大勢の男たちに追われ、必死に逃げていた。
それなのに、必死に走ろうとしているのに、
体はまるで泥の中でもがいているかのように遅々として動かない。
遂に捕まってしまい、縄で縛り上げられてしまった。
それからたくさんのどす黒い手が伸びてきて、次々と身体の中に入っていく。
たくさんの手が体内を不気味に蠢き、気味の悪い音を立てる。
言い様のない恐怖、死んだ方がマシと思ってしまうようなおぞましさ。
悲鳴を上げようにも声は出せず、逃げようにも体は動かない。
やがて腹が不気味に膨れ上がったかと思うと、
真っ白な肌を切り裂き、激しい血しぶきと共に巨大な醜い男根が飛び出した。

己が発した悲鳴でナウシカはハッと目を覚ます。
まだ今一つ夢とうつつの区別がつかない。
動揺しつつ毛布の中で恐る恐る自分の腹をさすってみる。
いつもと何も変わらない感触。
(大丈夫、ちゃんといつもと同じ。)
そう自分に言い聞かせ、重苦しい安堵の息をつきながら見上げたナウシカは、
ユパ様が自分を抱きかかえて眠っているのに気が付いた。
恐らく一晩中自分の身を案じ抱いていてくれたのだろう。
うっかり起こしてしまわぬよう、そっと身を起こす。
いつまでもユパ様に身を委ねる訳にはいかない。

頭と身体が鉛のように重い。
そして身体を動かすたび節々が痛み、
昨日の出来事を思い返しそうになるが、
頭を振ってユパ様をそっと移すことに集中する
どうにか牢の壁に寄りかかると、
今度は自分の身にユパ様を委ねるように体勢を入れ替える。
身体を動かすたび毛布の中で鎖が音を立てているのが気になるが、
足にからまった鎖がはずみで引っ張られ、同時に下腹部に鈍い痛みが走った。
思わず顔をしかめたナウシカは、もうそれだけでどういうことか理解した。
毛布の中を覗く気にもなれない。

どうにかユパ様を起こさぬよう体制を入れ替えて、
寒くないようにそっと毛布をかけ直してやる。
牢には小さな明かり取りの窓があるが、まだ真っ暗だ。
今見えるのは通路にある小さな灯りのみ。
暗闇に慣れた目にも非常に薄暗い。

(今日はあの部屋に行く必要はないのね…)
普段から早起きのナウシカは、皆に余計な心配をさせないように、
まずは地下の秘密の部屋で腐海の植物の世話をすることを日課にしていた。
だが船内で虜になることが決まった時、水を止めてきた。
せっかく大きく育ち、ヒソクサリはやっとキレイな花をつけたのに、
じきに皆枯れてしまうだろう。
(ゴメンね。ゴメンね。)
視線を落すと、ユパに掛けた毛布の上に雫がポタポタ落ちた。

いつもと変わらぬ朝の目覚めだと言うのに、
昨日までと何もかも変わってしまった。
昨日の朝目覚めた時には、まさか翌日目を覚ました時の自分の境遇が
こんなに激変するなんて考えもしなかった。
ぼうっと送った視線の先には、暗がりの中にかすかに浮かぶベッド。
昨日の午後から晩にかけて、自分は大勢の男に取り囲まれてあの上にいた。
思い出したくもない場面を次々思い出してしまい、思わず毛布に突っ伏す。
まだまだ固くて小さな蕾が、花弁を1枚1枚、どころか、
全部無理やり引き千切るように、一気に開かれてしまったのだ。
(…それでも。)
自分1人が耐えれば、谷のみんなに被害が及ぶのを阻むことができる。
谷のみんなを、特に女性たちを男共の魔の手から守らねば。
改めて自分に言い聞かせる。

間違いなく今日も大勢の敵兵たちの慰み者にされてしまうのだろう。
だが、ナウシカには一つだけ前向になれる要因があった。
昨日は大勢の敵兵達からいいように弄ばれ、散々醜態を晒してしまったが、
性的な刺激にはいい加減慣れたはずだ。
初めて滑空の練習をした時だって、そしてメーヴェに初めて乗った時だって、
1日目はなかなかうまくいかなかったが、
翌日には自分でもビックリするほど身体がうまくコツをつかんでいた。
今度のことだってきっと同じだ。
今日こそ何をされても極力無表情、無反応でいよう。
男たちの必死な姿を無表情で見下ろすのが理想だ。

