「ふぅー」
自らの手に白い息を吐きかけ、かじかむ手を少しでも暖めようとしたが、あまり効果は なかった。
手袋をはめ直すと。。
「よし、休憩終了。行こうかユゴス」
そう言って愛トナカイの額を軽く撫でてやり、わたしはソリに搭乗した。
父から受け継いだクラシカルスタイルのソリには、父さんがいかにこの仕事を勤めてきたか物語る傷がいくつも刻まれていた。
女だてらにこの仕事をしている者は珍しい。
だって、わたしがしている職種のイメージを聞いたら、みんなこう答えるだろう「白髭のお爺さん」と。
だけど、わたしには白い髭もなければ、ましてやお爺さんなんかでもなく、
もっと言えばわたしはそもそも男じゃない。
サンタクロースならぬ、サンタクロース・ガールとでも言ったところだ。
ユゴスの手綱を握り。
「よっしゃ、次は3丁目の健太くんのうちね」
そう呼びかけると、ユゴスは空中に足を置いた。
それは飛ぶのでもなく、浮いているわけでもない、
この世界でトナカイのみに与えられた能力――空中歩行だ。
ユゴスはまずゆっくりと歩き出し、高度を徐々に上げていく。
それは人目につかないためでもあるが、なにより低空を歩こうとすると、
障害物が多くて走りにくいのだ。
そうしてある程度の高度に達すると、ユゴスは走り始めた。

24日深夜27時、既に25日に突入してしまっていたが、わたしはまだプレゼントを配り終えていなかった。
これは決してユゴスのせいではない、ユゴスは天王星から地球まで一瞬で来れるほどの速さをもっているから、ユゴスと名づけられた。

そんな彼に乗っているのだから、本当ならばあっさりと仕事を終えてもいいのだけれど。
最近の子供は深夜まで起きていることが多く。目撃されたらまずい仕事をしているわたしたちは、そういう場合一旦そこを避けなければならないのだ。

そうしている内に、配送コースがぐちゃぐちゃになってしまい。時間を無駄にしてしまった。
赤ペンで地図に印をつけながら、潰していく作業は神経が磨り減るものがあった。
日が昇った後まで届けていたら、同業者たちに笑われるし。
届け損ねることがあれば、サンタクロースの信用を失ってしまう。
去年までは、父さんの付き添いとしてサンタをやっていたから分からなかったけれど、
この仕事が、ここまで神経を使うものかと思わなかった。
父さんは、ほいほい気楽そうにプレゼントを配っていたから、わたしにもできると思っていたのに――涙がこぼれそうだった。

でも、もう少しで配り終えることができる。
残された家はたった5件、余裕だ――そう思っていたのだが。
「……ない」
最後の1軒の屋根の上まで来て、わたしはその事実に気がついた。
渡すべきプレゼントが残っていなかったのだ。
これはどう考えてもおかしい。
だって、クリスマスプレゼントはその子供のために用意されるもので、ちゃんと出かける時に数を確認し、それぞれのプレゼントに住所と名前を貼ってきたのだ。
となると。

「落としたってこと……」
わたしはからっぽになったソリを見て、頭を抱えた。
どうしよう探しに行こうか、いやでも、どこで落としたかなんて分からないし。
それにプレゼントのリストを置いてきてしまったから、この家の子に配るプレゼントがどんなものなのかも分からない。
これが大きなものであれば探しようもあるが、小さなものだったとしたら、探しようなんかない。

