二年二組の教室は今日も喧騒に包まれている。
授業が始まる前のひととき、朝野真里(あさの・まり)はお気に入りの文庫本を読んでいた。
真里は、白天(はくてん)女学院でもトップクラスの成績を誇る優等生だ。
お下げ髪におとなしげな容貌、野暮ったい黒縁眼鏡という取り合わせは、いかにも優等生然とし
たルックスだった。ほっそりとした色白の肢体は、運動にまるで縁がなさそうな印象を与える。
真里は、ふう、と小さくため息をつく。手元にあるのは新人女流作家の書いた恋愛小説だ。清純
な少女が何人もの男との性体験を通して、変わっていく様子が描かれていた。レイプから始まる純
愛、がテーマらしい。恋愛経験のない真里は、ハードな性描写を読むだけで体の芯が熱くなってし
まう。
と、
「今日さー、明倫館大学の人と合コンやるんだけど一緒にいかない?」
「ごめん、部活があるから」
真里のとなりで、クラスメートの少女たちが話している。
合コンに誘ったほうの少女は桐原若葉(きりはら・わかば)。
誘われたほうは真田操(さなだ・みさお)。
操は、見るからに勝気そうな美少女だった。釣り目がちの瞳に形のよい眉。綺麗な黒髪をポニー
テールにして、赤いリボンで束ねている。すらりと伸びきった四肢は高校生らしい健康的な色香を
感じさせた。
一方の若葉は栗色のショートヘアに明るい容姿。体中から元気を発散させていて、操に負けず劣
らずの美しい容姿をしていた。
「剣道ひとすじだねっ、操は」
「もうすぐ大会だし」
そっけなく告げる操。
「ンなことだからオトコが寄ってこないのよ。そんなんじゃ、いつまでたってもバージンのままだ
ねっ」
「ば、バージンって……余計なお世話よっ」
操の顔が赤く染まった。どうやら図星らしい。
「ウブだね。うふふ、とーぶん彼氏はできないかなっ」
若葉が笑う。
「そんなことないわよ。操ちゃん、綺麗だから」
真里が横から助け舟を出す。
操は──真里にとって憧れだった。美しく、凛々しく、剣を取らせれば無敵の美少女。

「あ、真里でもいいよ。どう、今日の合コンに参加する?」
「私も、合コンはちょっと……」
真里は慌てて断った。
彼女は合コンというものを経験したことがない。彼女にとっての『合コン』のイメージは、ナン
パな男が参加した女を口説くための、軽薄な飲み会だ。
「知らない人と話すの、苦手だから」
「うーん……あなたたちが来たら、絶対モテると思うだけどなー」
若葉は心の底から残念そうにつぶやいた。
「そういえば、最近ウリが流行ってるんだって」
と、いきなり話題を変える。
「ウリ?」
「援助交際ってやつ。うちのクラスでもやってるコ、いるみたいだよ」
「嫌だな、そういうの……」
真里は眉をひそめた。好きでもない男に体を許すなど、彼女には考えられないことだった。
「ま、あたしならお金次第で考えるけど」
若葉が冗談めかして笑う。
真里や操と違って、若葉はすでに男性経験があるらしい。
処女の真里には未知の世界だが。
(若葉ちゃんって、セックス……したことあるんだ)
我知らず、ため息が漏れた。

放課後の教室に居残り、真里はひとり今日の復習をしていた。別に家に帰ってからやってもいい
のだが、教室の中のほうが落ち着くのだ。
ひととおりの復習を終え、真里は教科書を閉じた。
そろそろ帰ろうかな……と腰を上げたとき、教室のドアが乱暴な音を立てて開いた。
「こんな時間まで居残りしてお勉強かよ」
入ってきたのは、岩のような巨体をした大男だ。
ぎろり、とした目が真里を見据える。
「森先生……」
真里がかすれた声でうめいた。
「な、なにか用でしょうか……」
思わず声が震える。