昨晩子供たちの手紙と共に届けられたチコの実を1粒、口にする。
チコの実には強い強壮効果がある。
それにしても、チコの実とはこんなに固いものだったか。
男根を何度も咥えさせられたからなのか、
それとも延々と続いた凌辱を歯を食いしばって耐え続けたせいなのか、
顎が、そしてこめかみの辺りがズキズキ痛い。

身体的に非常に恵まれたナウシカではあったが、
昨日の激しい暴行に、実は後半は身体が完全に悲鳴を上げてしまっていた。
まったくダメージが無かった昨日ですら、ああなのだ。
今だって、ユパ様と体勢を入れ替えるためにほんの少し動いただけで、
体中に酷いダメージが残っているのが分かる。
今日も昨日同様大勢の男たちが自分の身体を求めて押し掛けてくるとしたら、
とてもではないが最後までもたないだろう。
昨日よりずっと早く激しい痛みが全身を襲い、
満足に身体を動かすこともできなくなってしまうだろう。
毛布で覆われた下腹部にそっと目を落とす。
今の自分は10人も相手できるだろうか。正直なところまったく自信がない。

昨日はされるがまま、男たちにいいように弄ばれてしまったが、
今日もそんなことではあっという間に身体が悲鳴を上げてしまうだろう。
やはり今日はただ無反応で耐えているだけではダメなのだ。
今日は大切な処が早々に痛めつけられてしまうことを防ぐためにも、
極力手を使って男たちを満足させよう。
昨日自分の身体を求めてやって来た男たちは、
全員一度達するとベッドから降りて行った。
1度達するとそれで満足する。男性とはそういうものらしい。
こちらから男たちのモノを掴み、強い刺激を与えれてやれば、すぐ達するはずだ。
皮肉なことに、昨日は男の悦ばせ方を嫌と言うほど身体に叩き込まれてしまった。
こちらから積極的になるというのは不本意この上ないことだが、
谷のみんなを守るためだと思えば何てことはない。
やって来る男たちを先制攻撃で次々イかせてやればいい。
(これならいける!)
ナウシカの瞳に強い意思の光が戻る。

やがて複数の軍靴が響き、牢内に明かりが灯る。
将校が軍医と数人の兵士を伴ってやって来た。
軍医はナウシカに昨日凌辱の限りが繰り広げられた中央のベッドに移動するよう命令する。
ユパ様を起こしてしまわぬよう細心の注意を払い、
命令された通りに大人しくベッドに向かう。
歩を進めるたび、下腹部が引っ張られる感覚と共に鎖を引きずる重い音が響く。
足がふらつき、真っ直ぐ歩くことさえおぼつかない。
それでも、今日も問題なく男たちの相手ができるということを示さねば。
全身の筋肉が痛むが、それを悟られぬよう必死でベッドに横たわる。

毛布でしっかりと身を覆い隠していたが、軍医に命じられるまま、
毛布を肌蹴て、再びその身を男たちに晒す。
昨日の忌まわしい記憶がありありと呼び覚まされてしまい、一気に滅入ってしまう。
だが今は、羞恥心よりも軍医にどう診られるかの方がはるかに心配だった。
ダメージが酷く、今日はとても無理だと診断されてしまうと、
谷の女たちが船内に引きずり込まれるという最悪の事態になってしまうのだ。
正直なところ、そうならないという自信はあまりない。
軍医に自分の身体が酷く映らないことを心から願う。

軍医はカギを使って枷をヌルリと引き抜くが、
それだけで激痛に思わず悲鳴を上げてしまいそうになり、必死にこらえた。
残念ながら、やはり奥深くに重いダメージが残っている。これはマズイ。
身体の表面だけ見ても、昨日の蛮行の跡はまだハッキリと残っていた。
全身の所々が赤く腫れているが、特に双丘の腫れが目立つ。
双丘や臍の周辺、それに二の腕の軟肉には歯型までくっきりと残っている。