「……あー」
どうしよう、どうしたらいいんだろう。
暑くもないのに、服の中が汗でぬれていくのが分かった。
わたしはしばらくその場にうずくまって考えた。
そして、あることに気がついた。
サンタクロースにプレゼントを頼む時、枕元にその旨を書いた手紙を置いておくはず。
それを読めば、なにをプレゼントしたらいいか分かるはずだ。
今日は朝から飲み会があるからと、財布の中には潤沢にお金を入れてきたし。
まだ朝まで時間があるから、買って戻ってくることもできる。
フフフ……我ながら完璧な計画じゃないか。
そうと決めると、早速部屋に侵入した。
子供の部屋というのは、3割くらいの確立でちらかっているものだが、この木原雅巳くんの部屋は取り立てたくなるほど汚かった。
空のペットボトルが転がっていたり、口が閉まっていないゴミ袋が床の上に直置きされていたり、本やゲームが散乱していたりと。
進むルートを1歩間違えたら、踏んで壊しかねない感じだった。
なんとか彼の枕元に着くと、予想通りに『サンタさんへ』と書かれた手紙があった。
わたしの計画も、なかなかどうして完璧じゃないか。
そう思いながら手紙を開いて、頭が真っ白になった。

『童貞捨てたいです><』

「な……」
こ、これが、子供がクリスマスに頼むプレゼント……?
ていうか、これ、どうやってプレゼントするんだろう。まさかその手の店に連れて行けとでもいうのか……?
わたしが手紙を開いたままの体勢で硬直していると、ベッドの中から手が伸びてきて、わたしの手を掴んだ。

「掴まえた!」
「ひぃっ!?」

毛布が跳ね除けられ、中から中学生くらいの少年が姿を現した。
ジャージの上下を寝巻き代わりにした、痩せこけた少年は、わたしをみて喉を鳴らして笑った。
「……計画通り!」
言葉の意味が分からず、わたしは呻くように言った。
「どういうことなの?」
少年――木原雅巳くんは、不敵な笑みを口元に湛えながら答えた。

「単純なことじゃないか。ボクは童貞を捨てたかった、だからサンタクロースに願ったのさ。童貞を捨てさせてください、ってねえ!」
「そ、そんな……」
そんな馬鹿な願いが通じるものなのだろうか。
「そうしたらこの通りさ。ボクの前にはミニスカートでオーバーニーを穿いた、金髪碧眼の美少女のサンタが現れた!」
「美少女……あ、いや」
危ない、一瞬、美少女ってところで喜んじゃいそうだった。

「でもそれなら、学校で彼女作ったらいいんじゃ――」
わたしの言葉を遮り、彼は怒鳴った。

「ボクは産まれてこの方彼女もいないし、女の子とまともに口を聞いたこともない、
それどころかこの数年は引き篭もっていたから、家族以外とはまともに口を聞いていない。なのにどうやったら彼女ができるっていうんだ!」
「そ、それは……」

引き篭もった理由がイジメとかだったとしたら、この子は被害者なのかもしれない。
傷ついた心を少しでも癒そうと、こんな願いをしてしまったのかもしれない。
自分の環境を正確に理解しているからこそ、彼女が欲しいではなく、童貞を捨てたいなわけだし。
ここで、わたしが彼の願いを叶えてあげれば、彼は外に出ようと思うようになるかもしれない。

「ちょ、ちょっと聞いていい?」
「なんだ?」
「きみ、なんで引き篭もったの?」
「それは……」

彼の顔に深い影がさした。
失敗した、聞いてはならないことを聞いてしまったのかもしれない。わたしは取り繕おうとしたが、先んじて彼が言った。
「学校にPSPを持ち込んで、エロゲーやってるところをクラスの女子に見つけられて、からかわれて、イラッときて引き篭もった。反省してない」
「な、それは……」
わたしは軽く頭を振った。
できるだけ彼を傷つけないようにと、言葉を選びながら言った。
「さ、流石にそれは、その、学校にゲーム機持ち込んじゃダメだと思うし。それに、きみまだ子供なんだから、えっちなゲームとかやっちゃダメだと、お姉さん思うなあ」