正直言って、目の前の男が苦手だった。
セクハラ教師と悪名高い森勝正(もり・かつまさ)。脂ぎった四十代の中年男で、担当教科は体育。
挨拶代わりに女生徒の体に触るのは当たり前。授業中に卑猥な冗談を言ったり、更衣室に盗撮カメ
ラを仕掛けたという噂もある。
森が無言で近づいてくる。
真里は震えながら後ずさった。
窓から差し込むオレンジ色の夕日が、二人の間に影を作る。小柄な体に身につけた黒い制服は、
ミッション系の高校らしく修道服を機能的に改造したようなデザインだ。真面目な優等生然とした
彼女の容姿に、その制服はとてもよく似合っていた。
一方の森は、無骨な造りの顔だちに筋肉質な体。典型的な体育会系教師といったいでたちだった。
肩に担いだ竹刀は床にたたきつけると、乾いた音が響き渡った。
誰もいないことを確認するように、森が周囲に視線を走らせる。真里は恐怖に身をすくませて後
ずさった。
「なんだ、怖がってんのか」
森がにやりと笑った。
「わ、私、そろそろ帰らないと……」
真里はかろうじてそれだけを口にした。
「帰る? どこにだ」
前触れもなく、目の前に竹刀の切っ先が突きつけられた。
「っ……!」
「帰らせねーよ。せっかく無人の教室で二人きりなんだ。こんなチャンスはめったにないからな」
「チ、チャンスって……?」
森には、何年も前から黒い噂がつきまとっていた。セクハラ教師、という汚名にとどまらない噂。
何人もの女生徒が、この教師にレイプされたという噂だ。
被害者と目される女生徒がそろって口をつぐんでいるため、真相は謎のままだが、こうして森と
向き合っていると噂は真実なのではないか、という疑惑がわきあがってくる。
「服を脱げ」
男が命令した。醜い表情には欲情の色が浮かんでいる。
「ぬ、脱げ、って……」
「聞こえなかったのか? 生まれたまんまの姿を俺に見せてくれって頼んでんだよ」
森が竹刀を突き出す。硬い切っ先が、小ぶりな乳房にめりこんだ。
「うっ……」
鈍い痛みに真里は顔をしかめる。
若い娘らしく弾力のある双丘に、ぐりぐり、と竹刀を押し込んでくる。
「い、痛いです……」
「ふん、そのうち気持ちよーくよがるようになるぜ」
「先生、何を──」

「ここまでされてまだ分からねーのかよ。前々から朝野には目をつけてたんだ。真面目そうな優等
生に、セックスのいろはを一から教え込むなんてそそるじゃねーか」
森の口元に邪悪な笑みが広がっていく。男の欲望をここまで間近に感じたのは初めてだった。恐
怖で頭がどうにかなりそうだ。
ねっとりとした視線が全身を嘗め回しているのを感じる。
──このままでは犯されてしまう──
「い、嫌ッ……!」
真里は身をひるがえして逃げ出した。
逃げなければ──
ドアにたどりついたと思った瞬間、目の前を黒い影が横切った。森が、信じられないほどのスピ
ードで彼女の前方に回りこんだのだ。
体育教師だけあって圧倒的な運動能力だった。
少なくとも体育が苦手な真里についていけるスピードではない。
とても逃げられない。
真里の心に絶望感が広がっていく。
「こんなにオイシイ獲物をむざむざと逃がすかよ」
丸太のような足が跳ね上がり、真里の腹部を捕らえた。小柄な体はひとたまりもなく吹き飛ばさ
れてしまう。
「ぐっ……うっ……」
腹を押さえて床の上を転がる真里を、森が傲然と見下ろした。
「悲鳴を上げても無駄だぜ、この階の他の教室は全部見回ったが、残っている生徒はいなかったか
らな」
嘲笑交じりに告げる。
真里は倒れたまま、魅入られたように動きを止めた。
恐怖で、思考が完全に停止している。森の放つぎらぎらとした眼光が、抵抗する気力を根こそぎ
奪っていくのだ。
(駄目……こんなの……)
気力が、萎えていく。
「脱げ」
森がふたたび鋭い眼光を放つ。
彼女に見せ付けるように、竹刀を頭上に振り上げた。
真里の、眼鏡の奥の瞳が揺れた。
抵抗──できない。
真里は震える手つきで漆黒のブレザーとスカートを、さらに下着までをもすべて取り去る。勉強
ばかりで運動に縁がない手足は細くしなやかだ。白い陶磁器のような裸身はまるで日本人形のよう
だった。
「ほう。なかなかいい体してるじゃねえか」
男がじろじろと裸身を見つめると、真里は激しい羞恥を覚えた。年頃になってからは親にも見せ
たことのない、オールヌードだ。
羞恥心で体が小刻みに震えた。
男は床に跪くと、桜色の乳首を汚らしい唇で吸いたてる。ぬめぬめとした感触が乳首を這い回る
おぞましさに歯を食いしばって耐えた。
抵抗すれば、また竹刀が飛んでくるのは分かっている。あるいは、今度は直接拳が飛んでくるか
もしれない。
静かな教室の中に、ちゅぱ、ちゅぱ、と淫らで湿った音だけが鳴り響いた。
屈辱、だった。
自分は恋人でもなんでもない男に、体をいいように弄られている。まだ男に触れさせたことのな
い胸に、無遠慮なキスを許している。
「よーし、そろそろ犯してやる」
乳首をたっぷりと吸い付けると、森は口元の唾液をぬぐった。真里を冷たい床の上に押し倒す。
たくましい体がのしかかり、両足を大きく割り開かれた。
「ひっ……」
ごくり、と真里は息を飲んだ。
もう逃げられない。処女を、失ってしまう。
乱暴にショーツを取り去られると、薄いヘアに縁取られた肉の割れ目があらわになった。もちろ
ん男の目に触れさせるのは初めてだ。
「綺麗なマ○コしてるじゃねえか。その辺のコギャルみたいにガバガバのマ○コじゃなくて、ぴっ
ちりと閉じてやがる。うお、たまんねーな」
まぶしいばかりの処女器官を目にした男のペニスが勢いよくそそりたった。
「と、犯す前に確認だ。お前、本当に男を知らねえのか」
真里は答えない。
森の手が伸びてきて、のど元をつかまれた。強烈な締め付けに息が詰まる。
「っ……!」
ぎらつく視線が真里の顔を覗き込んだ。
欲望にまみれた瞳──
「どうなんだよ。処女なのか」
処女に相当のこだわりがあるのか、森がしつこく尋ねてくる。のど元を締め付ける手が離れ、よ
うやく呼吸がつながる。