次いで軍医は性器とアヌスを診るが、昨日あれだけただれていたのがウソのようだ。
身体面で非常に恵まれたナウシカの祈りが通じたか、
それもと常に切った張ったを繰り返すトルメキアの軍医が処方した薬の効果と言うべきか。
まだ多少の腫れは残っているが、表面的に特に問題は認められない。
次いで軍医は内診を行う。
内診といっても、指が届く範囲で痛みがないか、内部に異常がないか、
本人に確認しつつ確認する程度のことだ。

「痛みはないか」
「痛くありません」
努めて平静を装い、激痛を堪えながら答える。
この軍医の専門は外科であり、婦人科は門外漢であること、
そして内診用の専用器具を持ち合わせていないことが幸いした。

軍医の診る限り、まだ多少の腫れは認められるものの、
今日もナウシカに性処理道具の役目をさせるのに不都合は特に見受けられない。
「お前さん信じられない回復力だな。まぁ念のため一応薬塗っとくか。」
呆れたように言う軍医の言葉を聞いて心底ホッとするナウシカ。
それでもを薬を塗るために軍医の指が秘奥に入った時には、
軟膏がしみた激痛で思わず声が出てしまい、冷やかされた。
やはり極力手で、それが難しいとしても出来る限り口だけで切り抜けなければ。

軍医たちが牢から出て行くのを見送って振り返ると、
ちょうどユパが目を覚ましたところだった。
「ユパ様お早うございます。
昨日はすっかりユパ様に寄りかかったまま寝ってしまってごめんなさい」
努めて明るく言う。
「ナウシカ、気分はどうだ? どこか、その…痛いところはないか?」
気を遣い、なんとか婉曲表現を使いたいのに、こんな聞き方しかできない。
しかし、(きっとユパ様は自分のことを軽蔑しているんだわ)
と思っていたナウシカは、
第一声が自分の身体を気遣うものであったことに救われた。
「ええ、もう大丈夫です。ホラ!」
片手は身を覆う毛布を握ったまま、もう片手を広げ、クルッと回り、微笑んで見せた。
(あれだけのことをされて、一晩で回復するものか…。)
「ユパ様心配しないで。私なら大丈夫です。
だってユパ様が一緒にいて下さるんですもの。私、ユパ様と一緒なら-」
気丈に、そして明るく振る舞うつもりだったのに、
そこまで言いかけたところで喉がぐうっと詰まり、言葉にならない。
大粒の涙がポロポロとこぼれてしまった。
ユパはそんなナウシカを黙って抱きしめてやり、優しくなでてやることしかできない。

てっきり朝から大勢の男たちが押し掛けてくるのかと思っていたが、
午前中は結局誰も来なかった。
昨日非番ではない兵まで大勢クロトワに引き連れられたので、
今日はそのしわ寄せで余計に忙しい者が増えたせいである。
おかげで牢の隅で拘束具を付けられたユパ様の側にずっと留まり、
その身を更に休ませることができた。
それでも午後に入るとポツポツと男たちがやって来て、行為に及ぶことになる。
ナウシカは思った以上に善戦することが出来た。
口でするよう要求する者もあったが、
機先を制し、ほとんどの場合手だけで果てさせることができたのである。

ナウシカにとって非常に意外だったことがある。
それは、牢にやってくるのは
必ずしもナウシカの身体を求める男ばかりではないということだった。
自分の妻や子供、親、祖父母の写真を見せ、ただ故郷の話をする者もいた。
「早く故郷に戻れるといいわね。娘さん、大切にしてあげてね」
男の手を優しく握り伝えると、目を潤ませながら、
「ありがとよ。こんなこと俺が言えた義理じゃないが…。
辛いだろうがお前も頑張れよ。よかったらまた話し相手になってくれ」
そう言い残して牢を去る者もいた。
「トルメキア帝国辺境派遣軍」といえば、「白い魔女に率いられる鬼の軍団」
として周辺に恐れられているのだが、
1人1人は同じ人間なのだと改めて実感する。

