「昨日はどうしたんだろう、天道さん、様子がおかしかったな」
涼は眉を寄せてつぶやいた。

 

雨の中で、傘も差さずに歩いていた美少女の姿が脳裏によみがえる。同じクラスの優等生は、い
まどき珍しいほど清楚な少女だった。四月に同じクラスになり、彼女と出会って以来、涼はずっと
沙夜に惹かれていた。
どうやら男と話すこと自体が苦手らしく、なかなか会話を進めることができなかった。だがそれ
でも少しずつ打ち解けてきたつもりだった。
なのに、どうして──
この間は、彼を拒絶するような態度を取ったのだろう。
沙夜に、何かあったのだろうか。
心配でたまらなかった。
自分にできることがあれば何でもしたかった。
「夏目くん」
少女の声がして、涼はハッと振り返る。立っていたのは凛とした美貌が特徴的な、ポニーテール
の少女だった。
「東堂院さん……か」
「がっかりしたみたいな顔じゃない。誰だと思ったの?」
彼女──東堂院楓(とうどういん・かえで)の眉が険しく寄った。
「ねえ、いつかも言ったけど、あたしの気持ちは変わってないわよ」
楓が涼に近づく。
「あなたのことが好きなの」
「僕は──」
涼はすまなさそうに首を左右に振った。
「前にも言っただろう。同じクラスの天道さんが好きなんだ……ごめんね」
「あたしじゃ、駄目なの?」
楓が泣きそうな顔で詰め寄る。
「あたし、努力するから。頑張って、あなたの理想の女の子になるから。だから……お願い」
「駄目なんだよ……わかって、東堂院さん」
「ずっと好きだったのに」
楓が唇をかみ締めた。こらえきれずに閉じたまぶたの奥から、熱いものが込み上げる。気の強い
彼女が人前で流す、初めての涙。
「君ならきっと、もっといい人が見つかるよ。頑張って」
「天道沙夜……!」
楓が燃えるような瞳で涼をにらんだ。
「あんな女のどこがいいのよ。ねえ、知ってる? あの子、あんな顔してけっこうな淫乱娘なのよ。
もちろん、とっくに処女じゃない」
「……!」
涼の顔色がハッと変わった。
「よせよ。天道さんに失礼だぞ」
「失礼なもんですか。あたしは事実を語っているだけよ」
楓が叫ぶ。
「あたし、見たんだもの。あの子が放課後のプールで男とエッチしてるところを」
「……嘘だ」
「嘘じゃないわ」
「嘘だ!」
「嘘じゃない。あの子は汚れているのよ。あなたにはふさわしくないわ」
楓が首を振る。
「それよりもあたしを見て。他の男には指一本触れさせたこともない。あなたのために女の子の一
番大切なものを取ってあるのよ」
「……もういい」
「夏目くん、あたしは──」
「もう聞きたくない!」
涼は叫んで駆け出した。
楓の言うことは嘘に決まっている。ありもしないデタラメを並べ立てているのだ。
なのに何なのだろう、この胸のざわめきは。
放課後のプールでセックスをしていた──もしそれが事実なら。見も知らぬ男への嫉妬が湧き上
がる。
「そんなはずはないさ……彼女に限って、そんなはず……」
呪文のように、涼は何度も何度も同じ言葉を繰り返していた。

 

レイプされた上に、初めてのオルガスムスまで味わわされて、沙夜は大きなショックを受けてい
た。龍次に対しては嫌悪感以外の感情は持ち合わせていない。今までに二度犯されたが、いずれも
力ずくで、沙夜にとっては苦痛でしかなかった。
なのに、感じてしまった。圧倒的な性感の高まり。信じられないほどのエクスタシー。

──自分は本当に淫らな女になってしまったのだろうか──

沙夜は、自問自答を何度も繰り返す。決して答えの出ない、問いの答えを。
「天道」
(私は──ううん、そんなはずはない。篠原くんに無理やり犯されたんだもの。自分から望んだわ
けじゃない)
自分自身へ、必死で言い聞かせる。
「天道」
(そうよ、自分から望んでいるなんて、そんなはずは──)
「聞いているのか、天道」
気がつくと英語教師の顔が視界いっぱいに広がっていた。今が授業中であることを、今さらなが
らに思い出す。沙夜は学年でもトップクラスの優等生だが、今は授業に集中できるような精神状態
ではなかった。
上の空の沙夜に、英語教師が嫌味な口調で言い放つ。
「今俺が言った場所を訳してみろ。ちゃんと授業を聞いてたんなら当然できるだろ」
「あ、はい……」
沙夜は虚ろな表情で立ち上がった。
はあ、と深いため息を漏らす。
「早くしろ、天道。それともまさか、俺の授業を聞いていなかったのか? ん?」
英語教師の表情が険しくなる。沙夜はもう一度ため息をつくと、静かに口を開いた。
「彼は言った。『恋の始まりは晴れたり曇ったりの四月のようであり、この世はすべて舞台であり、
男も女もそこで演じる役者に過ぎない。彼らが演じる計算された恋は卑しいものでしかなく、真実
の愛はうまくいかないものだ』と」
難解な英文を即座に訳してみせる。授業を聞いていなくても、この程度の英文なら沙夜には即答
できた。
「う……よ、よろしい」
英語教師は不満げな顔をしながらも渋々うなずいた。本当は授業をろくに聞いていなかった沙夜
に説教でもしたかったのだろうが、ここまで見事に解答されては言い返しようがないのだろう。
──休み時間になると、一人の少女が沙夜の元にやって来た。
「この間はごめんなさい。プールでは言い過ぎたわ」
「東堂院さん……」
明るい栗色の髪の毛をポニーテールにした、美しい少女だった。長身で、モデルのようにすらり
とした四肢。小柄な沙夜は彼女のスタイルのよさを見るだけで、ため息をついてしまう。胸の膨ら
みは穏やかでおそらくAかBくらいのカップだろうが、全体的なスタイルが良いため、彼女の魅力
を損なってはいない。
大金持ちで空手の達人。校内にファン多し(主に女)。
彼女……東堂院楓(とうどういん・かえで)に関する情報を頭の中で整理する。
「あの、謝罪って?」
この間の水泳の授業で沙夜と美緒をレズ呼ばわりしたことへの謝罪のようだ。
「ちょっと嫌なことがあって、八つ当たりしてしまったの。最低だった、って反省してる。この通
り、謝罪させてもらうわ──ごめんなさい」
楓が深々と頭を下げる。武道をやっているせいだろうか、どことなく武士を思わせる古風な態度
だった。
「許してくれるかしら?」
「え、ええ。私は別に気にしてないから」
沙夜は一も二もなくうなずく。
「よかった。あなたっていい人ね」
にっこりと楓が微笑んだ。それからぼそり、とつぶやく。
「夏目くんが好きになるわけだわ」
「えっ?」
「あたし、夏目くんと同じ空手部なの」
楓が言った。
「夏目くん、部活動のときには、あなたの話ばっかりするのよ。きっと、あなたのことが好きなの
ね」
「わ、私のことを……?」
沙夜の顔が紅潮した。
「恋する少年って感じね。あなたがうらやましいわ」
「でも、私……別に可愛くもないし」
「なによ、それイヤミ? 学年一の美少女ともあろう人が」
「私は、そんな」
学年一の美少女だなんておこがましい。沙夜はそう言いかけて口をつぐんだ。
一瞬──ほんの一瞬だが、楓がすさまじい表情で沙夜をにらんだのだ。
(東堂院さん……?)
が、次の瞬間には楓の表情は元の穏やかなものへと戻っていた。
「ねえ、よかったら、あたしの家に寄っていかない?」
突然の、楓の提案だった。沙夜が面食らったような顔をすると、すかさずといった感じで楓がさ
さやく。
「あたし、前からあなたとゆっくりお話してみたかったの。友達になりたいって。迷惑じゃなけれ
ばだけど」
今まで彼女とはあまり口を利いたこともなかった。この間のプールの一件もあって、あまりいい
印象はなかったのだが、意外に性格もよさそうだ。いい友達になれるかもしれない。
「迷惑なんかじゃないよ。嬉しい」
沙夜ははにかんだ笑みを浮かべた。
内気で、人と積極的に話すよりも一人で小説を読んだり、書いたりして過ごすことが多い彼女に、
友人は少ない。いや、親友の沢木美緒をのぞけば、親しいと呼べる人すらいないかもしれない。
だから、純粋に楓の好意が嬉しかった。
「私でよければ、お友達になりましょう」
「じゃあ、あたしのことは楓って呼んでね」
「東堂……じゃなかった、楓ちゃん。私も……沙夜でいいよ」
「沙夜……うふふ、名前で呼ばせてくれるのね」
楓の口の端が吊り上がった。