ごほ、ごほ、とむせた。
「男とハメあったことがあるのか、って聞いてるんだぜ。答えろよ、真里」
真里は羞恥に震えながら小さくうなずいた。
「し、処女……です」
「こうやって男に弄られるのも初めてってわけだ」
敏感な部分をぐっと押し込んだかと思うと、肉芽をコリコリとしごかれる。割れ目の縁をなぞる
ようにして指でいじくられる。
「んっ……」
こんな状況だというのに、背筋に甘い痺れが走った。ゴツい外見とは裏腹に、女の扱いに手馴れ
ているのだろうか。巧みな愛撫で、下腹部がしっとりと濡れてくる。
「濡れてきたか。処女の癖して敏感じゃねーか」
「そ、そんな、私は……」
「じゃあ、いただかせてもらうぜ。どうせいつかは誰かにあげちまうんだ。さっさとこんなもん失
くしたほうが、身も心も自由になれるってもんだ」
白磁色に輝く裸体にがっしりとした肉体がのしかかってくる。すえた匂いを放つ肉棒が未通のホ
ールに押しつけられた。
ぐちゅ、とむき出しの粘膜同士が触れ合う音がした。
真里はきつく目を閉じて、唇をかみしめる。
(どうして……どうして私がこんな目に……)
理不尽だった。
何も悪いことなんてしてないのに。
子供のころから勉強一筋で真面目に生きてきたのに。
「へっへっへ、入るぜえ」
男は容赦なく一気に押し込んだ。膣の入り口が、すさまじい圧迫感とともに押し広げられる。男
根がズブズブと音をたてて、真里の胎内に侵入していく。
「ああっ、嫌ァ!」
真里はたまらず悲鳴を上げた。膣が引き裂かれるような痛み。むき出しの粘膜をヤスリでこすり
あげられるような感触。
「やめてください……痛いんです、やめて──」
だが森は容赦しない。力任せにグイグイと男根を押し込んでくる。未通の肉洞を押し広げ、自ら
の証を刻印していく。
やがて──
「もう一息だ。そら、奥まで入るぞ!」
みちりっ、と裂ける感触がして、男のペニスが肉孔いっぱいに収まった。卑劣な中年教師に大切
な純潔を奪われた瞬間だ。
「嫌ァ……!」
猛りきったペニスが奥まで届いている。自分が処女を失ったことを実感し、真里は両手で顔を覆
った。
「抜いて、抜いてください」