昨晩牢内に居た30人の男たちの多くは、
どんなに酷いことをされても決して谷の人々を守ることを止めようとしないナウシカに深い感銘を受けていた。
こういう所を見せられると、並の男にはもうその相手をレイプの対象とする心境にはなれない。
実際、この時の30人の男の多くは、
ナウシカの身体を求めて牢にやってくることは無かったのである。
更にその中の幾人かは、いわば伝道師となった。
早速その晩から、この人物は。と思う仲の良い男たちに、
ナウシカの立派な人となりについて説いて回ったのである。
そしてそうした噂を聞きつけた男たちの中に、
話し相手として牢を訪れた者がいたのであった。
遠くでウシアブがのんびり鳴している。
窓からはまだ青空が覗いているが、もう日没が近い。
ここまで7人を相手にしたが、まだ性器は使わせていない。
思った以上に事を進めることができ、幾分楽観的になる。
だが、最後に曲者が現れた。
それまでの男たちのように大人しく手だけで果てたので、
てっきりこれで一丁上がりだと思っていたら、そこから2回戦に突入したのである。
昨日からずっと、1度果てたらそれで終了だったので、
男性とは生理的にそういうものなのだと思い込んでしまっていた。
1度イった男は、今度はじっくりとナウシカの身体を堪能し始める。
狼狽したナウシカは、うっかり男のペースにはまってしまった。
「んっ、んあぁっ!」

やがて昨夜来の快感の波がゾクゾクと押し寄せ、そして濡れてしまう。
もう「慣れた」と思っていたのに、身体がイチイチ反応してしまう。
(変だ。こんなはずじゃ、こんなはずじゃ…)
男は尚もナウシカの身体に手を巡らせ、愛液をたっぷりからめた指で、
乳房の先端をぬるぬるとこねくり回す。
「くうぅ、 …やあっ!」
更にその全身をくまなく撫で回し、
そして時折不意に、二穴に指が侵入して来る。
「キャッ!」
やはり中はまだまだ痛みが伴うのだが、それすらも快感の波を高めてしまう。

最初は自分の気のせいだと思っていたのに、決して認めたくはないが、
同じことをされても昨日より身体が強く反応してしまう。
「性的な刺激に耐性がつく」という慣れを期待していたのに、
非常に健康的なその肉体は正常に機能し、あるべき自然な方向に発達した。
結果として非常に皮肉なことに、本人の期待とは逆の方向に「慣れ」ていた。

徐々に余裕がなくなってくる。
男はたっぷりと手を使って気を高め、それから回復した己自身を突き立てた。
ゆっくりとピストン運動を繰り返しつつ、相変わらず両手による愛撫も忘れない。
「うぐっ、うああぁぁぁ…!」

男が早くイってくれないと、自分ももう辛い。
必死に耐えるが、一度達した男はなかなか到達してくれず、
遂にはナウシカの方が先に気を遣ってしまう。
荒い息をしながら身体を震わすナウシカだが、それでも男はやめてくれない。
(こっ、この男、まだ…)
己自身を深々と下の口に咥えさせたまま、次々と体位を変え、様々にナウシカを辱める。
上にされ、下にされ、ひっくり返され、
もう自分で自分がどうなっているのかさえよく分からない。
果てしなく続くように感じられた男の責めだったが、
ナウシカの中に己の欲情を残らず注ぎ出し、ようやく終焉を迎えた。

あまりの濃密な行為にもうぐったりだ。
うつ伏せのまま枕に顔を埋め、肩で息をするナウシカに男は軽口を叩いた後、
パチンと尻を叩いて出て行った。
男を睨む気力も、すぐさま毛布を羽織る気力もない。
いつの間にか窓の外はすっかり藍色に変わっていた。

やがて2人分の夕食が運ばれる。
ユパ様と夕食をとりながらふと、(きっと今日はこれで終わりね)と考える。
一体どうなることかと不安に思っていたが、
よく考えてみれば、昨日はクロトワが後から20人も引っ張って来るから
大変なことになってしまったのであって、
非番でやって来たのは初めの10人だけであった。
しかも午後から一気にそれだけの人数の相手をさせられてしまった。
今日の様子が“日常“だとすれば、なんとかこのまま自分だけで全ての男の相手をし、
谷の女性たちに被害が及ぶことを食い止められるはずだ。
少しだけホッとする。

夕食をとり終えた頃衛生兵がやって来て、2人に入浴を促す。
「ユパ様、どうぞ先に入って来てください」
ナウシカがユパ様に勧めている時だった。
本来であれば、入浴後、就寝で今日は終わるはずだったのに、
ここでナウシカの運命が大きく狂わされることになる。
クロトワが数人の部下を従えて入ってきた。