彼はぎろっと睨んできた。
「子供だからって関係あるかよ! 小学校高学年の頃好きだった女の子は、5年の頃にはもう彼氏がいて、もう中古だったんだぞ! そんな連中に比べたら、エロゲーくらいどうってことないじゃないか!」
「そ、それはその子が早かっただけじゃあ……」
「中学にはいって、その子が彼氏と分かれたって聞いたから、告白したら『二枚くれたら
してもいいよ』ってにっこり笑顔で言われた。もう現実の女なんか全員死んじゃえよ!」

「うわあ……」
わたしは言葉もなく、彼を呆然と見ていることしかできなかった。
「それに比べてエロゲーの女の子たちのなんて美しいことか。彼女たちが天使だとしたら、
現実の女なんてダッチワイフ以下の存在だ!」
な、なんだろう。
この子はとても間違っているような気がするのだけれど、ここで間違っていると否定すると、押し倒されて強引にやられかねない気がする。
できれば、この子とはやらない方向で話を終わらせたい。
そうだ。

「じゃ、じゃあ、風俗につれていってあげるからさ。ね?」
「……は?」

自分でも名案だと思った。
この子はただセックスをしたいだけなのだ。なら、そこそこ管理のなってないとこに連れていって、風俗嬢に直接お金握らせたらやらせてくれるかもしれない。
そのほうが相手もプロだし、きっと満足度も上だし、わたしも救われる。

「よし、ほらそうと決まったら出かけようか。今日ならきっとサンタのコスプレした女の人とさせてもらえるよ、きっと」
「ふ、ふざけんなあアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ひ、ひいぃっ!?」
「この歳で素人童貞になれっていうのか、アンタって人は!」
わたしは怯えて、竦みそうになるのを堪えながら言った。

「でも、童貞は捨てれるじゃない、ね?」
「違うんだよ!」
彼は怒鳴り、壁を叩いた。軽い音しかしなかったが、彼は痛そうに手を抱きかかえた。
「え、ええと、何が違うの? 童貞捨てることには変わりないじゃない」
「だって、素人童貞とか格好悪いじゃないか!」

「な……」
なんだよ、たったそれだけの理由かよ。
つっこみたかったが、あまりのことに言葉を失ってしまった。
その隙を狙ったかのように、彼はわたしに抱きついてきた。

「きゃっ」
床に押し倒され、上から覆いかぶさられて、突然のことに抵抗できないわたしに。
彼は自らの股間を、ぐりぐりとわたしの腰に押し付けてきた。
盛った犬のようなその動き、しかし、笑って流すことはできなかった。
ジャージの薄く柔らかい生地の中にある、ソレの硬さが、はっきりとわかってしまった
から。

「……ぃ、いやっ。やめて……落ち着いて」
彼はその行為をやめようとせず、わたしの頬に頬を重ね、頬擦りしてきた。
じょりじょりと薄く生えた髭の感触が痛い。
「はぁ……はぁ……サンタさんいい臭い……女の子ってこんないい臭いするんだぁ」
ぼそぼそと耳元で囁かれて、生理的な嫌悪感がわたしの身体を震えさせた。

「ふふふ、怖いの? ねえ、怖いの?」
「くっ……」
この状況はまずい。早く逃げないと、本当に冒されてしまう。でも……
「いや、やめてよ……やめて……ぃやなのっ」

口は動いても、身体がいうことを聞いてくれなかった。
動きたいのに、身体の動かし方が分からない。震えてしまって、身体が動かない。
逃げることもできずにいると、彼は自らのズボンとパンツをずり下げたのか、下半身を露出させた。
太ももに、その先端が触れた感触がした。
熱く、湿り気のある、その淫猥な物体が。

「ひぃぃぃっ」
「凄いでしょ。もう、こんなになってるんだ」
彼はわたしの耳元で囁きながら、舌でわたしの耳をぺろぺろと舐めてきた。
その感触に、さらに身体の震えが増していく。涙で視界が滲んで、なにも見えない。

「見たいでしょ、見せてあげるよ」
そう言って、彼は身体を動かし、わたしの胸元に座った。両腕は脚で押さえられ、動かすこともできない。
彼は暗闇の中、にたりと笑い。それをわたしの鼻先に突き出してきた。

