大学生の佐伯優子は、兄殺しの容疑で逮捕され、韮沢署に連行された。
尋問した秋本茂という男は、初めから優子を犯人と決め付けていた。
なぜ自分の言うことがまるで信じてもらえないのか、優子には理解できない。
捕まった当初は困惑したものの、話さえ聞いてもらえれば大丈夫だと、どこかで安堵していた。
しかし、あの秋本という刑事は、まるで聞く耳というものを持ち合わせていなかった。
兄の部屋にいた黒いスーツの男のことを喋っても、嘘だと露骨に決め付けて苛立ちを露わにし、
時には机を叩いて優子を恫喝した。
「一体、これからどうなるの? 私、本当に刑務所に行くのかな……」
兄を殺されて誰よりも悲しいというのに、この仕打ちは一体何なのだ。
途方に暮れていると、強い地震が起きた。留置所に浸水が始まった。
「冗談じゃないわ」
優子は身の危険を感じて脱出を試みたが、すんでのところで秋本に目撃されてしまい、
手錠を掛けられたあげく、留置所に閉じ込められてしまう。
さらに、あの男は仲間に、
「もう、ここには誰もいないぞ!」
と言ってのけたのである。
優子は、絶望感に体を押さえつけられるような気がした。
だが諦めては終わりだ。優子は秋本の理不尽さと、手錠の不自由さに憤りながらも、
なんとか留置所から脱出した。
婦警の制服を拝借し、警官達の目を掻い潜る。
けれど不運は続く。
街頭テレビで流れたニュースを見たのか、秋本に尋ねられたウェイター姿の男が何と、
優子の方を指差すではないか。
結局、優子は再び捕まって、ワゴンタイプの警察車両に押し込められた。
「まったく、てこずらせやがって」
秋本は唾を吐きかけかねない剣幕だ。
「なんでお前みたいな殺人者の命まで助けなきゃならんのだ。刑務所に入れたって、
食わせるだけで税金の無駄だ」
ジロリ、と優子を睨む。
「出所したら、どうせまた再犯するんだ。人権だと? 殺人犯に人権だと? 笑わせる」
優子はこの、らっきょのような風貌をした小柄な男を、どうにも生理的に受け付けない。
薄い頭髪に釣りあがった目、鼻は横に広く、唇は厚い。
そんな優子の嫌悪感が無意識に伝わるのだろう。秋本は優子の胸倉を掴んだ。
「殺人者に裁判なんか要らないんだ。さっさと殺しちまえばいいんだ」
優子は恐怖を感じた。この男は本当に自分を殺すのではないか、と。
だが秋本は、ふと気づいたように瞬きをして、優子の体を下から上へとなめまわしていた。
「婦警の格好なんかしやがって」
普段、自分のことを散々、陰口で蔑む婦警達のことが思い出される。
少しめくれ上がったスカートからは、黒いストッキングに包まれた脚がスラリと伸びていた。
「まったく、最近のガキは頭がカラッポのくせして、体だけは発達してやがる」
「え……」
「そういえばお前、脱走しようとした時に、見逃したら何でもすると言ったなぁ」
「は、はい……」
「考えてやらんこともないぞぉ?」
秋元の顔に、だらしない欲情の笑みが浮かぶ。同時に手が伸び、優子の胸をまさぐっていた。
「な、なにするんですか!」
「なんでもするんだろ!? この売女め!」
「そんな意味じゃ……!」
「うるさい! 佐伯優子、この殺人犯が!」
秋本は優子のブラウスの前を力づくで引き裂き、スカートをまくし上げる。
「い、いやぁ!」
叫び声を上げるが、ワゴンの周囲には誰もいない。しかも豪雨の雨音で、誰かに声が届くこともない。
「観念しろ!」
今にも口端から唾液を垂れ流しそうな秋本は、ストッキングをビリビリ破っていく。
ブラジャーを上にずらし、覆い被さるようにして露出した乳房を口に含む。
ズッ ジュルッ
音を立て、まるで喰いついているかのようだ。
まだ少女らしさを残した優子の体と婦警の格好は、秋本の倒錯した嗜好にとって格好の餌食だった。
優子は、初めて男に乳首を吸われた。初めて体中に男の手が這いずった。
相手は好きでもない、まして秋元のような生理的に受け付けない男だ。
優子のきめ細かく、繊細な肌には、秋本の無骨な手は凶器的ですらある。
「なんだ、まだ男を知らないのかぁ? 最近のガキにしちゃ、ちと遅いんじゃないのかぁ?」
優子の顔を覗き込むようにしながら、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべる。