昨日クシャナから皮肉を言われたせいなのか、今日姿を見せるのは初めてだ。
「よう、今日は自分から進んで奉仕したらしいな。そんなに男大好きだったのか。
大分本性が表れてきたな。」
「ふざけないで! 誰が好きこのんでこんなこと!」
「とぼけんなよ。男が牢に入って来るなり自分から取り出して、
嬉しそうにしゃぶりついてきたらしいじゃねぇか。
昨日一晩でよっぽど男根が気に入ったんだな、この淫乱め!」

「脅迫してこの状況を作り出しておいて、よくも言えたものね!」
「今更何気取ってんだ? もっと素直になれよ。
本当は今すぐしゃぶりたくてしゃぶりたくて、濡れちまってるんだろ?
俺様のイチモツを咥えさせて欲しくてウズウズしてんだろ?
それともコッチの若いのがいいか? 」
まったくこの男は何を言っているのか。話にならない。
「正々堂々と勝負できずにこんな卑劣な方法しか取れないなんて!
風の谷の誇り高い男たちの中に、貴方のような卑劣な男は1人もいないわ!」
「…驚いたな。まだ状況がちゃんと理解できてなかったのか。
それじゃあ俺様が教えてやる。
その気になれば、こんなチンケな弱小部族、あっという間にひねりつぶせるんだぜ?
正々堂々闘ったらご自慢の“誇り高い男”とやらが我々にまったく敵わないから、
お前が言いなりになるってことで存在を許してもらってんだろうが。
慈悲深いクシャナ殿下に感謝しろよな?」

なんたる身勝手な言い草!
カッとなったナウシカは一歩も引かない。
「臥せっている族長を突然乗り込んで殺害し、今度はその娘を脅迫して辱める。
トルメキアって、そういう卑劣なことばかりしているの? 恥を知りなさい!」
興奮していたナウシカは、クロトワの目つきが険しくなったのに気が付かない。
相手が「父を殺害した男」という意識があるため、
クロトワに対してはどうしても感情的になってしまうのだが、
それを差し引いてもナウシカはここで
悔やんでも悔やみきれない重大なミスを2つ犯す。

(これ以上挑発するのはマズイ!)
そう考えたユパの「ナウシカッ!」という、
短く押し殺した呼び掛けの意図を読めずに流してしまったこと。
そしてもう1つ。怒りに任せてその勢いのまま畳み掛けてしまい、
絶対言ってはならない禁句をつい口にしてしまったのだ。

「『ヒィッ!』って情けない悲鳴をあげて縮こまってたくせに!
あっという間に剣を叩き折られて気絶しちゃったせいで助かっただけのくせに!」
牢内が静まり返った。

この時クロトワは数人の兵を引き連れていた。
また、食器を下げに来た者、衛生兵などがそれぞれ護衛を伴って牢内におり、
更に牢に面した通路には、2人が言い争う声に一体何事かと足を止めた兵も数人いた。
間の悪いことに、10人ばかりの兵士が今のナウシカの声を聞いていた。

実は隊内では、「どうして参謀だけ助かったのか」ということが話題になっていた。
コマンド兵が全員ナウシカに撲殺されたのに、クロトワだけが生き延びた。
どう考えても、結果は普通逆のはずだ。
だが現実にはクロトワただ1人が生きている。
そのため隊内では、様々な説が流れていたのである。
勿論こんなこと、とても本人に聞くことなどできないし、
真相が明らかになることは恐らくないのではないかと思われていたのだが、
思ってもみない形でアッサリとナゾが解けた。
ナウシカに赤子の手をひねるようにあしらわれ、
あっけなく気絶してしまったせいで命拾いした。それだけのことだった。

そんな情けない醜状を、大勢の部下の前で赤裸々に暴露されてしまった。
この場に居合わせた部下たちに口封じをしたとしても、
この噂は瞬く間に隊内に広まるだろう。
クロトワはこの部隊のナンバー2だ。
隊に規範を示し、威厳を保たねばならない立場であるにもかかわらず、
この女によってそれが砕かれてしまったのだ。
実は今日の午後、クシャナからもこの女がらみで
自分の存在意義を揺るがせかねない指示を受けていた。