「ここが東堂院さんのお家なの?」
沙夜は圧倒されていた。
駅前の一等地に建つ巨大な邸宅だった。一瞬、森林かと思った場所は屋敷の敷地内にある中庭に
すぎない。
東堂院家は一大財閥を形成する大富豪であり、楓はその一人娘なのだ。おまけに容姿端麗で空手
の達人。恵まれすぎるほど恵まれた境遇。
沙夜は彼女のプロフィールを聞いただけでため息が漏れてしまう。
「お嬢様だっていうことは知ってたけど──」
「嫌だな。大したことないわよ」
楓がくすり、と上品に微笑む。
「あたしの部屋に案内するわ」
長い廊下の突き当たりに、楓の部屋があった。
沙夜の部屋とは雲泥の差だった。彼女の部屋はせいぜい六畳程度だが、楓の部屋はちょっとした
ホールくらいの広さがある。調度品も一見して豪華なものだと分かった。
正真正銘のお嬢様だ。
「楓ちゃんってこんな部屋で暮らしてるのね……」
「正真正銘のお嬢様だからな」
野太い声が部屋の隅から響く。
いつからそこにいたのだろうか。巨大な影が、立ち上がった。
「あ、あなたは──」
沙夜の表情が凍りつく。
なぜ彼がここにいるの──信じられない気持ちで呆然と立ち尽くした。燃え盛る炎を思わせる、
逆立った金髪。鋭い瞳に凶悪な人相。耳には三連ピアス。
「し、篠原……くん?」
「よう、奇遇だったな」
彼女のバージンを奪い、凌辱を繰り返してきた非道な少年がニヤリとする。
「き、奇遇って……」
「彼の篠原家とあたしの東堂院家は懇意にしていてね。まあ、財閥同士のつながりってやつよ」
龍次が楓の側に寄る。
「あなた、篠原と寝たんでしょう。処女を失った感想はどう?」
楓の唐突な言葉に、沙夜は声を失った。
「なっ……」
どうしてそれを──浮かんだ疑問は、勝ち誇った顔の彼女を見て、すぐに解決した。沙夜はすべ
てが分かった気がした。
「あなたが……仕組んだことなのね」
「ええ、あなたがレイプされるようにセッティングしたのは、このあたし。薄汚い泥棒猫には相応
の罰が必要だもの」
うめく沙夜に対し、楓は事もなげに答える。
「まあ、無事に初体験を終えられてよかったじゃない。あなた、奥手そうだし彼氏もなかなかでき
ないでしょう。このままずっと処女なんてダサいものね」
「そんな……ひどい……」
沙夜がうめいた。目の前がさあっと暗くなっていくような絶望感。そんな彼女を楓が真っすぐに
にらみつけた。
「ひどいのはどっちよ。薄汚い牝ブタの分際で、あたしの夏目くんを横取りしようとしたくせに!」
「…………」
「夏目くんにこのことを言ったら、彼、顔を真っ赤にして怒ったのよ。あなたが清楚な女の子だっ
て信じてるみたいね。
だから──あなたにはもっともっと淫らになってもらうわ。彼が二度と振り向かないくらいに。
清純とは程遠い、淫乱女に変えてあげる」
楓がにやり、と笑みを浮かべる。龍次そっくりの陰湿な笑みだった。
「さあ、篠原。彼女を存分に犯してやりなさい」
「言われなくても」
龍次がにやにやと下卑た笑いを浮かべて迫る。沙夜は恐怖に凍りつきながら後ずさった。壁際に
背中があたり、その場に立ち尽くす。
「い、嫌です……やめて」
震える声音で懇願する。
「へっ、この間は喜んで俺にケツ振ってたじゃねえか」
「あれは……その……」
沙夜は先日この男に犯され、すさまじいエクスタシーを味合わされた。忌まわしい、記憶だった。
「助けて──」
悲鳴を上げかけた沙夜の前を、白い軌跡が横切る。
「逃がさないからね」
楓の、すらりとした足が跳ね上がっていた。圧倒的なスピードの上段蹴り。沙夜は、彼女が空手
の達人であることをあらためて思い出した。
腕力では到底かなわない。
逃げられない──沙夜の胸の中が、諦めと敗北感に埋め尽くされていく。
(また……犯されるの、私。こんな乱暴な男の人に、エッチなことされちゃうんだ……)
カチャカチャと音を立ててズボンをおろし、龍次はその場に寝そべった。すでに隆々となってい
るものが、たくましく天を衝いている。過去に二度、自分を貫いた肉根を目の当たりにし、沙夜は
ごくりと唾を飲み込んだ。
「俺の腰にまたがれ」
龍次は両手を頭の上に組んで、命令した。
「またがるって……」
「鈍いやつだな。お前が上になって、自分で入れるんだよ」
「自分から……?」
「お前に拒否権はねえよ。散々俺にヤられて中に出されたくせに、まだ逆らう気か? お前の体は
とっくに汚れきってるんだぜ。今さら一回や二回ヤッたところで、何も変わらねえよ」
龍次が低い声音で一気にまくし立てる。沙夜は言葉を失った。
確かに──
今さら、抵抗は無意味だった。沙夜はこの男に純潔を奪われ、膣内に男の精液まで受け入れてし
まった。
(私はもう汚されてしまったんだものね)
諦めの気持ちが心を埋め尽くしていく。
「早くしろよ」
龍次が再度命令すると、沙夜は力なくうなずいた。彼の腰をまたいで中腰の姿勢を取る。そそり
たったモノをつかみ、ぬらぬらとした入り口に押し当てた。くちゅ、と粘膜同士が接触する湿った
音がする。
今までに二度、龍次に犯されたが、騎乗位は初めての経験だ。沙夜はゆっくりと腰を下ろしてい
った。熱いものがスムーズに奥まで飲み込まれていく。
「きゃっ……!」
全部入ったとたん、龍次が下から突き上げた。ずん、と腹まで響く衝撃に、沙夜は思わず声を上
げる。ぷるんっ、ぷるんっ、と形のよい美乳が、上下運動にあわせて弾むように揺れた。
「腰を回せ。お前も動くんだ」
「は、はい」
沙夜は遠慮がちに自ら腰を揺する。
反撃とばかりに、龍次が下から突き上げる。角度を微妙に変えて、沙夜の敏感なポイントを執拗
に突いてきた。肉と肉がぶつかり合う音が連続する。重く、熱い一撃を受けるごとに彼女の背筋に
甘い痺れが込み上げてくる。
「あっ……んっ……はぁっ……!」
沙夜は、肩のところで切りそろえた黒髪をしきりに振りたくった。喘ぎ声が止められない。龍次
との肉交で体が悦びを覚えている……理性が、セックスの快楽だと認めることを否定する。だが、
どうしようもなく気持ちよかった。
「あらあら、好きでもない男に犯されて、イッちゃうの? 淫乱なのねぇ」
彼女の痴態を横から見て、楓が嬉しそうに高笑いする。
「そんな淫らな女は、夏目くんにふさわしくないわ」
と、二人の結合部に指を這わせた。
互いの性器で淫らにつながっている。楓の白い指先がその部分を撫でると、ぬちゃ、と湿った音
が響いた。沙夜が、感じている証だった。
「こんなにヌルヌルにしちゃって。よっぽど気持ちいのね、沙夜」
「わ、私は──きゃっ」
楓はなおも結合部を撫で上げ、さらに沙夜の肉芽をつまみあげる。同性ならではの繊細なタッチ
で弄られると、沙夜は思わず嬌声を上げた。
「感度抜群だな、沙夜は。すっかりイキやすくなっちまって」
下から龍次の手が伸びてきた。Cカップのバストを力強くも揉みしだかれる。乳輪を指先でなぞ
られ、淡いピンク色の先端はすぐに尖った。
「うぅ、締まる……気持ちイイぞ、沙夜」
彼の声は満足げだった。開通して間もない膣の弾力を堪能しているようだ。
沙夜は男を迎え撃つように、自分から腰をグラインドさせた。もっと気持ちよくなりたい……牝
としての、半ば本能的な行動だった。
「駄目……腰が勝手に動いちゃう!」
「もうすぐ……イクぞ! 中に出すからな」
龍次のピストン運動が激しさを増す。
とたんに沙夜の顔が蒼白になった。
(えっ、中出し? そんなことして妊娠したら……)
恋する相手がいるのに、好きでもなんでもない男の子供を妊娠してしまう……途方もない背徳感
だった。
「どうした、嫌なのかよ」
「こ、これ以上は──本当に妊娠しちゃう!」
沙夜が悲鳴を上げた。
「いいじゃない、孕ませてやりなさいよ、篠原」
横から楓が愉快そうに言った。
「娘が産まれたら、東堂院家で飼ってあげるわ。母娘そろって、ね」
「嫌……ひどいわ」
「じゃあ、やめるか」
龍次が腰の動きを止めた。
「やっ……そんな、突然やめるなんて」
沙夜はもどかしげに腰を揺すった。もう少しでオルガスムスに達するというのに、ここで止めら
れては生殺しだ。
「ね、ねえ、お願い」
「お願いって、何をだ?」
「だから、その……」
「はっきり言えよ。じゃなきゃ、わからねぇな」
「だからっ……」
沙夜は唇を震わせた。
優等生として清純に生きてきたこれまでのことも、涼に対して初めての恋心を抱いたことも、今
はどうでもよかった。
ただ、快楽の虜になっていた。
「私を貫いてっ……その、たくましいので私を、メチャクチャにしてぇっ!」
とうとう快楽に屈服した。
「じゃあ、お前からおねだりするんだ。中に出して、ってな」
「うう……」
龍次がひときわ激しく肉茎をたたきつけた。ぐぐっ、と熱い感触が奥まで押し入ってくる。
「はぁっ……な、中に──」
沙夜は無我夢中で叫んだ。
「私の中に出してください!」
「いいのか、孕んじまうかもしれねぇぞ?」
「い、いいですっ! 妊娠してもいいから! 熱いのいっぱい、私の中に注ぎこんでぇ!」
「よーし、よく言えたな」
龍次は沙夜の細腰をつかむと、ぐいっと真下に引きおろした。たくましいモノが沙夜の胎内いっ
ぱいを埋め尽くす。
「出すぞ、沙夜! 中に出すぞ!」
肉茎を子宮口にめりこむほど挿入され、どくっ、どくっ、どくっ……と一番奥にたっぷりと精液
を注入される。
「はぁぁぁぁっ、イク、イクう!」
膣に直接射精されたことを悟り、沙夜は叫び声を上げた。
(……とうとう、自分から中出しを受け入れてしまったのね……私、もう駄目……!)
すさまじいまでの絶頂感が沙夜の全身に広がっていく。体中が弛緩し、膣孔から透明な液体が大
量にほとばしった。まるで失禁するように、ぷしゃぁぁぁぁっ、とあたり一面に飛び散っていく。
「あらら、潮まで噴いちゃったのね。本当に淫乱だわ、あなたって」
楓が嘲笑する。精液と愛液にまみれながら、沙夜の意識は薄れていった。

 

「どうしたの、美緒ちゃん。ボーっとして」
放課後の教室で何度もため息をつく美緒に、沙夜が声をかけた。
「え、ああ、ちょっと……ね」
美緒の声は沈んでいる。いつもは元気すぎるほど元気な親友が、ここ最近は、ずっと虚ろな表情
だった。彼女は野球部のマネージャーをしているのだが、人づてに聞いた話では、そちらも休んで
いるらしい。
あれほど野球が好きで、その気持ちが高じて野球部に入った彼女がなぜ──?
沙夜は心配でたまらなかった。もちろん彼女自身も大きな悩みを抱えてはいる。同級生の篠原龍
次にレイプされ、あまつさえクラスメートの楓に裏切られたこと。忌み嫌う男を相手に、幾度も体
を奪われ、絶頂を極めさせられたこと。
沙夜自身もずっと辛い思いを抱えてきた。だが、友人の悩んだ顔を見るのも同じくらい辛い。
「なにかあったの? 私でよければ、相談して」
「……ありがとう」
美緒が笑った。だが明らかに作り笑いと分かる笑顔だった。
「本当になんでもないよ」
「美緒ちゃん……」
(きっと何かあったんだ)
沙夜はそう確信する。
ただ、それを無理に聞き出すことはしたくなかった。

なんでもかんでも打ち明けるのが友達ってことはないでしょ。いつか話せるときがきたら──あ
たしでよかったら、いくらでも聞くから。

それは龍次にレイプされて悩んでいた沙夜に、美緒がかけてくれた言葉。彼女を勇気付けてくれ
た言葉だ。
「ごめんね」
顔を上げた楓の表情は、同性である沙夜から見てもぞくりとするほど艶っぽいものだった。
(やだ……美緒ちゃんって、こんなにエッチな雰囲気してたっけ?)
思わず、心臓の鼓動が高鳴ってしまう。
沙夜は、この間の龍次との一件で自己嫌悪を感じていた。好きでもない男に犯され、オルガスム
スを感じてしまうなど、自分はなんとはしたなく淫らな女なんだろう、と。
だが──苦しむ友人を見て、決意を新たにする。
今まで沙夜が迷ったとき、悩んだときには、いつも美緒が側にいてくれた。明るい笑顔で相談に
乗ってくれた。優しい態度で癒してくれた。
だがその美緒が苦しんでいる。
落ち込んでいる場合じゃない。私はもっと強くならなければならない。強くなって、今度は沙夜
が美緒を助けたい。
だから、沙夜は決意する。
──涼にすべてを打ち明けようと。