「――っ!?」
思わず顔を背けた、それはひどい臭いだった。
野生動物の臭いとでもいうべきなのだろうか?
鼻が曲がるような臭いがして、とてもじゃないが顔をむけていることすらしたくなかった。
「サンタさん来てくれると思ってたから、洗ってなかったんだ。ほら、こうすると、もっとすごいよ」
そういうと更に臭いがひどくなった。
一体なにをしたんだろうと、横目で見ると。彼はその包茎の皮を向いて、赤黒い亀頭を露出させていた。
見ると、亀頭のエラとでもいうべき部分には黄色い汚れが付着していた。
嫌な予感がした。

「ちょっ、やだっ、そんなのしまってよ。おねがいっ」
わたしの願いに、彼はにっこりと笑い。
「いいよ」
と言った。

「……え? ほんとう?」
彼はゆっくりと首肯し。
「だって、こんなの冗談ですよ。女の子レイプして楽しむなんて、最低の外道がやることじゃないですか。そんなこと、ボクはしませんよ」
先程までとは一転した彼の言動。
それをそのまま信用することはできなかったが、それでもわたしには救いに思え、気付くと口元が綻んでいた。

「あ、ありがとう……じゃあ、そこどいてくれるかな?」
そういうと、彼は笑顔で頷いた。
なんだいい子じゃないか。
――そう、思った次の瞬間。

「ただし、ボクのちんことキスしてくれたら、ですけどね」
「……は?」
なにを言ってるのか理解できなかった。
だが、彼は笑顔で、わたしを見つめている。そしてそのちんちんをわたしのほうへ差し向けている。
わたしは、まともに考えることができなかった。

「ほ、ほんとうに、キスしたら、離してくれるの?」
彼の言葉に縋るしかなかった。
彼はとても人の良さそうな顔で笑っている。
「ええ。ですから、早く、キスしてください」
亀頭を見ると、それは彼の興奮を示すようにぎらついていて、先端からは我慢汁がじゅくじゅくと溢れている。その一滴が、ぽたっと、わたしの頬に落ちた。

「ひっ」
一瞬、意識が消えそうだった。
頬を這う粘液の感触。
このまま下手に抵抗すれば、彼はわたしをレイプしようとするかもしれない。
それだけは、それだけは避けたかった。
クリスマス、一人での仕事が、そんな始まり方をするのはどうしても避けたかった。
だから、わたしは――
「……っ!」
そっと、彼の亀頭にキスをした。
「おほぅっ!」
彼が奇声をあげる。

口に苦い味が浸透して行くのがわかった、息を吸うと、頭の中が陰茎の臭いでいっぱいになって、くらくらした。
わたしは五秒ほど、唇を彼の亀頭に触れさせていた後。離した。
「こ、これでいいんでしょ、はやく――っっっ!!」
口を開いたところへ、肉棒がねじ込まれた。

「く、ふふふ。キスって、子供じゃないんだから、バードキスじゃなく、ディープキスに決まってるじゃないか」
彼の言葉が聞こえたが。
喉を突くように押し込まれたせいで、まともに呼吸することもできず。わたしは酸素不足で、彼の下でもがくことしかできなかった。

「おやおや、苦しそうだ。でもさあ、ちゃんとキスしてよ、ほらっ、ほらっ」
そう言いながら、彼はわたしの顔に打ち付けるように腰を振った。
その度に身体が痙攣して、波打つのが分かった。
数度繰り返すと、彼は陰茎を引き抜いた。
わたしの唾液に濡れたその肉塊は、恐ろしいまでにギラギラとした光沢を放ち、その粘液をわたしの顔の上に垂らす。