クロトワの顔色がサッと変わる。
「貴様、その身体に自分が置かれた状況を叩き込む必要があるな。
お前に罰を与えてやる。オイ、“指のヤツ”を呼んで来い。」
それまではナウシカがどんなに敵愾心剥き出しの態度でも、
常にニヤニヤと軽くあしらう感じだったのに、
今のクロトワにはそれまでの余裕綽々の雰囲気はもうない。

この後自分の身にどれ程過酷な運命が待ち受けているかを未だ知らないナウシカは怯まない。
銃や剣ならともかく、何が“指”だ。
この男は指がどうこうで自分を屈服させられると本気で思っているのか。
「貴方は何を怯えているの? まるで迷子のキツネリスのよう。
自分では私に敵わないと分かっているからまた部下に任せるのね」
「明日の朝、もう一度同じセリフが言えたら褒めてやるよ」
どうせ午後から延々やってることの延長だろう。そんな脅しに屈するものか。

“指のヤツ”と呼ばれた男が連れてこられる。
あらましを伝えられると、男は冷めた目でナウシカを見据え、言った。
「お前がただのか弱いメスだってことを思い知らせてやるよ」
「“指のヤツ”がやるらしい」という噂は瞬く間に船内に広まり、
夕食後の時間帯ということもあり、牢内には大勢の男たちがやって来る。

一糸まとわぬ姿でベッドに寝かされたナウシカ。
男は手を伸ばすと、ナウシカの秘奥に指を差し入れた。
ナウシカは内心安堵する。
一体どんなことをされるのかと思えばこの程度か。
大丈夫。これなら耐えられる。

男はナウシカの反応を伺いつつ挿入した指を少し動かすのみ。
こんなの、全然大したことない。
クロトワの前で反応を見せ、この男を悦ばせてしまわないようにしなければ。
ところが。
「ヒァッ!!」
まるでバネ仕掛けのように股を開き、尻を浮かせてしまった。
昨日最後にクシャナにされたのと似ているが、それとは違う。
こちらの方が更に強烈だった。
一気に余裕がなくなる。
「ここか」男はニヤリとつぶやくと、その場所を中心に刺激を与え始めた。
「さあ、存分によがり狂え!」
「イヤア! 止めて! お願い許してぇ!!」
みるみる上体は反り返り、ガクガクと震える。
絶対に反応しないつもりだったのに、反応しないどころか、
あっという間に「降参」してしまった。それ程の衝撃であった。
「ハアッ! アッ、アッ、うああ! ああぁぁーーーーっ!! イヤッ! お願い止めてえぇぇ」
「流石だな」
激しく悶え始めたナウシカをニヤニヤと見下ろしながらクロトワが言う。
戯れに胸をぐっと揉みしだくが、身体を大きく反らせてのたうつのみで、
その手を払いのける余裕すらない。
ついさっき、敵意剥き出しで喰ってかかってきたのと同一人物とはとても思えない。
「参謀、言葉が喋れてるうちはまだまだですよ。
これから叫び声も人のものでなくなりますから」
「へえ、そりゃ楽しみだ」

足はまるで壊れたロボットのように激しく不規則な動きを続けている。
「人前で足をだらしなく開かない」という、
女性には本能的に備わっていると言ってもよい程、極基本的な約束事ですら、
あっという間に守る余裕を失ってしまった。

男の指を呑みこんだままの股は、時にぎゅっと強く絞め付けられたかと思えば、
大勢の男たちの見ている前で、ふいに大きく開かれ、そして突き上げられる。
そのせいで左右に開いた下唇が、そして最も敏感な部分である可愛らしい若芽が、
敵兵達の目の前に不用心に晒されてしまう。
男はそれを親指の腹で グリッ と苛めた。
「ハギャッ!!」
その瞬間尻をベッドに叩きつける。
男は尚も責めを休まず、ナウシカの足は不規則な動きを続ける。
そして再びその股は大きく広げた状態で突き上げられ、
男から若芽を潰される、というのを繰り返すのだった。
「けっ! まったく、なんつーカッコだよオイ…」
ナウシカのあられもない姿を見下ろし、クロトワが呆れたように苦笑する。
喘ぎ声はいつしか悲鳴に変わり、上体は折れてしまわんばかりに反り返る。
上半身でベッドに接しているのは頭頂部のみ。