空気を切り裂く音。畳と足との擦過音。白い軌跡。かすかな呼気。
静かな武道場で一人の少年が美しく躍動する様子を、楓はうっとりと見つめていた。
少年の名は夏目涼(なつめ・りょう)。楓と同じく空手部に所属しており、一年生ながらすでに部
内では最強との呼び声も高い。
今日も部員や顧問教師までが帰ったあとも、一人黙々と練習に励んでいる。
「相変わらずの、技のキレね」
一通りの演舞を終えた涼に、楓が拍手を送った。彼は激しく首を振る。
「いや、こんなんじゃ駄目だ。今の僕には──迷いがある」
「迷い?」
「心に動揺があれば技が鈍る。僕は、未熟だな」
秀麗な顔に険が生まれる。いつも爽やかな笑顔を崩さない彼にしては珍しい、苦悩の表情だった。
「なにかあったの?」
「……君も知ってるよね。僕には好きな人がいるんだ」
涼は、沙夜の様子がおかしい、と相談してくる。
もちろん、楓は沙夜の身に何が起きたのかを知っている。だがそ知らぬふりをして、親身に相談
に乗ってやった。
「ごめん、東堂院さんには嫌な話だったかな」
楓は以前、彼に告白して振られている。そんな少女を相手に、自分が恋する相手の相談を持ちか
けるのは非常識なことなのかもしれない。涼の気持ちを察して、楓は優しく彼の手を握った。
「ううん。あたしはあなたの相談に乗れるだけで嬉しいもの。あたしと話すことで、あなたの心の
負担が少しでも軽くなるなら、それだけで幸せ」
「東堂院さん……」
「あたしのほうこそ、前に変なこと言っちゃったけど」
沙夜がプールサイドで不良とセックスをしていた、と涼にぶちまけたことがある。
「ごめんね。あれは全部デタラメ。あたし、ヤキモチ焼いておかしなことを口走っただけなの。─
─許して」
「許すだなんて。僕は、別に」
「ありがとう。お詫び、といってはなんだけど、これからもあたしでよければ相談に乗るから」
「優しいんだね、東堂院さんって」
涼は感動したように楓を見つめている。ここぞとばかりに、楓はにっこりとした笑顔を作ってみ
せた。学年でも一、二を争う美少女の、極上の微笑み。
「楓でいいわよ」
「楓……ちゃん」
涼が小さくつぶやいた。
「あたしも涼って呼んでいい?」
「……いいよ」
涼が微笑む。
いい雰囲気だった。まるで、恋人同士のように。

 

──やがて涼は練習を終えて去っていった。武道場に残った楓の前に、龍次がやって来る。
「夏目とは順調みたいだな。仲よさそうに話してたじゃねえか」
「おかげさまでね」
楓がにっこりと笑った。以前に比べて、随分彼との距離を縮められた気がする。落ち込んでいた
涼の心の隙間に、上手く入り込めたと思う。
我ながら上出来だ。
涼と沙夜が上手くいく可能性はほぼゼロになった、と楓は考えていた。後は彼女から涼に対して
積極的にアプローチしていくだけだ。このままいけば、涼と恋人同士になれる日も遠くはないだろ
う。
「篠原のおかげよ。あたしのお願いどおりに、沙夜をレイプしてくれたから」
龍次をそそのかし、沙夜を犯させた甲斐があった。
「感謝するわよ、篠原」
くすり、と楓は妖艶な笑みを浮かべた。
「沙夜も、すっかり牝奴隷になっちまった。美緒と一緒だな」
「学年でもトップクラスの美少女二人をモノにしたんじゃない。鼻が高いでしょ」
「学年でもトップクラスの美少女ってんなら、もう一人いるだろ」
「えっ?」
黒い影が、覆いかぶさる。骨太の両腕が彼女につかみかかる。楓はとっさにバックステップして、
彼の突進を避けた。
「ちょっと何するのよ」
栗色のポニーテールを振り乱し、彼女が怒声を発する。
「胸は小さいけど、いい体してるよな」
「な、なにを……」
楓の声がうわずった。龍次の雰囲気の変化にゾッとなる。
この男、まさか私を──
「ヤらせろよ」
龍次のぎらついた視線が楓の全身を嘗め回す。すらりとした四肢も、白い道着に包まれた胸や腰
も、あますところなく視姦していく。
「何言ってんの! あたしはあんたなんかと──」
「俺に指図するな」
龍次が吼える。
「俺は誰の指図も受けない。誰の言いなりにもならない。お前の言うことを聞いたのは、俺自身が
面白そうだと感じたからだ」
龍次がふたたび突進する。威嚇するように両腕を広げ、楓を捕らえようと襲い掛かる。
楓の上体が、ぐん、と沈んだ。地面すれすれを旋回するような回し蹴り。無防備な足元を払われ、
龍次は無様に転倒する。
「くっ──」
彼はすぐさま起き上がり、楓との距離を詰めようとする。接近戦になれば、腕力に勝る龍次のほ
うが有利だ。
楓はサイドステップで避けると、半円を描くような動きで、彼の側面から攻撃を放つ。喉元をえ
ぐるような手刀に、急所を狙った正拳突き。中段蹴りのフェイントを織り交ぜ、ローキックを繰り
出す。
巧みなコンビネーションが龍次の全身を捕らえた。
「ぐっ……!」
さすがにダメージを受けたらしく、龍次は無様に転がりながら楓から遠ざかる。口元の血をぬぐ
い、すさまじい眼光でにらみつけた。
「チョコマカと動き回りやがって……うっとうしい女だ」
「舐めないでよね。パワー自慢らしいけど、スピードならあたしのほうが圧倒的に上なんだから」
楓はポニーテールをはさり、とかきあげ、得意げに言い放った。フットワークを活かした高速戦
闘こそが彼女の真骨頂だ。龍次のような薄汚い不良ごときに捕らえられるようなスピードではない。
「さすがに本格的に武道をやってる奴は違うか」
「当たり前よ。あなたがいくら喧嘩自慢だろうと、所詮は素人。あたしに勝てるわけないでしょ」
「素人──ならな」
龍次の口の端が釣り上がった。
不気味な気配を感じ、楓の体が凍りつく。
「えっ?」
「俺が正式な武道を学んでるとしたら、どうする?」
「な、何を言って……」
訝しげに眉を寄せる楓の眼前で、龍次の構えが変化した。
デタラメな喧嘩自慢の姿勢から、格闘者の構えへと。
「篠原、あんた──」
「こういう『技』に頼るのはあんまり好きじゃないんだがな。俺だって女に負けるわけにはいかね
ぇ」
龍次が低い姿勢から突進する。楓の反応速度をはるかに超えて、一瞬のうちに間合いに侵入して
くる。
縮地、と呼ばれる古武道独特の歩法。むろん、素人が一朝一夕に体得できるような技術ではない。
龍次は、正式な武術を学んでいるのだ。
「こいつ──」
楓はあわててバックステップしようとする。瞬間、
「遅えよ」
龍次の腕が彼女の胴に巻きついた。万力のような力で引き寄せられる。強烈なタックルを食らい、
地面に押し倒される。
「ぐっ!」
地面に背中をたたきつけられた衝撃で、一瞬息が詰まった。スレンダーな体に龍次の巨体がのし
かかる。
「なんで、あんたがこんな技を……」
「俺だって名門篠原家の御曹司なんだぜ。護身術の一つや二つは身につけてるさ」
楓は闘志と絶望が複雑に入り混じった目で、龍次を見上げた。男と女だ。こうして単純な腕力勝
負になってしまえば、勝ち目はない。
あっというまに帯を外され、両腕を縛り上げられた。動きを封じられた楓は絶望的な表情で叫ぶ。
「や、やめて……」
「いくら女を犯しても退屈なんだよ」
龍次の瞳がぎらついている。欲情の視線が、まっすぐに楓の肢体を射抜いた。
「お前なら、まぎらわせてくれるか?」
「やめてぇっ……!」
道場に悲鳴が響く。
龍次はじらすように、ゆっくりと道着の下穿きを脱がせた。両手を縛られている楓は抵抗するこ
とができない。上衣をまとったまま、白磁のような下半身が男の前にあらわになった。
恥丘を覆うヘアは薄めで、その下には無垢な女性器がたたずんでいる。ぴっちりと閉じたピンク
色の小陰唇がひくひくと息づく。
「可愛らしいモンだな。全然使い込んでなさそうだ。処女だろ、お前」
「…………」
「なんだ、経験済みか?」
「そ、そんなわけないでしょっ。あたしはバージンよっ!」
楓が怒鳴った。
「涼に捧げるために、大切に取ってあるんだから。あんたなんかが触れていい場所じゃないのよ、
篠原っ!」
「へえ、そいつは──」
ぬるり、と龍次の指が小さな膣孔に潜り込んだ。同時に三本。乱暴に粘膜をかきまわし、擦りあ
げる。遠慮のない指使いに、楓は激しく顔をしかめた。
「い、痛いっ……!」
「なんだ、自分で指を入れたことくらいあるだろ」
「な、ないわよっ」
「オナニーもしないのかよ」
「当たり前でしょっ。あたしがそんな嫌らしいこと──あうっ!」
さらに包皮を剥かれて肉芽を露出させられる。コリコリとしごかれ、楓は強気な顔をゆがめた。
「お、濡れてきたじゃねえか、このスケベ女が。ホントは期待してたんだろ。え? そうなんだろ?」
男がうれしそうにニヤニヤと笑った。さんざん愛撫を受けて、楓のその部分は濡れはじめていた。