「げほっ……っ……な、なにするの……こんなことされたら、死んじゃう……」
うがいがしたかった。
口の中を、洗いたかった。ブラシで磨いて、汚いものを掃除したかった。
「ちゃあんと、キスしないからさ」
「キスって、これ、キスじゃないっ」
顔を横に背け、わたしは唾液を床に吐いた。そうすれば、口の中に広がる嫌なものがなくなると思ったから。

「じゃあ、なんだっていうんだよ」
「それは」
彼はくくくくと喉を震わせた。それはもう楽しそうに。
「言ってみろよ。ほら、早く、なにさせられたのか。言ってみろよ」
それを口にすればコイツを楽しませることになる。
それを言わなければコイツを更に調子ずかせてしまう。
無視が一番かと思ったが。

「答えろよっ!」
「きゃっ」
前髪を掴まれ、強引に前を向かされた。
わたしは言いたくないと首を横に振った、だが彼は赦してくれなかった。
顎を掴んで、強引にわたしの口を開かせると、そこにコーラを注ぎ込んだ。
「ごぷっ……ぐっ……がっ」
吐き出そう。

首を横に向けようとしたが、彼の手が動かさせてくれない。それどころか口を手で押さ
えられて、吐き出すこともできない。
鼻で息をしたらいい。
「ううっ……ぅ……んんヴッ……」
それは分かってる、でも、できない。
身体をじたばたと動かしたが、押さえつけられていてはどうしようもなかった。
飲み込もうと思ったが、量が多くて。それに何故か喉が閉じてしまったように飲み込めない。
わたしは顔を真っ赤にしてもがき続け、ようやく。

「ぶはっ……はぁ……はぁ……ぅぅ……」
コーラを吐き出させてもらえた。
彼はと見ると。
まるで何もなかったというように、彼は無表情なままわたしを見下ろしていた。
そして、
「いえよ。キスじゃなかったら、なんだっていうんだよ?」
そう言った。
その手には、コーラのボトルが握られていた。その中には、まだ一リットルは入っているようだった。

「……ェラです」
「あ? なんだって?」
彼はわたしの顔にコーラをかけた。
目や鼻にコーラが入り込んできて痛かった。
「フェラよ。フェラをしたの。ほら言ったから、そこどいてっ!」
彼の顔に喜びが溢れた。

「へえ、キスじゃないのかー。で、そのフェラっていうのは、どういう行為なんだよ?」
「それは、さっきみたいなののことよ」
「さっき? さてなんのことか、思い出せないなあ。ちゃんと説明してくれよ」
「くっ……!」
分かっているくせにこいつは言っている。
なんでわたしはこんなガキに、こんな目に合わされなければならないんだろう。
でも、今わたしが助かるには、こいつの言うことを聞くしかないのだ。
「ふぇ、フェラっていうのは……その、おちんちんを、舐めることよ……」
悔しくて涙が溢れた。
なんでわたし、クリスマスにこんなこと言ってるんだろう。

「へえー、そうなんだ。ねえねえ、なんでちんちん舐めるの? ちんちん好きなの? なんでなんで? ねえ教えてよ、ねえってば」
もう、どうでもよかった。
「……そうよ」
言うとおりにすれば、コイツも満足するだろう。
だとしたら、下手に抵抗して暴力振るわれるより、ましだ。

「へー、へー、へー! ちんちん好きなんだ、大好きなんだ。サンタって淫乱なんだ!」
わたしは答えず、違うことを考えた。
今日プレゼントを配った子供たちのことを、彼らが無邪気に笑う姿を。
「じゃあ、サンタさんの好きなちんちんで、もっと気持ちよくさせてあげるね」
彼はそういうと、わたしの上から退き、下半身のほうへ移動した。
股を開くと、鼻を押し当てるのがわかった。

「ふっ、ふふっ、サンタさんのおまんこ臭うなぁ、おちんちん欲しいって臭いがしてるよ」
子供たちの笑顔を想像するたび、涙が溢れた。
感情を殺そうとしたが、できるはずもなかった。
なんで、こんなことになってしまったんだろう。
わたしはただ、子供たちの喜ぶ姿が見たかっただけなのに。
だからサンタクロースになったのに、なんでこんなことされなければならないんだろう。