やがて男が言った通り、人間らしい悲鳴は失われ、
代わりに獣のような叫び声を上げるようになる。
それでも男は決してナウシカに息つく暇を許さない。
しまいには大きく見開いた目は白目に、口からは泡を吹くようになってしまった。
紅潮し、全身から汗が噴き出す。
完全に正体をなくし、ガクガクと激しく痙攣し、そして盛大な潮吹き。
「これ以上やると本当に気が狂っちまうんだ」
そう話しながら、男は尚も責めを許そうとしない。

「オイよせ、それ以上はもうやめろ!」
自分が何を言っても却って逆効果であることを知っているユパだったが、
ナウシカの尋常ではない様子と、「このままでは狂ってしまう」という声を聞き、
たまりかねて叫ぶ。
「その子の口が過ぎたのなら謝る。
ワシの命で償ってもよい。だからもうやめろ!」
クロトワがニヤニヤとナウシカの狂態を眺めながらユパに言い返す。
「ガタガタとうるさいな。それ以上騒ぐと、“不慮の事故”が起きちまっても知らんぞ?」

男の説明はまったく耳に届いていなかったが、
危機的な事態に陥ってしまっていることは、ナウシカ自身も分かっていた。
一刻も早く止めないと、取り返しのつかない事になってしまうと、
本能が最大級の警告を発し続けるが、
一刻も早く止めなければと分かってはいても、ナウシカはただ獣のように叫び、
のた打ち回るばかりで、自力でこの状況を回避する術が全くない。

やがて目の前に幾何学模様が現れ始め、だんだん視界が光で白くなってゆき、
そして頭の中で音を立てて電流が流れるような感覚を味わう。
(イケナイ! コレイジョウツヅケテハイケナイ!)
ここが二度と戻れなくなる狂気の世界の入り口だということがナウシカにはハッキリ分かった。
今すぐ止めてくれなければ、自分はもう戻れない。
そんな、本当に寸前のところで男の手は止まった。

男は責めを止め、ヌルリと指を引き抜く。
幻惑する光と音が収まるにつれて、精神世界に閉じ込められていた意識が外界に戻ってくる。

だが、ナウシカの受難はまだ終わらない。
ようやく危機的な状態を脱し、本能が最大級の警告を発するのを止めると、
ホッとする間もなく今度は一気に絶頂の波が呼び戻される。
足の不規則な動きが収まる代わりに、今度は腹が ビクン! ビクン! と大きく痙攣する。
「うわあぁぁああああーーー。ひぐっ、いっ、、、あーーーーーっ!」
涎が垂れ、涙が流れ、呼吸は浅く速くなり、肩が、そして全身が震えだす。
今下手に身体を動かすと、どうにかなってしまいそうな気がして、
目を見開き、震える両腕を抱きしめたままひたすら波が静まるのを待つ。
「…アッ! …アッ! …アッ! …アッ!」
拍動と共に波が襲う。
意識はハッキリしているのに、押し寄せる激情をどうすることもできない。
「こういう状態の時は全身がむき出しのクリちゃんみたいなもんなんだ。
参謀、宜しければお試し下さい。どこを触ってもイきますから」

「!? ひぁぁぁあぁぁーーーーっ!!」
誰より驚いたのはナウシカ自身だった。
クロトワに頬から顎にかけて軽くなでられただけで、
首筋から鎖骨に沿って指を滑らされただけで、
まるでその部分が剥き出しの性器でもあるかのようだ。
体中に電流が流れるような感覚と共に、達してしまう。
イヤイヤをしてその場所を触らせまいと身を捩り、
下腹部を激しく痙攣させ、喘ぎ声を上げる。
下半身は完全に池に没していた。

「へぇ、コリャすげえや。ここもか! ここでもか!」
「あぐっ! いあぁぁぁーーーーっ!」
クロトワはナウシカが絶頂に達し、身を捩って喘ぐ様子をニヤニヤと眺めながら、
尚もその身体を弄ぶ。
クロトワは激しく喘ぐナウシカの耳元に顔を近づける。
今のナウシカにとっては、こうして耳元に顔を持って来られるのすら駄目だ。