(こんな男の前で……!)
悔しさと恥ずかしさで顔から火を吹きそうだ。
「よーし、期待にこたえてやらないと男じゃないな。今からブチこんでやる」
龍次が楓の両足を大きく左右に割った。ズボンのチャックからいきり立ったペニスを取り出して、
股間に襲いかかる。
「じっくり味わえよ。お前もこいつを待ってたんだろ」
「ふざけないで! あたしはあんたのことなんて何とも思ってないんだから!」
空手少女の太腿の間に腰を沈め、ペニスの先端で肉孔をまさぐっていた龍次は、やがて見当をつ
けた秘園にグッと腰をねじり込んだ。
「うぐっ!」
スレンダーな肢体が骨太意腕の中でのけ反った。楓の愛らしい鼻孔がふくらんで、苦悶の声を漏
らす。
ペニスの先端が肉の花びらを押しのけて、楓の体の中に入っていく。ドーナツ状の処女膜を擦り
千切るようにして、熱い先端部が押し進んでいく。狭い膣孔を力ずくで拡張されていく圧迫感に、
楓はきつく目を閉じ、ひたすらに耐えていた。
ぴりっ、という感触とともに、とうとう男のモノが処女膜を完全に通過する。
「い、痛っ……痛い、痛いっ……! ぬ、抜いてぇ!」
ぴったりと閉じていた花弁を左右にまくるようにして、龍次のペニスがさらに侵入していく。や
がて根元まで押し込まれると、少年の腰と少女の下腹部がぴったりと密着した。
「うぐっ……痛い……!」
「そんなに痛いか、楓? まあ痛いだろうな。キツキツだし、正真正銘のバージンだ。ハメてやっ
た甲斐があったぜ」
根元まで自分のモノを埋め込むと男は満足そうにうめいた。小さく腰を揺すると、二人の結合部
からつーっと破瓜の血が赤い筋になって垂れ落ちる。
「最後まで入ったぜ。どうだ、俺と一つにつながった気分は」
「ううっ、ひどい……!」
涼に捧げるはずだった、大切なバージンだった。こんな下卑た男に純潔を奪われ、楓は悔しくて
たまらなかった。
(もう取り返しがつかない……涼に、綺麗な体をあげられない……!)
きつく唇をかみしめた楓の表情を見て、あらためて処女を奪った征服感を味わったのか、男はう
れしそうな顔でピストン運動を始めた。
上衣に包まれた背中が道場の畳と擦れて、ひどく痛む。
「痛っ……痛いっ! そんなに動かさないでっ!」
「俺に他人の処女を奪わせておいて、自分が奪われるのは嫌か」
「あ、当たり前でしょっ! 大事なバージンをどうしてあんたなんかにっ……い、痛っ……!」
大声で叫び出したいような激しい屈辱感だった。
「許さない……あたし、あんたを絶対許さないから!」
「へっ、許さないならどうだってんだ。俺とお前はこうして、しっかり繋がっちまってるんだぜ。
今さらその事実は変えられねえよ」
楓は悔しさをあらわに、龍次をにらみつけた。
だがこれも女の本能なのか、男のペニスに何度も膣内をこすりあげられるうちに、楓の下腹部に
ぼんやりとした快感が生まれ始めた。
「あ……あ……あ……」
言葉にならない喘ぎ声が楓の口から漏れてくる。道着の前がはだけ、ささやかに盛り上がった乳
房が露出した。
「胸は小さいんだな」
「嫌──見ないで」
楓が弱々しく首を振った。
小さなバストは楓のひそかなコンプレックスだ。まだ成長途上ではあるが、同性に比べても控え
めなサイズに劣等感を覚えたことは、一度や二度ではない。
龍次の両腕が伸びてきて、楓の肉球を鷲づかみにする。乱暴に揉みあげ、万力のような強さで握
りつぶす。胸の芯で痛みが走り、楓は細い眉をしかめた。
「胸は性感帯じゃねえのか。まあ、いい。ならこっちで感じさせてやるからよ」
少年の動きが変化する。本能のままにたたきつけるようなピストンから、不規則な変化をつけた
変幻自在な動きへと。
たくましいモノが未開発な膣を拡張し、膣口から奥まで幾つものポイントを突いていく。
「んっ……ぐっ……!」
楓の口から甘やいだ喘ぎ声が漏れた。荒々しく犯されながら、少女は興奮し、肉を疼かせていた。
龍次は勝利をかみしめるように言い放つ。
「感じてきたか? 俺もイキそうだ。一緒にいこうぜ」
ピストン運動がどんどんと加速する。楓の方も快感が一気に高まり、下半身がジーンと痺れてき
た。こうなるともう止まらない。
「あああっ……! イクッ……もうダメッ、イクゥゥッ!」
楓がエクスタシーの絶叫を上げた。
「はあ、はあ、はあ……」
「分かったか、お前は俺の奴隷だ」
「は、はい……だから優しくして」
楓が涙声で懇願する。
──いったん心が折れてしまえば、彼女は従順な少女だった。
龍次が腰をたたきつけるたびに愛液がとめどなくあふれだし、ぐちゃり、ぐちゃり、と水っぽい
音を奏でる。すっかり堅さのほぐれた粘膜が押し広げられ、かき回される。
「気持ちイイ……気持ちイイですぅ!」
楓はポニーテールを振り乱し、絶叫した。
潤んだ瞳が龍次の視線と交差する。残忍な笑みを浮かべる少年が、なぜか無性に愛おしく見えた。
「もっと……もっと、してぇっ!」
楓が引き締った尻を自分から回すようにして、懇願する。淫らな期待に切れ長の瞳を輝かせる。
凛とした空手少女も、龍次の前では性欲に振り回される牝豚に過ぎなかった。
「へへへ、俺ももうすぐイキそうだ。きっちり孕むように、中に出してやるからな」
中に出す……その言葉を聞いて、エクスタシーに霞んでいた楓の意識が一気に覚醒した。膣内に
射精されれば、妊娠してしまうかもしれない。いくら先ほどまで処女だったとはいえ、彼女にもそ
れくらいの性知識はある。
こんな卑劣な男の子供を妊娠してしまうかもしれない、と考えただけで、耐え難いほどの屈辱だ
った。
「いいよな、楓」
「それは──」
楓が口ごもる。龍次の顔が近づき、ちゅっと音を立てて唇が重なる。
「んっ……」
初キスの感触に楓は陶然となった。唇を割って、龍次の舌が押し入ってくる。あっというまに楓
の舌が相手の口中に吸い込まれる。
「んんっ……」
唇を離すと、龍次は止めをさすように囁いた。
「お前は、俺の奴隷だろ」
たったの一言で。
楓の理性はあまりにもあっけなく崩壊した。
「は、はい、あたしの……中に出してください」
快楽と興奮に涙をにじませて、楓が哀願する。
「へへへ、立派な子供を孕ませてやるぜ」
(駄目……嫌なのに、妊娠なんて駄目なのに……逆らえない)
「うう、出るッ!」
うめき声とともに、ドロッとした精液が楓の膣にたっぷりと注ぎこまれた。
「あ、出てる……ッ!」
お腹の中を満たしていく精液の熱さに絶望を感じながら、楓は喜悦の声を上げた。
男が肉棒を引き抜くと、ぽっかりと開ききった秘孔から、白いどろりとした液体が流れ出た。
「はあ、はあ、はあ……」
「おっと、まだ終わりじゃねえぞ。こいつを綺麗にするんだ」
龍次は楓のポニーテールをつかみ、強引に顔を上げさせた。
「綺麗に、って……」
「お前の口でだ。そらっ」
赤と白の体液で染まったペニスを口に含まされる。ぬるりとした破瓜血と苦い精液が、楓の口の
中でブレンドされた。
「うっ……ごほっ……」
「吐き出すなよ。お前の中に初めて入ったチ○ポなんだ。丁寧に掃除しろ」
「う……は、はい……」
苦しそうに咳き込みながら、楓は半萎えのペニスをしゃぶり続けた。
豪奢な部屋の中央に白い影がある。
東堂院楓(とうどういん・かえで)は大きな姿見の前で、一糸まとわぬ裸身をあらわにしていた。
生まれて初めて男を迎え入れた裸体が、目の前に映っている。恋する人にだけ捧げようと大切に
守ってきた純潔だった。だがそれは一時間前、無残に散らされてしまった。
あの男、篠原龍次の手によって。
暴力的に。なすすべもなく。
誰の侵入も許したことのなかった処女地へ強引に押し入り、思う存分貫き、己の子種をまき散ら
していった。
「篠原に犯されるなんて──」
楓は、ぎり、と奥歯をかみ締めた。屈辱感が後から後から湧き上がってくる。
脳裏をよぎるのは、わずか一時間ほど前の出来事。
乙女にとって一生の思い出となるはずの初体験だったのに、しかも好きでもない男とのセックス
で、我を忘れるほど感じてしまった。すさまじいまでのオルガスムスだった。
そして理性がクラッシュした状態で、龍次の奴隷になることを誓わされた。
「だけど──」
彼女が本当に想っている相手は、いつだってひとりだけ。
「涼……あたしは純潔な体じゃなくなってしまったけれど、心まで売り渡していないから。だから
──あなたは許してくれるわよね? あんな薄汚い牝犬じゃなく、あたしを選んでくれるわよね?」
楓は目の前の姿見を殴りつけた。
甲高い音とともに、鏡面に無数の亀裂が入る。彼女の拳が裂け、噴き出した血が鏡を赤く染め上
げる。