「パンツ脱がせるの、面倒だなあ。あ、そうだ。切っちゃえ」
「ひっ」
肌に、冷たい金属が押し当てられ。
ジャキと、パンツが切られていくのが分かった。
鋏がわたしの下腹部の傍で動いているというのが、たまらなく怖かった。その先端を膣に入れられたらと想像してしまい、歯がガチガチと震えた。

「あー、サンタさんのおまんこ濡れてるー」
露出した陰部を見て、彼はそういった。
「気持ちよかったの? ねえねえ、そうなんでしょ? 口では嫌だって言ってたけど、本当は気持ちよくてしょうがなかったんだよね」
嬉々として言ってくる、彼の頬を叩いてやりたかった。
濡れていたとしても、そんなのは興奮したからじゃないっていってやりたかった。
でも、彼が閉じた鋏でわたしの恥丘を叩くせいで、抵抗できなかった。
もし、それを挿入され。鋏としての機能を使われたら――想像したくもなかった。

「サンタさんのおまんこ綺麗だなあ。カメラあったらよかったのに」
彼は荒い息でわたしの局部に、キスしたり頬擦りしたりと、好き放題に遊んでいる。
「これに挿入ることができるなんて、幸せだなあ、ボク」
「――――ッ!」
そうだ。
逃げないと、されてしまう。
口に陰茎を突っ込まれ、今陰部を弄ばれてる状態でも。これ以上の行為をされるかと考えると、苦い感覚がわたしの全身を覆った。
逃げよう、逃げないと。
考えているのに、身体は恐怖で動きそうにもない。
そうしている間にも、彼はわたしの股を大きく広げ、その間に身体を入れてきた。

「じゃあ、挿入るね。サンタさん」
「いや、らめっ、やめてぇえっ――――くぅっ!?」
全身を、貫くような感覚が迸った。
「く……ぅぅ……いやぁ……」
男の汚い亀頭が、割り入ってくる。

ズズ、ズズ、と少しずつ入ってくる。
わたしは自らの顔を覆い、首を横に振り続けた。
「うっ……はぁ……サンタさんのおまんこ、キツキツ……すごいや……うねって、締め上げてくる。すごい……」
「いやっ、いやぁっ、やめっ、……なんで、こんなことするのぉ」
だが、もう男の勢いは停まらなかった。
猛りきった男のそれは根元までわたしのなかにはいってくると、一息ついた。
膣が不快な感触に染まった。
吐き出したい。
これを取り除きたい。
そういうように、締め上げるのが分かった。

「うふっ、くっ……痛いくらいだ……ねえ、サンタさん、そんなにおちんちん欲しかったの? そんなにしたかったの?」
「くぅぅ……っ」
わたしはそうすれば現実が消えてくれるのではないか、そう思い、首を振り続けた。
現実を否定した。こんなのはウソだ。こんなことがあっていいはずがない。
「おちんちんいや、いやなの……やぁっ……抜いてよ……ちんちん抜いて、抜いてよ」
わたしの言葉は、否定は――しかし、彼には届かない。

「もっと、気持ちよくしてあげるね」
彼はそういって、腰をゆっくりと動かし始めた。
粗雑で、乱暴なだけの腰の動き。
「いたっ……やぁっ……痛いよ。やめてっ……らぁっあ……やめ、ぇっ」
洗っていない、汚い肉棒で、わたしの膣がかき乱される。
「痛い痛い痛い、いたいいたいいたいいたいいいいいぃぃぃぃっ」

顔を抑えていた手が、お腹を押さえていた。身体が引き裂かれているようだった。涙が
ただひたすらに溢れ続けた。声をあげていなければおかしくなってしまいそうだった。
「直ぐに楽になるよ」
男は荒い息で笑いながら、そう言った。
「……そんなこと……あるわけ、なぃじゃない……ぐすっ」
「今に、今、気もちょくなるよ」
男はそう笑いながら、しかし、唐突に動きを止めた。
それがなんなのか直ぐに分からなかった。
だが、直ぐに分かった。