「俺に『恥を知りなさい』とか言ってたよな? お前こそ恥を知ったらどうなんだ?
『谷の男たちは誇り高い』んだろ?
その谷のお姫様が顔触られてイくって、一体どういうこった?
恥がなさ過ぎだろ。 エエ? ほら。 ほ~うら!」
「わああ! ひゃめっ、ひゃめえええええぇぇ!」
そうしているのがクロトワであるとハッキリ分かっていながら、
身体が反応してしまうのを押し留めることができない。
身を捩るたび背中を摩擦するシーツの刺激さえも辛い。

「くっくっく、お姫様がこんな目に遭ってるってのに、谷の男共は一体どうした? 隅っこに隠れて何もしようとしないじゃねぇか。
そんな情けない男共のことを、『谷の男たちは誇り高い』なんて、
お前も随分とお人好しだな?」。
「たっ、たにのおっ、 おっ、おっ、…ぶじょ くうぅぅ… うあっ! すっ、すなああぁぁっ!」
「ハァ? 何言ってるのか全然ワカンネェ。
言いたいことがあるならちゃんとハッキリ言えよ。 ホレ、ホレ!」
「ひぐっ! いあぁあぁぁぁ!」

先程部下たちの面前で恥をかかされたことへのお返しとばかり、
いつまでもその身体を弄び続けるのだった。
父を殺害した男に触れられるたび、いちいち醜態を晒し、
浅ましい喘ぎ声を発してしまうこの身が恨めしい。
(もういい加減にして! …畜生! 畜生! 畜生!)

その後ナウシカはやっと解放される。
全身汗でぐっしょりで、まるで頭から水をかぶったかのようだ。
まだ胸で息をしているが、それでもなんとか落ち着きを取り戻すことができた。
だが何度もイかされてしまったせいで下腹部は未だジンジンと痺れ、
手の震えもなかなか治まらない。
先刻のもう少しで狂気の領域に飛び込んでしまいそうな
恐ろしい感覚がまだ生々しく残っている。
(これが「主従関係を教え込むための罰」!)

確かに反抗する気力が失せてしまう程恐ろしい感覚を味わわされたが、
それでもなんとか無事切り抜けることができた。
今頃になってやっと、ユパ様は自分を制してくれていたのだと気が付く。
クロトワは自分を敵視している。この男に道理は通じない。
正論を言っても、身勝手な理屈を振り回した挙句、
こんなことをされてしまうのがオチなのだ。
まともに付き合ったら、一切反撃できないこちらが馬鹿を見るだけだ。
次からはもっと気を付けなければ。
…それにしても今日は最後の最後で大変な目に遭ってしまった。
本当にもうぐったりだ。明日に備えて今日は早めに寝てしまおう。

ところがナウシカが落ち着きを取り戻したのを見ると、男は、
「じゃあ、2回戦目な?」そう言いながら再び指を差し入れてくる。
てっきり今のでもう終わったのだと思い込み、
就寝のことばかり考えていたナウシカは狼狽した。
(冗談じゃないわ! もう十分のハズでしょ! これ以上されたら、本当に狂っちゃう!)
ありったけの気力を振り絞って男を睨み付けると、叫んだ。
「ヤメロッ! もう、いい加減にしろっ!」
「…涎垂らしてる奴にそんなこと言われてもなぁ。。。」
ナウシカはハッとして口を拭う。
「しかしなかなかいい気概だ。その様子だとまだ楽しませてもらえそうだな。
あと何回もつかな~?」
「!!」
(「何回もつか」ですって!?)

男は股の間に指を差し入れると、再び愛撫を始めた。
「キヤッ、止めろ! やっ、やめ、、、ヤッ、やめなさい! いっ、いい加減に!
…だっ! …ヤメッ! やあぁぁぁっ!!」
そしてナウシカは再び正気と狂気の羽間まで追い詰められる。

男の指からもたらされる巧みな刺激がたった数度、あとほんの数秒続けられるだけで、
もういつものナウシカは永久に戻らない。
ほんの僅か進んだだけで、もう二度と戻れぬ狂気の淵まで追いやられ、
どうなるかは男の意思とその手の動きに完全に委ねられてしまうのであった。