だな」
翔史が囁くと、恭子が感じながらも悔しげに顔を歪める。
そんな仕草が翔史にとってはたまらない。
彼は理性の壊れた淫乱になど興味はない。

女の葛藤こそが最も美味なのだから。

悔しがりながら、それでも感じる女に最も興奮する。

翔史は、教卓に乗せてあるラジオのスイッチを入れた。
ニュース番組のコメンテーターの声が流れ始める。

「──ええ、つまりですね。『放課後のX』なる犯人は、普段女性に相手に
されていない人間だと思います」

「と言いますと?」

「女性に相手にされない。けれども、性欲は溜まる一方。こういった葛藤を
解消するために、夜な夜なレイプ犯罪に手を染めているわけですね」

「風俗産業は利用しないのでしょうか?」

「経済的に苦しいか、あるいは女性に対して恐怖があるために、レイプとい
う形でしか交渉を持てないのかも知れません」

「では、被害者女性の性器周辺にXの傷をつけるのはどういった理由でしょ
うか?」

「それは、世間に名を知らしめたいという自己顕示欲の現れでしょうね。世
間を騒がせてヒーローになりたいという、幼稚な願望ですよ」
「くくくっ」
と翔史は恭子を犯しながら笑う。
「くだらんな」
恭子は快感を追うのに夢中で、翔史の独り言に気付いていない。

肉欲の解消だけではない。まして、女が怖いわけではない。

レイプをただの強制射精行為、和姦の代償行為と思っているうちは、永遠に

翔史を理解することはできない。

翔史にとって、レイプとは女の魂を喰らうこと。

女の誇り、矜持、プライド、自尊心……。

それが翔史にとって最高の美味。

女の誇りを打ち砕いて犯すこと。

──その、この世で最も甘い禁断の果実こそレイプ行為に他ならない。

そして、心を犯されないと感じない女になってしまったなら、それこそ最高
の結実と言えるのではないか?

「悔しい、悔しい」
泣きながら快感に喘ぐ恭子。

──そう、この女のように。

勢いよく腰を打ちつけた瞬間に恭子は全身を痙攣させて昇り詰めた。
ドクドクと翔史も精液を注ぎ込む。
恭子の身体が紅潮し、秘部には鮮やかにXの文字が浮かんでいた。

Xはエクスタシー。

翔史に犯された女は、レイプでエクスタシーに達した事をずっと刻印し続け
るのだ。
そして、誰とセックスする時にもその忌まわしい思い出が脳裏をよぎるに違
いない。

──それは、なんとも言えない極上の心のレイプではないか。

放課後のXは、女を一度のレイプでは許さない。

幻影となっていつまでもその心を犯し続ける。

それが最悪の性犯罪者、放課後のレイプ魔なのだ。

次の標的は誰だろうか。
夜の闇の中で彼は、陵辱の牙を研いで獲物が通りかかるのを待っている。
もしも「くくくっ」という耳障りな笑い声を背後に聞いたなら──

──次の被害者は、貴女に違いないのだ。

END

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