男はかすかに震え――

「――っ!? いや、いやあっ! それは、それだけはやめてええぇえぇぇぇぇぇっ」

――発射された。

どくん。
どくん。
どくん。
「あ……ああ……でちゃった……」

男の肉棒がわたしの中で脈打っている。
「ださ、れちゃった……」
「ふぅ……気持ちよくて思わずだしちゃった……」
男は笑いながら、わたしの膣から陰茎を抜いた。
まだ汚らしい包茎は、びくんびくんと痙攣し、白濁した液体をこぼしている。
それをどうするんだろうと思ったら。
「飲ませてあげるね。喉、かわいただろう?」

ぶちんっ、と何かが弾ける音がした。
わたしは、見ていた。
わたしの口の中に、男が陰茎をねじこみ、尿まじりの精液を出すのを。
それはほんの少量でしかなかったが、量は関係なかった。
わたしは、ワタシのことをかわいそうだと思った。
早く、これが終ったらいいねと願ってあげた。
これは、わたしじゃない。
こんなひどいことをされているのが、わたしなわけがない。
だから、わたしは願ってあげた。
早く終わったらいいね、と。

ひどいことをされているワタシは、無抵抗なままにうつ伏せにされると、今度は後ろから突かれた。
「ひっ、ひぃっ……もう、やめてぇ」
悲鳴をあげているワタシに、わたしは思った。
気持ちいいふりしたらいいのに、そうしたら、もう少しいい扱いしてもらえるかもしれないのに。ワタシは馬鹿だなあ。

男は、今度は少し持ったけど。やはり、直ぐに果ててしまった。
ださいなあ、けらけらわたしは笑ったが。
ワタシはその度に男の精液が膣を満たすのに泣き、その度に口で精液まみれの陰茎をふかされるのを嫌がって、必死に抵抗していた。

「おちんちんいや、いやなの、もうやめて。こんな、こんなひどいことしないで。おねが
いだから」
その度に、男とわたしは笑った。
ワタシの姿が滑稽で、かわいかったからだ。

何時間そうされていたんだろう。
ワタシの身体中が精液で冒され、胃の中にまで精液を入れられ、おしっこをもらすまで突かれて突かれて。
ようやく、
「雅巳、なにをしているんだっ」
扉が蹴破られ、男の両親が青い制服を着た男たちと入ってきた。

ワタシは直ぐに男と引き離され、裸のまま毛布だけ着せられて、外に連れて行かれた。
背後では男が周囲の大人たちからなにか言われて、泣いて言い訳していた。
雪が降る中、外に出たわたしを待っていたのはフラッシュの光だった。

「撮らないでください」
青い服の男たちがそう言ったが、誰も聞かなかった。

みると、周囲はすごい騒ぎになっているようだった。そのことには、わたしもワタシも気にならなかった。
ただ、ワタシを連れてく男の一人が、他の男の目を盗んで。ワタシの胸や膣に触れるのが煩わしかった。

そんなに、ワタシのことが気になるなら、と。
わたしは車に乗せられると、その男の下腹部に覆いかぶさるように倒れこみ、取り出して咥えてやった。
あの男より、幾分かマシな味だと思った。

***

クリスマス。
親子連れや、カップルで賑わう街角は笑顔で溢れていた。
彼らは楽しそうに笑っている。
しかし、彼らの陽気さと裏腹に。街角のビルに付けられた街頭掲示板はいつものように黙々とニュースを流していた。

『――身元不明の少女は自らのことをサンタクロースだと名乗り――』

笑顔が溢れていた。
みんながみんなの笑顔をみて幸せを確かめるのに夢中で、ニュースなんて誰の目にも入っていなかった。