──このまま、あいつの奴隷になるなんて真っ平よ。

冷静に立ち戻った楓は再び思考する。
彼女にとってもっとも大切な存在を手に入れる方法を。処女を失ってしまったが、涼に対する思
いはなんら色あせてはいない。龍次に隷属を誓わされたのは、しょせん快楽で一時的に理性が吹き
飛んでいたからだ。
「もう一度、篠原を利用してやるわ」
自分のバージンを奪った憎い男だが、利用価値はある。
「あたしが最終的に涼を手に入れれば、それで勝ちだもの」
楓の口の端に笑みが浮かんだ。
校舎裏に、肉と肉のぶつかる音と少女の喘ぎ声とが妖艶なハーモニーを奏でている。
逞しい体つきをした金髪の少年が、亜麻色の髪の美少女を犯していた。彼の動きに合わせて、セ
ミロングの髪の毛が舞い踊る。
彼──篠原龍次(しのはら・りゅうじ)は大企業『篠原コンツェルン』の御曹司として生を受け
た。生まれたときから人の上に立つことを義務付けられた一族。生まれながらの王。
だが彼は──親の敷いたレールを歩くことを拒否した。
上の二人の兄は、順調にエリートコースを歩んでいる。超一流の大学を出て、決められた出世コ
ースを超特急で通過。末は社長や会長にまで昇りつめるだろう。
だが、龍次にはできない。
無論その気になれば、兄たちと同じことができた。いや、能力だけで言うなら、二人の兄を凌ぐ
自信がある。いずれは龍次こそが、篠原コンツェルンのトップに君臨することも不可能ではないだ
ろう。
だが決められたレールの上を走るだけの人生を、彼はどうしても受け入れられなかった。自分が
歩く道は、自分の手で切り開いていきたかった。
だから龍次は道を外れた。
どうすれば、自分が望む道を歩めるのか──まるで見当もつかない。いつしか龍次はただもがき、
あがき、闇雲に暴れるだけの狂犬へと成り下がっていた。行き場のないエネルギーをぶつけるかの
ように。
喧嘩で相手を傷つけたことは数え切れない。何人もの女を犯してきた。
罪悪感はない。だが満足感もない。満たされない。
どれだけ刺激を重ねても──
「退屈なんだよ、くそっ……!」
沢木美緒(さわき・みお)の中心部に己の分身を打ち込みながら、龍次が叫ぶ。美緒の両脚を脇
に抱え、ぬちゅっ、ぬちゅっ、と肉棒を打ち込んでいく。
「あっ、はぁっ、気持ちイイ……」
美緒は両目を閉じて嬌声をあげた。しなやかな裸身が弓なりになり、あごが上向く。自分から腰
を回すようにして、龍次の突き込みを迎え撃つ。
ピストン運動を繰り返すたびに、雄大な乳房がダイナミックに揺れ動いた。みずから腰を動かす
だけでは飽き足りないのか、両乳房を自分自身で鷲づかみにし、荒々しく揉みしだく。
「はあ、はあ、もっと突いて! もっと、もっとぉ」
口から涎を垂らしながら美緒が絶叫した。明るくスポーツ好きだった少女の面影はもはやどこに
もない。そこにいるのは貪欲に快楽を求める一匹の牝だった。
(随分と乱れるようになったもんだぜ)
龍次はピストンを続けながら、口にくわえたタバコから紫煙を吐き出した。
初めて犯したとき、美緒の男性経験は皆無だった。膣の粘膜は初々しくまだまだ硬かった。だが
この数週間、何度も体を重ねたことで、美緒の性感はかなり開発されたようだ。龍次は調子に乗っ
てさらに腰をたたきつけていく。
学園でもトップクラスの美少女が快楽によだれを垂らし、自分の前に屈服している。男として最
上の征服感を味わえるシチュエーションだ。
だが龍次の気持ちはどこか冷めていた。
こうして美緒を抱きながらも、頭の片隅にもう一人の美少女の姿がちらつく。
おとなしげで清楚な美貌。優しげな笑顔。そして抜群の感度を誇る、淫らな体。
天道沙夜──
今まで何人もの女を犯してきたが、こんな風に執着したことはなかった。自分らしくない。まる
で青臭い恋愛をしているようだ。
と、
「駄目、あたし……もう駄目、もうイキそうっ!」
美緒が呼吸を大きくはずませた。すらりとした裸身が汗ばみ、薔薇色に上気している。指先をか
みしめ、ぶるぶると全身を震わせたかと思うと、キュッと膣内が収縮した。まるで精液を搾り取る
かのように、龍次の分身を強く締め付ける。
「お願い、イカせて……イカせてくださいっ」
潤んだ瞳で哀願され、龍次は腰の動きを一気に加速させた。美緒の胎内で肉ヒダがうごめき、張
り詰めたペニスを締め上げる。たちまち痺れるような射精感が腰のあたりに駆け登った。
「ううっ、くっ、出すぞッ……!」
「出して! あたしの中に!」
龍次たち二人の体が折り重なり、びくんびくん、と下半身が震えた。避妊具などもちろんつけて
いない。遠慮なく、美緒の膣にドクドクと射精する。
「ああーっ……!」
龍次が自分の胎内でイッたことを感じ取り、美緒は嬉しそうに歓声を上げた。ぶるぶると腰を揺
すり、龍次はゆっくりと体を離す。ペニスを引き抜くと膣孔の縁から、ごぽり、と白い精液があふ
れ出した。
と──、
「随分とお楽しみじゃない。ここは学校なのよ。ラブホテルじゃないんだけどね」
建物の陰から一人の少女が歩み出る。突風に、ポニーテールにした髪とプリーツスカートが軽や
かに舞った。
「ふん、また俺に犯されに来たのか」
龍次はスラックスを履きながらうそぶいた。
「っ……!」
この間のレイプをあらためて思い起こさせるような言葉に、楓は屈辱で顔を歪める。
二人の視線が空中でぶつかりあった。
龍次は、この間の出来事を思い起こす。武道場で彼女をたたき伏せ、力ずくで処女を奪ってやっ
た。初めてのセックスだというのに、彼女は絶頂に達し、龍次に屈従した。
だがいくら快楽に溺れていたとはいえ、楓がそう簡単に屈服するとは思えない。体は奪われても、
心までは奪われない。そういう女だ。
「この間のことをどうこう言いに来たわけじゃないわ」
楓は、気を取り直したように告げた。ポニーテールをかきあげ、自信たっぷりに龍次を見据える。
強気にあふれた、いつもの視線。
「沙夜のことで来たの。あなたの本心は分かっているもの」
「なに」
「彼女の身も心も、自分のものにしたいんでしょう? すべてを貪りつくしたいのよ。違う?」
龍次の眉がぴくり、と動く。
「あたしたちは協力できるはずよ。お互いの利害が一致しているもの」
楓の口の端に邪な笑みが浮かんだ。

武道場の裏手で悲痛な告白が行われていた。
「私、実は……」
沙夜はクラスメートの夏目涼(なつめ・りょう)に、自分の身に起きたことをすべて打ち明けた。
放課後の図書室で龍次に襲われ、純潔を奪われたこと。その後も校内でのフェラチオ調教や、プ
ールサイドでのレイプ。さらに楓の家で犯されたことまで。
「そうだったのか……楓ちゃんが、そんなことを!」
話を聞いた涼は激昂していた。普段は穏やかな笑みを絶やさない彼が、これほど怒りをあらわに
するところを沙夜は初めて見た。自分のために怒ってくれているのだ、と思うと純粋に嬉しい。
「私、汚されたの。もう綺麗な体じゃないんだわ……」
沙夜は涙を浮かべて語り終えた。
「汚されたなんて言うなよ」
涼が優しく慰める。
「君はどこも汚くなんてない。篠原が襲ってくるなら、僕が護るよ」
「夏目くん……」
「君は何も悪くない。不幸な事故にあっただけなんだ。だから──自分を責めないで」
「──ありがとう。優しいね、夏目くんって」
きつく閉じた瞳の奥から、涙があふれる。
二人はどちらからともなく寄り添った。言葉もなく、ただ寄り添う。それだけで心が満たされて
いく。
(夏目くんと一緒にいると、暖かい気持ちになれる)
沙夜は心からの安らぎを感じていた。
だが同時に、体の芯から『あの感覚』が消えない。龍次によってもたらされた、圧倒的なオルガ
スムスが──
体と、心と。
二つの狭間で沙夜は揺れていた。
「どうしたの、天道さん」
「あ、いえ……」
沙夜は首を振って、話題を変えた。
「私ね、この間、新人賞に応募したって言ったでしょう」
巴里出版、という大手出版社の恋愛小説部門だ。
「最終選考まで残ってるんだけど、結果がもうすぐ出るの。もし……もし私が入選した羅、お祝い
してね」
「ああ、美味しい店にでも食べに行こうか」
にっこりと涼が答える。
ようやく心が通じ合えた、という実感があった。
「そいつは俺の肉便器だ。横取りとは感心しねえな、夏目」
重い足音が、背後で響く。
「お前もお前だ、沙夜。俺のいないところで、別の男にケツ振りやがって。とんだ尻軽じゃねえか」
沙夜の顔がこわばる。
金髪の少年が二人の背後に立っていた。
龍次は自分でも驚くほど、涼に嫉妬していた。

活動的で明るい少女・沢木美緒を。
清楚な優等生・天道沙夜を。
勝気な空手娘・東堂院楓を。

学園が誇る三人の美少女を、彼は立て続けにその毒牙にかけた。
中でも、沙夜が一番のお気に入りだった。もともとは退屈しのぎの、遊びのような気持ちで犯し
た少女だ。だが何度も肌を重ねるうちに、いつの間にか愛着──いや、それ以上の気持ちをいだく
ようになっていたのかもしれない。

この女は俺のものだ──

横取りをするな、とばかりに涼をにらみつけた。並みの不良ならそれだけで逃走していくであろ
う、強烈な眼光。
だが涼は一歩も引かない。
「天道さんに近づくな」
沙夜をかばうように前へ出て、真っ向から龍次と対峙した。
「そんな女のどこがいいんだ? そいつは俺に無理やりハメられても、最後にはヨガって自分から
中出しをねだる、とんでもない変態女だぞ」
「天道さんを──沙夜ちゃんを侮辱するな。僕が許さない」
「侮辱じゃねえよ。事実だ」
「君がいやらしいことを強制しただけだろ。本当の沙夜ちゃんは、そんなことを望んではいないん
だ。好きでもない男に、望んで身体を許したりはしない。
清らかな、女の子なんだ」
度重なる挑発に、涼が怒声を放つ。常に穏やかで爽やかな態度を崩さなかった少年が、今はじめ
て牙をむいていた。
「へえ、怒ったのかよ」
龍次がぞろり、と舌で唇をなめした。
こうして相対しているだけで分かる。
涼は強い。自分の退屈を紛らわせてくれる相手としてふさわしい。
「なら力ずくでこい。腕っ節には自信があるだろ?」
「──言われなくてもっ」
瞬間、涼の姿が蜃気楼のようにかすんだ。
肉と肉がぶつかりあい、骨と骨が軋む音が耳元で響く。爆発的な速度で疾走した涼が、十発以上
の連続攻撃を見舞ったのだ。
「っ……!」
龍次は、かろうじて受け流した。
わずかに受け切れなかった一撃が頬を裂き、血を垂らす。唇にまで垂れてきた血を舌でぬぐい、
龍次はどう猛に笑った。
「お前も古武術使い、か。細っこい体のくせに重い打突じゃねえか」
龍次は幼少のころに護身術として、徹底的に古武術をたたきこまれた。そして涼が今ほど使った
のも、龍次と流派こそ違うが同質の古武術だ。
龍次の場合は、名門篠原家の御曹司として自分の身くらいは自分で守れるようになれ、と父親か
ら無理やり古武術を身につけさせられたのだが、涼がこの技を身につけた利湯はおそらく龍次とは
異なる。より強く、より強く──純粋に強さを求めた結果、おのずと古武術の習得にまでたどり着
いたのだろう。
(本物の武人ってわけだ。侮れねぇな)
「君と一緒にするなよ。僕はずっと修行を重ねてきた。つまらない喧嘩に明け暮れている君とは違
ってね」
涼の全身からすさまじい怒気が吹きつける。空気が揺らいで見えるほどの、圧倒的な怒りの波動。
(来る……!)
龍次はごくり、と息を飲んだ。
刹那、眼前に拳が出現した。
いつの間に接近したのか、まるで分からなかった。縮地と呼ばれる古武道独特の歩法。龍次も同
じ歩法を使えるが、涼のそれはほとんど瞬間移動に匹敵するほど。桁違いのスピードだった。
「ぐっ……がっ……ぐあっ……!」
顔、胸、腹と連続して衝撃が走り、龍次の巨体が吹っ飛ぶ。二十キロ近い体重さもものともしな
い。龍次は鮮血をまき散らしながら無様に地面に転がった。
「がはっ……! はあ、はあ、はあ……」
痺れるような衝撃が全身を駆け巡っている。倒れたまま指一本動かせなかった。致命的なまでの
ダメージ。
「誓えよ。もう二度と天道さんに近づかないって」
涼が怜悧な表情で龍次を見下ろす。
(なんて強さだ……化けモンか)
龍次は口から血の塊を吹き出しながら呻いた。想像をはるかに超える戦闘能力だ。同じ古武術使
いでも、涼と龍次ではレベルそのものが違う。
勝てないのか……敗北感が彼の心を染め上げていく。

 

地面に倒れ伏した龍次を、涼が傲然と見下ろした。
「彼女は僕が守る。これから先、沙夜ちゃんに指一本でも触れたら、今と同じ目にあわせる。忘れ
るなよ」
一方的に宣言される。言い返そうにも、口を開くと血の塊が出てくるばかりで、まともに言葉を
発することができない。
「さあ、行こう、沙夜ちゃん」
涼が沙夜の肩に手を回した。

──そいつは。

龍次が倒れたまま右手を伸ばす。沙夜はおとなしげな顔を赤く染め、涼に抱き寄せられて去って
いく。

──そいつは、俺のものだ。

力の入らない体に無理やり力を入れて、上体を起き上がらせる。指一本動かすたびに激痛が走っ
た。呼吸が、できない。
「……?」
気配を感じたのか、涼が彼のほうを振り返った。