「おお、きついぞ! 俺のを締め付けてくるぞ!」
森が興奮したように叫んだ。肉厚の唇が真里の純潔な唇を奪い、口の中にぬめぬめとした舌が侵
入した。
「ん、むっ……」
処女だけでなく、生まれて初めてのキスまで奪われ、真里は苦しげに喘いだ。
と、同時に男の体が胎内で動きだした。屈辱で燃え上がりそうな下半身を犯しながら、森は形の
よい乳房に吸いついた。
「お、オッパイなんて舐めないでください」
乙女らしい潔癖感で真里が悲鳴を上げる。
森は意に介さず、乳首を汚らしい唇と舌でなぶった。
「んっ……!」
生理的な刺激で乳首が勃ってくる。それに連動してジン……と下半身全体に甘い痺れが走った。
「な、なんなの、これ……!?」
真里は戸惑いをあらわに叫んだ。深々と貫かれた下半身が急激に熱くなる。
(そんな、レイプされているのにどうして!?)
これが──セックスの快楽なのだろうか。
ポルノ小説のように、無理強いされた肉交で感じるなど信じられなかった。だが、体の反応はご
まかせない。
次第次第に、甘美な波が股間を中心に広がっていく。
どうしようもなく気持ちよかった。
「ひぁぁぁっ!」
尻の肉を掴まれ、激しく腰を揺さぶられた。たくましいモノに奥まで串刺しにされる。鮮烈なエ
クスタシーが真里の背筋を突き抜けた。
「イ、イキますっ、ダメ、イクう!」
「へっ、男を知ったばかりでもうイクことを覚えたのかよ」
森は腰の動きを止めて、馬鹿にしたような口調で言い放った。
真里は応える気力もない。初めて味わう『女』としての悦楽に、ぐったりと四肢を投げ出してい
る。
森は彼女の腰を抱え込むとピストン運動を再開した。
自身を一気にクライマックスまで持っていこうという性急な動きだ。ぐちゅ、ぐちゅ、と水っぽ
い音を鳴り響かせ、たくましいモノが少女の膣を出入りする。
やがて射精感が込み上げてきたのか、森は嬉しげに息を弾ませる。
「俺もそろそろイキそうだ。どこに出してほしい?」
「どこって……」
真里は、快楽で潤んだ目を中年教師に向けた。

「顔か? 胸か? 腹か? それとも──」
にやり、と口元に深い笑みが浮かんだ。
「まさか、中へ……?」
真里の顔が血の気を失った。
「そうか、中に出してほしいんだな。じゃあお望みどおりにしてやるぜ!」
「や、やめて……中だけはやめてください!」
必死の懇願にもかかわらず、中年男のピストンは加速度を増していく。
(もし……もし、森先生の子供を身篭ることになったら!)
犯され、その相手の赤ん坊を妊娠してしまう。普通の女子高生にとって絶対的な恐怖だった。
目の前が絶望感で真っ黒に染まっていく。
妊娠したくない。
妊娠なんて、絶対にしたくない。
こんな下劣で卑劣な男を相手に──
「お願い、お願いですから、外に出して」
「おいおい、つれないこと言うなよ。俺たちはこうしてハメあった仲だろ。仲睦まじくナマ出しと
いこうぜ」
「嫌、嫌です……やめて!」
真里は必死で男を押しのけようとするが、森はがっしりとつかんで離さない。
「そんなに嫌がるなよ。そうら、イクぞ! んっ、ううっ……」
邪悪な笑みを満面に浮かべると、中年教師は真里の膣にドクドクと射精した。
「い、嫌ァッ! あ……う……」
お腹の奥が熱い精液で満たされていく感覚に、彼女はショックで打ちのめされた。
「ん……んく」
「ふう、ごちそうさん。処女の味は極上だな」
満足しきった顔で、森は哀れな少女の秘孔から肉棒を抜き取った。どろりとした白い精液が彼女
の股間から滴り落ちている。
「嫌ァ……」
真里は敗北感で顔を覆った。
自分は、汚されてしまった。もう綺麗な体には戻れない。
無人の教室に、饐えたような性臭だけが漂っていた。

 

【終わり】