──誰にも渡さねえ。

龍次は弱々しく立ち上がる。
体中が悲鳴を上げているのが分かる。それでも退くことはできなかった。彼は涼のような武道の
エリートではないが、狂犬には狂犬の意地がある。
「まだ立ち上がる気か」
涼の表情に侮蔑の色が浮かんだ。
「力の差は分かったはずだ。それ以上やったら病院送りくらいじゃすまないぞ」
「はっ、関係ねーな。せっかく面白い喧嘩なんだ。これくらいでやめられねぇよ」
龍次が吼えた。むろん虚勢だ。彼にはもう戦う力などほとんど残っていない。
「僕は楽しくなんてない。悪いけど──終わらせてもらう」
ふたたび涼の姿がかすんで消えた。足元の地面が爆発的にはじけ飛ぶ。先ほどと同じ、縮地によ
る突進。
(来たか!)
龍次の瞳がスッと細まった。
腰を落とし、右の拳に渾身の気を集中する。
体力は残りわずか。これが最後の一撃だろう。
「おおおおおおおおっ」
龍次が獣のように咆哮した。
涼が放つのが『怒気』や『闘気』なら、龍次が爆発させたのは混じりけのない『殺気』。それが二
人の、決定的な違い。激しい気合に圧倒されたのか、ほんのわずかに涼の動きが減速した。
──二人の動く軌跡が、交差する。
「ぐっ……!」
うめき声とともに地面に膝を落としたのは、涼のほうだった。
「ど、どうして……!?」
「気合の差、だ」
龍次が血まみれの顔で笑う。
ほんのわずかの差だった。刹那のタイミングで彼の拳が先に涼を捉えたのだ。気合勝ち、といっ
てもよかった。
「俺のほうが喧嘩なれしている。修羅場を多くくぐり抜けている。俺がお前に勝っているのは、そ
こだけだからな」
「くっ……」
力なく呻いて、涼は崩れ落ちた。

(夏目くんが負けた……!?)
両手両脚を縛られ、芋虫のように転がされた涼を、沙夜は虚ろな表情で見つめていた。
少女漫画に出てくるヒーローよろしく、涼が龍次をたたきのめし、自分を解放してくれるのだと
思っていた。だがこれは漫画ではない。
どこまでも現実、だった。
しょせん自分は龍次の手から逃れられないのだ。
「来いよ、沙夜」
龍次が涼に見せ付けるようにして、沙夜の体を抱き寄せる。彼女は無抵抗だった。先ほどの凄ま
じいまでの死闘を見た後では、抵抗しても無駄なことは分かっている。
「ほら、こいつの前で見せ付けてやろうぜ。俺たちが愛し合ってるってところを」
龍次が沙夜の顎に手をかけてキスを仕掛けた。とろりとした感触が花のような唇に密着し、舌が
潜り込む。
「くぅ……」
タバコ臭い吐息が鼻孔をくすぐり、沙夜は小さくうめいた。舌をからめたまま彼の手が伸びてき
て、あっというまに制服を脱がされる。オレンジのリボンタイを外され、青いブレザーもまくりあ
げられた。さらに純白のブラジャーも取り去られてしまう。見事な美乳を涼の前でさらし、沙夜は
羞恥に体を震わせた。
「い……やっ、見ないで、夏目くん──」
「どうだ、夏目。こいつのオッパイを見るのは初めてか」
ごくり、と涼が生唾を飲み込む音が、ここまで聞こえた。
無防備な胸を真正面から見られている。彼が自分の乳房を見て興奮している。そのことに気づき、
沙夜の羞恥心はさらに高まった。
「こいつは胸の感度がよくてよ。ちょっと弄っただけで、乳首を立たせやがる」
龍次が沙夜の双丘にむしゃぶりついた。乳輪の周囲を舌で丹念に舐めあげつつ、もう片方の乳首
を指先で軽くつまむ。二つの異なる刺激が、ねっとりと沙夜を責めてくる。
「んっ……!」
胸の表面から背筋に向かって電流が走った。
「感じてるか、沙夜」
「私……」
乳房をギュッとつかまれ、揉みしだかれた。沙夜はかすかに眉を寄せて、乱暴な愛撫に反応する。
じゅん、とかすかに体の芯が潤み始めているのが分かった。
「どうだ、エッチしたくなったろ」
龍次は乳房から手を離すと、得意そうに語りかけた。
「私……は……」
「沙夜ちゃん──」
身動きを封じられた涼が彼女を見つめる。
「どんなに犯されても、汚されても、君は君だ」
澄み切った瞳で、彼女を見つめている。
「乱暴なことをされるくらいなら、言うことはきけばいい。大丈夫。そいつに、君の心まで汚せやしないから」
「おいおい『乱暴なこと』とはなんだよ。俺は、無理強いはしないぜ」
龍次が肩をすくめた。
「あくまでも沙夜の意思で、だ。沙夜は自分の意思で俺に抱かれるんだ」
「…………」
沙夜は口をつぐんだ。
無理やり犯されるのなら仕方がない。だが涼の前で、自分から龍次に向かって『抱いて欲しい』
などと言えるはずがない。
龍次がスカートの下に手を潜り込ませてきた。ショーツの布越しに秘唇に触れ、指先で何度もな
ぞってくる。
「やっ……ああ!」
沙夜はこらえきれずに甘い歓声を漏らす。
さらに最後の防壁ともいえるショーツも取り去られ、龍次の手が直接秘処をまさぐってきた。愛
液があふれてくるのを確かめるかのように、何度もその部分に触れ、指を前後に動かす。
「気持ちいいだろ」
「私は……」
もはや自分の気持ちに嘘はつけない。涼には申し訳ないが、この不良少年を前にして沙夜ははっ
きりと欲情していたのだ。
心は涼のものに、体は龍次のものに。
二つの狭間で揺れ動いていた沙夜は、とうとう決断を下す。
「気持ちいい……です」
「じゃあ、今度は自分から寝そべって、おねだりしろ。入れてくれってよ」
「……は、はい」
沙夜はまるで催眠術にかかったように弱々しく立ち上がった。
自分から地面に仰臥すると、男を迎え入れるように太ももを左右に開く。瑞々しい秘唇の奥にあ
る粘膜は、すでに豊潤な愛液をたたえていた。
濡れている。
相手は好きでもなんでもない男──それどころか、乙女の純潔を力ずくで奪った憎らしい男のは
ずなのに。
「グショグショに濡れてるじゃねえか。じゃあハメてやるぞ」
龍次は嬉しそうに告げると、大きく開いた股間にたくましい腰を割り込ませた。充分に湿ってい
る膣孔の中心めがけて、ぶすり、と肉棒を差し込む。沙夜の秘孔は待ち望んでいたかのように、ス
ムーズに男根を受け入れた。
「はぁぁぁぁっ、奥まで届いてるぅ!」
剥き身のペニスを根元まで挿入されると、沙夜は悲鳴まじりに叫んだ。
恋する少年の前で、深々と貫かれてしまった。罪悪感と背徳感、そしてそれらをはるかに上回る
圧倒的な愉悦に、沙夜は何度も絶叫した。
「すげえ声出してるじゃねえか。夏目の目の前で俺にブチこまれたのが、そんなに嬉しいのかよ」
「嫌……嫌……!」
沙夜は自らの淫性を否定するかのように首を振り続ける。
龍次は勝利の咆哮を上げると、そのままピストン運動を開始した。沙夜の体に覆いかぶさり、野
獣のように腰を動かし続ける。緩急自在のピストン運動を受けて、膣が激しく収縮した。
「あいかわらずキツいな……油断してると、すぐにイキそうだぜ」
と──
「お楽しみみたいね」
現れたのは栗色のポニーテールを颯爽となびかせた美少女。
東堂院楓だった。

「楓ちゃん……!」
沙夜が驚きに目を見開く。現れたのは──楓ひとりではなかった。背後には何人もの男子生徒の
姿が見える。
「空手部員たちよ。学年一の美少女、天道沙夜の乱れる姿が見たいって」
「なっ……」
「すげえな、本当に犯されてるみたいだぜ」
「さっき説明したでしょ。沙夜はレイプ風のプレイが大好きなのよ。こんなふうに乱暴に犯されな
いと興奮しないの」
「へえ、天道っておとなしい優等生だと思ってたのに」
「俺、天道のこと、憧れてたんだぜ」
「見ろよ、オマ○コが丸見えだ」
少年たちが口々につぶやく。
沙夜はもはや彼らに対して反論できなかった。理性などとっくに麻痺していた。龍次に犯されて、
気持ちよくなっている自分には何も言えない。
それどころか衆人環視でセックスをしていることが、楓の言うとおりたまらない快感のようにす
ら思えてくる。
「ねえ、彼も我慢できないみたいだし、ご奉仕してあげたら?」
楓が涼の下腹部をまさぐった。スラックスの前は若々しくテントを張っている。爽やかな美少年
といえども、健康的な男だ。美少女のレイプシーンに、たまらず勃起している。涼は眉を寄せて、
うめいた。
「や、やめるんだ、楓ちゃん」
「口ではそう言ってても、こっちのほうは正直よ、涼」
口の端に妖しい笑みを浮かべ、楓はズボンのジッパーを下ろした。すでに勃起しきっていた若々
しい肉茎が、勢いよく飛び出す。
楓は先走りの液で濡れた亀頭をいとおしげに撫でた。それから龍次に向かって目配せすると、彼
は沙夜をバックの態勢で貫きなおす。
「さあ、沙夜。口で愛撫してあげなさい」
「私が、夏目くんを……」
「愛しい彼のモノでしょ?」
「は、はい……」
後背位で龍次とつながったまま、沙夜は涼のペニスに向かって首を伸ばした。恋する少年の分身
に口づけし、飲み込む。
「うっ……」
「念入りにしゃぶるのよ。あたしの中に入るモノなんだからね」
楓が沙夜に命令する。沙夜はもはや思考能力すら薄れ、ただひたすらにフェラチオ奉仕を繰り返
した。愛しい少年のものを必死でしゃぶり続ける。
「き、気持ちいい……」
涼は爽やかなルックスをだらしなく緩め、唇を震わせた。龍次によって散々仕込まれた沙夜の口
唇愛撫は、童貞の少年にとって強烈な刺激のようだった。
「うぅ、ダメだ、イク」
涼はあっけなく腰を震わせ、沙夜の顔に精液をぶちまけた。
「あ、夏目くんの……出てる」
熱い感触を顔中で受け止め、沙夜はうっとりと頬を赤らめる。清楚な容貌が熱い体液によって白
濁に染め上げられた。どろり、と頬をつたう精液を沙夜の下が舐めあげる。口の中に憧れの少年の
苦味が広がり、沙夜はうっとりとなった。
「よし、そろそろ俺もイクぞ」
龍次の動きが速まってきた。沙夜の臀部を引き寄せ、ラストスパートとばかりにペニスを打ち込
んでいく。
「中に……中に出すの?」
剥き身の肉棒が胎内でピクピクと痙攣する。膣内に発射される瞬間が近いことを感じ取り、沙夜
がたずねる。
「せっかくだから彼氏に見てもらえよ。俺たちが子作りするところをよ」
「や、やめろ! 沙夜ちゃんを妊娠させる気か!」
涼が絶叫した。
真っ青になる彼を、沙夜は他人事のように見下ろす。
(赤ちゃんができちゃうかもしれない……でもこんなに気持ち良いんだし、やっぱり中に出しても
らいたいの)
快楽の予感に瞳が充血する。
「出して! 私の中にドクドクって出して! 妊娠してもいいから──篠原くんの子種を沙夜に植
えつけてください!」
沙夜は自然と隷属の言葉を口にした。肩のところで切りそろえた黒髪を振り乱し、自分を支配す
る者に対し、種付けを哀願する。
「へっ、よーく見てろよ、夏目。これがお前の惚れてる女の正体だ」
龍次は膣の根元まで深々と押し込み、そのまま沙夜の胎内にドクドクと発射した。情け容赦なく
膣内に注ぎ込む。無垢な子宮を熱い牡のエキスが満たしていく。
「ああーっ!」
沙夜の頭の中で白い輝きが爆発した。背筋から痺れるような感覚が這い上がり、白い裸身を震わ
せる。蕩けるような快感が何度も、何度も連続して押し寄せる。
「イク、イク、イクうっ! イっクうぅぅぅぅぅっ!」
彼女の視界には、もはや自分を支配する者の姿だけが映っていた。沙夜は、完全に彼のモノにな
ったのだと実感する。
「はあ、はあ……」
膣の中にたっぷりと射精され、沙夜は荒い息をついた。結合部の隙間から、汚れた精液がダラリ
と垂れてきた。
「すげえ、モロに中出ししてるよ」
「ギャラリーがいる中で普通にイッてるじゃねえか。ホントにインランだな」
「俺、正直言って、ちょっとガッカリしたな。天道って清純派じゃなかったんだ」
「あーあ、俺もヤリてえ」
二人の遅滞を凝視していた空手部員たちが口々に熱いため息を漏らす。
沙夜は何も言い返さなかった。いや、もはや彼らのことなど眼中になかった。
龍次から与えられる快楽だけが、彼女を支配するすべてなのだから──

絶頂を迎えた沙夜を、涼は呆然と見下ろしていた。
「君がこんなにエッチな女の子だったなんて……」
大きなショックを吐き出すように、呻く。
沙夜が処女でないことは、彼女からの告白で知っていた。彼女の責任ではない。野良犬にかまれ
たようなもの。事故なのだ──理性では分かっていた。
分かっていたつもりだった。
だがこうして他の男とセックスするところを目の当たりにするのは、やはりショックだった。お
まけに彼女は、犯されながらも絶頂を極め、あまつさえ自分から膣内射精までリクエストしたのだ。
「はあ、はあ、はあ……」
沙夜は荒い息を吐き出し、地面に横たわっている。だらしなく開いた両脚の付け根は、龍次の吐
き出した体液で真っ白に染まっていた。ピンク色の秘口からは、後から後から精液が垂れ落ちてく
る。
(本当に中出ししちゃったんだ……沙夜ちゃんは、やっぱり淫乱な女の子なのか)
涼の心が激しく揺れる。
たとえ体を汚されても、心は清らかなままだと思っていた。
だが、自分の考えは違っていたのかもしれない。天道沙夜は、自分が思い描いていたような少女
ではないのかもしれない。
「そうよ、涼」
まるで彼の心を読んだかのように、楓が囁きかける。
「これで分かったでしょう? 天道沙夜は大勢の人間に見られながら、好きでもない男にレイプさ
れるのが大好きな変態女よ。あなたにはふさわしくない淫乱な牝豚なの。
あなたに、本当にふさわしいのは──」
楓と涼の視線がからみあう。
「沙夜は思いっきり楽しんだんだから、次は涼の番ね」
ポニーテールの美少女が妖艶に笑った。
「楓ちゃん……」
もはや──涼の理性は完全に麻痺していた。正常な思考などとっくの昔にクラッシュしていた。
涼は楓の顔に吸い寄せられるように、ぷるん、とした唇にキスをした。遠慮がちに唇を割って舌
を差し入れると、彼女は情熱的に舌を吸い返してきた。
「ん、う……む」
柔らかく心地よい感触が涼の唇を覆っている。夢中になってキスを交わした後で、楓の引き締っ
た肢体を押し倒した。
「さ、来て、涼」
楓がうながすと、涼は緊張した手つきで彼女の股間を左右に広げた。
「震えてるね、涼」
「僕……初めてだから」
「あたしがあなたの初めての女になれるのね。嬉しい」
楓の顔がほころぶ。
「その……楓ちゃんは?」
「あたしは──」
楓の顔が一瞬ゆがんだ。
「い、一度だけ……」
「そうだ、俺がこいつにブチこんでやった」
龍次が背後から勝ち誇った。
涼の頭がカッと灼熱する。
沙夜といい、楓といい、この男がすべてを踏みにじった。清らかな花をことごとく摘み取ってい
く悪魔──
「待って、涼。今は、あたしのことだけを見て」
楓が必死の表情で彼にすがりついた。
「あなたにバージンあげられなくて……ごめんなさい」
潤んだ瞳で語りかける。どきり、とするほど可愛らしい仕草だった。
そうだ、今さら処女にこだわってもしょうがない。
涼は硬くなったペニスを右手でつかみ、潤んだ泉にあてがった。
すでに男の挿入を許したことのある肉の花弁はすっかりほころび、左右に口を開いている。彼女
にのしかかるようにして腰を落とすと、張り詰めた先端が膣の入り口を丸く押し開いた。
「んっ!」
楓のスレンダーな肢体がわずかに仰け反った。
涼は体重をぶつけるようにして腰を押し進める。熱い粘膜を割り開いて、ずるずる、とペニスが
没入し、やがて柔らかな壁に突き当たった。
根元まで入った涼のモノが彼女の子宮にまで到達した。
(ああ、なんて気持ちいいんだ)
若々しい果肉が肉棒を暖かく包みこみ、締め付ける。
狭い秘孔をえぐるようにして、涼はピストンを始めた。
目の前で沙夜が他の男に犯される、という異常な体験を乗り越えたせいか、初体験の割に精神的
な余裕があった。
ただ真っすぐに突くだけでなく、腰を微妙に左右させたり、緩急をつけると彼女の反応が変わっ
た。
「あん……」
閉じていた唇が小さく開き、吐息交じりの声を漏らす。
「うう、締まるっ……僕のを締め付けてくるっ」
涼は歓喜の声を上げた。痺れるような快感がペニスの根元から腰の中心へと抜けていく。
「楓ちゃん……楓ちゃん!」
涼は彼女の名前を連呼しながら、楓にのしかかった。理性が吹き飛びそうなほど興奮している。
円を描くように腰を振りながら、彼女の尻を抱きかかえた。ペニスが奥まで突き刺さり、より深く
楓と繋がることができた。
「あぁっ、はぁぁっ……」
彼女の吐息が熱く湿り気を帯びて、涼の耳朶をくすぐった。ペニスに伝わる感触が変わり、柔ら
かいものが絡みついた。興奮からか、楓の粘膜が男のモノを搾り取るようにぜん動する。
「突いてッ……もっと強く、深く!」
呼吸が乱れ、白い女体を若鮎のように踊らせる。涼は暴れる裸身を押さえ付けて、さらにピスト
ンを浴びせかけた。腰の振り方を激しくすると、楓は絶叫とともに背中に回した手に力を込めた。
「駄目、あたし、イキそう!」
「ぼ、僕もだよ、楓ちゃん……」
「イクっ……お願い、一緒に! 一緒にぃ!」
「うおおおおおっ」
涼は咆哮とともにラストスパートに入る。
瞬間、
「あッ、イクゥ!」
楓の背中がぐいと反り返り、全身が硬直した。相手がイキやすくなっていたとはいえ、涼は生ま
れて初めて自分の手で女性を絶頂へと導いたのだ。狭い膣内が収縮し、肉襞が涼の分身を締め上げ
る。
背筋が硬直し、ペニスを深々と彼女の膣に打ち込んだ状態ですべての動きを止めた。
「うう、く」
涼は目を閉じてうなると、熱い奔流を楓の体の奥底に注ぎ込んだ。ナマの精液を思う存分、彼女
の膣内に放出する。
「ふう」
体を離したとたん、虚脱感が全身に染みわたった。
少し萎えたペニスは、涼の発射した精液と楓の愛液にまみれて白く濁っていた。涼は満足感とと
もに楓の下腹部を見下ろす。丸い腹が小さく上下していた。押し広げられたままの両脚の付け根に
は、彼の精液で白く染まった泉が見える。
セックスの余韻に浸る楓を見ながら、涼はいつまでも立ち尽くしていた。

 

──沙夜が夏目涼の目の前で犯されてから一ヶ月が経っていた。
その日、彼女の応募した新人賞の結果が出た。沙夜の自宅に直接、出版社から電話がかかってき
たのだ。
「天道沙夜さん、ですね」
巴里出版の編集者が電話越しに丁寧な挨拶をする。沙夜は緊張気味に応対した。
「あ、はい。初めまして」
受話器を握った手にじわり、と汗がにじむ。相手は編集者である。もし自分がプロになったら、
これから先も付き合っていく相手だ。
失礼があってはならない。
そんな沙夜の緊張感を知ってか知らずか、編集者は淡々と言葉を継いでいく。
「今回、あなたの送ってくれた原稿は惜しくも不採用となりました」
「……そうですか」
「ですが、練り込まれた文体に丁寧な心情描写……とても素晴らしい素質をお持ちだと思います。
私は──いえ、私たち巴里出版はあなたの成長に期待していますよ」
編集者からの暖かい言葉だった。小説自体は最終選考で惜しくも落選したが、次回作を期待して
いる、とわざわざ激励の電話をくれたのだ。
「次回作ができたら、ぜひまた送ってください。待っています」
「は、はい……」
沙夜の声がうわずった。
小説家になる──子供のころからの夢に一歩近づいた。
だが心の片隅でなぜか気持ちが冷めていく。本当ならもっと高揚感を覚えていいはずだ。プロに
なるという夢を手繰り寄せたのだから、もっと歓喜の気持ちが湧き上がってきてもいいはずだ。
なのに沙夜の心の中では、喜びよりも虚無感のほうが強い。
「どうして……」
戸惑う胸の奥に去来するのはあのときの記憶だった。
恋する少年の前でたっぷりと犯された記憶。背筋を突き抜けるような快楽。両脚の付け根で甘く
うずく、自分の女の部分。
そっと触れると、スカートの上からだというのに、その部分が濡れているのが分かった。指で強
く押すと、背筋に電流のような快感が走った。一ヶ月前、沙夜が処女だったころには考えられない
ほどに性感が高まっている。
「いやらしいな、私……すぐにエッチなことを考えちゃう……せっかくプロ作家に近づいたってい
うのに」
沙夜は唇をかみ締めた。
どうしても彼女の心は晴れない。
本当は、彼女にもその理由が分かっていた。
「私が……私が欲しいものは──」
心の中で、自分にとって最も価値のあるものが、以前とは入れ替わってしまっていることを。
「今の私が、一番求めているのは──」
夢ではない。
恋でもない。
脳裏に浮かぶのは、金髪の不良少年の顔だった。

沙夜は放課後の廊下を一直線に歩いていた。
前方から長身の少年がやってくる。
「夏目……くん」
「沙夜ちゃん……」
二人の視線がからみあった。
沙夜は涼の目の前で、龍次に犯され、オルガスムスを極めてしまった。一方の涼も沙夜の前で楓
と交わり、童貞を捨てた。互いに恋心を抱いていたはずの二人が──肉欲に負けて、あっさりとす
れ違ってしまった。
それ以来、一ヶ月近くの間、二人は口を利いていなかった。気まずい空気が二人の間で流れる。
「あ、あの、この間のこと……なんだけど」
「この間?」
「い、いや、一ヶ月もたって今さらかもしれないけど、さ」
涼がしどろもどろの口調で弁解を始める。
あれは事故なんだ。お互いに気持ちがどうにかしていたんだ。僕は気にしないから、君もあのと
きのことは忘れよう。もちろん他言は無用だよ。こんなことが他人に知れ渡ったら、何を言われる
か分かったものじゃない。いいよね、沙夜ちゃん。もう一度、やり直そう。
延々と弁解を重ねる涼を、沙夜は冷めた目で見つめていた。

どうしてそんなに必死で言い訳しているの?
私たちがお互いに別の相手とセックスをした事実は変わらないでしょう?
性欲におぼれて暴走した事実は、何も変わらないでしょう?
夏目くん──今のあなたは、なにか滑稽だわ。
彼への憧れが、憑き物が落ちたように消えていく。彼女は、噂で聞いてすでに知っていた。涼が
あの後、楓と付き合い始めたことを。
恋愛感情か、それともただの性欲で結びつきあっているのかは分からない。だがそれなりにお似
合いのカップルなのだろう。少なくとも楓は本気で涼のことが好きなようだし、涼もまた満更でも
なさそうだから。
(私、この人のことが好きだった……のよね)
龍次にレイプされたことを涼に打ち明けたとき、確かに心が通じ合った実感があった。だが龍次
に犯されるたびに……肌を重ねるたびに……そんな甘やいだ気持ちが吹き飛んでいく。
沙夜はそっと腹部に手を当てた。そこに宿るものを愛おしむように。まだお腹の膨らみはほとん
ど目立たないが、そこには確かな脈動が息づいていた。
自分の心を、そして体を本当に支配している人物はただ一人。そう、沙夜が本当に求めているの
は──

私が一番、欲しいものは。

圧倒的な肉の感覚が、花芯を疼かせる。
「沙夜ちゃん」
何か言いかけた涼を制し、沙夜はそっと彼に顔を寄せた。驚く彼を制して、唇にかすめるような
キスを送る。ずっと夢見ていた、涼との口づけ。だが実際にこうしてキスをしても何の感慨もわか
なかった。
最初で最後の、キスだった。
「さよなら、夏目くん」
沙夜が淫蕩に微笑む。
初恋に、別れを告げるように。
「私は、彼のところに行く──」

放課後の屋上に行くと、すでに金髪の少年が待っていた。
「よく来たな、沙夜」
龍次がふーっとタバコの煙を吐き出す。
「肉奴隷調教の仕上げだ。今日はお前の、最後の処女ももらうぜ」
「さ、最後って……」
言いかけて、沙夜はハッと気づいた。
「まさかお尻に──」
「お前が俺のものだって証を刻んでやる」
「…………」
「どうした、嫌なのか」
嫌ではなかった。沙夜はもう、彼のものなのだから。
「あ、いえ、怖くて」
今までに何度となく膣を貫かれてきた沙夜だが、排泄器官を犯されるのは初めてだ。一度も異物
を挿入されたことのない未通の場所で、彼を受け止めることには不安があった。
「へっ、こいつに手伝わせてやるさ」
扉を開けて現れたのは美緒だった。風が舞い、セミロングにした亜麻色の髪が大きくなびく。
なぜ、あなたがここにいるの……と言いかけて、沙夜はすぐに気づいた。
「そう……美緒ちゃんも、なのね」
「へっ、とっくに俺の奴隷なんだよ」
美緒が悲痛な顔でうつむく。彼女がそっとプリーツスカートをたくしあげた。すらりとした両脚
があらわになる。その付け根には黒い茂みが息づいている。美緒は下着を着けていなかった。おそ
らく龍次の命令だろう。
沙夜はゆっくりと歩み寄り、親友を抱きしめた。
「そんな顔しないで。二人で一緒に……一緒にこの人に尽くしましょう」
沙夜は、龍次の子供を身籠っている下腹部をそっと押し付けた。その仕草で、彼女が妊娠してい
ることを悟ったのだろう。美緒は信じられない、といった顔で親友を見つめた。
「沙夜、あなた──」
「私たちはもう彼から逃れられない。一緒に、堕ちていくだけなのよ」
親友の瞳を覗き込み、言い含める。
龍次の子供を身籠ったことを知ったのは、つい先日のことだった。両親はもちろん、龍次にもま
だ明かしていない事実。
どうすればいいのか沙夜には分からなかった。産めばいいのか、堕胎すればいいのか。
高校一年生で妊娠した、などと周囲に知れれば大変な騒ぎになる。両親にこのことを言えば、卒
倒するかもしれない。
ただ──今は何も考えたくなかった。今はただ龍次に抱かれ、あの圧倒的な快楽を求めている。
少なくとも今だけは。
男を象徴するたくましいもので、自分の奥深くまでを貫いてほしい。そうして性の愉悦を味わい
たい。味わいつくしたい。それだけで頭の中がいっぱいだった。
沙夜の気持ちが伝わったのか、とろん、と美緒の瞳が潤む。
「──分かった」
決意を固めたように、彼女の背後に回った。
「これ、邪魔だからとっちゃうね、沙夜」
美緒が言って、制服のスカートが引き摺り下ろされる。続いてショーツも取り去られ、沙夜は純
白の下半身を露出した。
「沙夜のお尻ってかわいいね。胸はこんなに大きいのに、お尻のほうはキュッと締まってるじゃな
い」
あらわになった尻の合わい目に、美緒がしゃがみこんだ。
「じっくりとほぐしてあげる。じゃないと痛いわよ。あたしも経験あるけど、初めてのときってロ
ストバージンのときよりずっと痛いんだから」
美緒は小さく笑うと、お尻のすぼまりにキスをした。ぞろり、という感触とともに肛門周辺を舐
めあげられる。
「きゃっ……変な感じ……」
排泄に使う恥ずかしい場所を、親友に舐められている。途方もない背徳感で、沙夜は全身を振る
わせた。
未知の性感が急速に目覚めていく。ひく、ひく、と排泄の穴がうごめいている。
「そろそろ、いいだろ。どけよ美緒」
美緒を押しのけ、龍次が沙夜のアヌスにいきりたったものを宛がう。
「入れちまうぞ、沙夜。今からケツの穴にぶち込んでやるからな」
「ま、待って……まだ、怖いの……お願いだから、もう少し待って!」
沙夜は涙を浮かべて懇願した。
不良少年は意に介さず、つんつんと己の分身でアヌスを突いている。ぐい、と放射状のシワを広
げて先端がめり込んだ。
「待って……私、まだ」
龍次は──待たなかった。沙夜の引き締ったヒップを抱え込み、無情に腰を押し進める。
「おらっ、観念しな!」
亀頭に押され、尻の窄まりが限界までへこんだ。秘めた穴が、めりめりと音がしそうなほど押し
開かれる。
「あっ、駄目……あ……くぅっ……! 駄目ぇぇぇぇぇっ!」
沙夜のつぶらな瞳が見開かれた。尻の穴が燃えるように熱い。力ずくで侵入してくるものを括約
筋が必死で押し戻す。
「硬いな」
龍次はこともなげにつぶやき、なおも乱暴に腰を押し込んできた。
「あ、あうっ! 痛いっ! 痛いですっ!」
肛門を引き裂かれるような痛みに、沙夜は絶叫した。あまりの痛みに目の端から涙が一筋こぼれ
落ちる。
「そら、もう少しだ」
龍次が沙夜の臀部を思いっきり引き寄せた。ずぶり、と奥まで貫かれ、沙夜の体が痙攣した。と
うとう尻の穴で変態的な結合を果たしてしまった。
「根元まで入れてやったぜ。ケツの穴も最高だな、優等生」
「うう……」
生まれて初めて体感した肛門での交接に、沙夜の体がぶるぶると震える。あまりの苦しさに噴き
出した脂汗が全身から垂れ落ちる。
「苦しいの……抜いて、お願い」
「抜いて、ほしいのか」
龍次が耳元でささやく。得意げな声だった。沙夜が自分に逆らえるわけがない、と確信している
かのような。
この少年が自分のすべてを奪いつくし、凌辱し尽くしたのだ、と沙夜は今さらながらに悟った。
龍次が円を描くように腰を軽く揺すってみせた。その動きで、限界まで押し広げられた肛門がさ
らに拡張される。
「駄目、動かさないで……痛い」
龍次は沙夜の懇願を無視し、立ちバックの体勢でおもむろに突き始めた。一突き一突きごとに、
沙夜のバストがぷるんっと揺れる。
「あはは。沙夜のおっぱい、可愛い」
美緒が嬉しそうに笑って、親友の乳房に手を伸ばした。淡いピンク色の乳首をこりこりと揉みし
だく。乳房は沙夜にとって一番の性感帯だ。快感を知り尽くした同性の愛撫に、沙夜は甘やかな歓
声をあげた。さらに美緒は美しいバストを撫でさすりながら、沙夜の唇に吸い付いていく。
「んっ!」
美緒に唇を奪われ、沙夜は大きく目を見開いた。お互いに舌を絡めあい、積極的に唾液をすすり
あう。美少女同士が唇を貪る淫靡な光景に、龍次は興奮したのかピストンを加速させる。
異常なセックスを体感しているうちに、いつしか痛みは薄れていた。代わりに沸きあがってきた
のはどうしようもない悦楽。快美感。背徳感。
背筋がジン、と痺れるような感覚──
「なに、これ……きちゃう……気持ちよくなっちゃう……!?」
自分の中に生まれた異様な感覚に、沙夜は戸惑いを隠せなかった。
「こっちの穴も最高だな。最高の牝奴隷だぜ、お前は」
勢いよく腰をグラインドさせ、龍次が哄笑した。
「お前は──お前といれば、少しは退屈せずにすむ」
「うううう……」
沙夜は眉を寄せてうめいた。
下半身が燃えるように熱かった。
乙女にとって不浄の穴をえぐられているのに。許してはいけない場所を思う存分犯されているの
に。どうしようもなく気持ちよかった。
「もっと……もっと犯して」
沙夜は屈服の言葉を口にする。
「あああーっ、イクっ! 私、イッちゃうう!」
「イッちまえよ、沙夜。これから毎日でも犯してやるからよ!」
「あああっ、イクぅぅぅぅぅっ!」
沙夜が絶叫する。今までで最大のオルガスムスに達すると同時に、直腸の中に熱いものが注ぎ込
まれた。

 

【終わり】