「ようし、俺が女にしてやるよ」
秋本は自分のベルトに手をかけた。
抵抗しようにも、手錠のせいで動きは限られている。秋本は悠然と自分の服を脱ぐだけだ。
「ひっ……」
優子は息を呑む。秋本のペニスはすでに勃起していた。
しかも、小柄な体躯のわりに凶悪なほど大きい。一瞬、鈍器かと見紛った。
幼い頃、父や兄と一緒に風呂に入って男性器は見ているが、もちろん勃起などしていないし、
そもそも、これほど巨大ではない。
優子は恐れすら感じた。
「チッ」
秋本は舌を打った。自分のペニスを見た女の反応は、いつもこんなものだ。
ただでさえこの容貌のせいで疎まれるのに、ようやくセックスまで漕ぎ付けても、
大きさを理由に嫌がられる。断られることすらあった。
「女ってヤツは、頭にくるぜ!」
秋本にとって、性行為を強いるのは初めてではない。
学生時代には自分を馬鹿にする女を犯し、写真に顛末を収めて口止めしたことがある。
警察官になった後も、万引きした女を見つければ相手を見て脅した。
若ければセックスを要求し、年寄りなら金品を要求する。
前者なら、親や夫にバラされたくなかったら分かってるな? とホテルに連れ込んで犯すわけだ。
ホテル代は当然、女持ちである。
「おい」
座椅子に片脚を乗せ、優子の顔の前にペニスを突き付ける。
「しゃぶるんだ」
優子は涙目で、首を横に振る。
「今どきフェラもしない女なんて面倒なだけだ!」
叩く仕草をして見せて、無理やり口に含ませる。
「噛んだりしたら容赦せんからな。丁寧にやるんだ」
優子の頬を涙が伝う。我慢して、口の中に押し込まれたペニスを舌で刺激する。
秋本は吐息を漏らした。
「なんだ、良い舌使いじゃないか。本当は好きなんじゃないのか?」
ペニスを抜くと、今度は竿をなめるように促す。
優子は言われるがまま、手錠をかけられた手を、はだけた胸の前にして、ペニスに舌を這わせる。
手の抜けば殴られるだろうと、思いつく限りの行為をしてやった。
「はぁ、いいぜ。お前、兄貴相手にしてやってたんじゃないだろうな。初めてじゃないだろ」
次々と浴びせられる侮辱の言葉に、優子は半ば錯乱していた。
「せっかくだ、俺もしてやる。有難く思え」
秋本は座椅子から脚を下ろすとしゃがんで、優子の脚を開かせる。
「やめて!」
もちろん抗議は受け入れられず、秋本はショーツをずりさげ、露わになった秘裂に舌を這わせる。
かつて経験したことがない嫌悪感が、秘裂から全身へと駆け巡った。
ジュルッ ズズッ
秋本は優子の太股を抱えるようにしながら、執拗に秘裂を刺激する。
クリトリスをなめ、吸い、舌先を膣口に押し込む。愛液の代用とばかりに、大量の唾液で濡らす。
「さて、いくぞぉ」
秋本はそれまで以上に陰湿、欲情に染まった笑みを浮かべて、
コンプレックスであると同時に自慢でもある、巨大なペニスを膣口に宛がう。
「やめて! やめてください! 他のことならなんでもしますから!」
「うるさい女だ! いい加減、諦めろ!」
なんとか逃れようと優子は体をくねらせるが、秋本は容赦なく、いきなり奥まで挿入した。
「ああっ!」
優子は悲鳴をあげる。初めて男を受け入れる体には、秋本のペニスは拷問に近い。
「痛い!」
「うるさい!」
秋本はさすがに加減したが、優子の頬を張った。
「もっと殴られたいか!? おとなくしくしてりゃ終わるんだ!」
秋本は自分の快楽の為だけに腰を振る。優子の体を道具のように扱って、自分本位で動く。
「いいぞぉ、さすがに処女マンコはキツイな!」
秋本は背徳感に愉悦を覚えた。
「だから犯すのはやめられないんだ!」
ペニスを突き入れながら乳首を吸う。
「やぁ!」
「へっ、濡れてきてるぞ」
それは体を守るための反応だが、秋本にとっては快感を増すためのものでしかない。
「気持ち良いんだろ? 気持ち良いと言え!」
「き、気持ち良いです」
「この淫乱が」
優子は何度も体内を突き上げられながら、これは夢なのではないかと嘆いた。
そう、夢ならどれほど良いか。兄が殺されたことも、自分が容疑者であることも。
そして今、犯されていることも全て夢なら良いのに……。
「いいぞぉ、こりゃ名器だ。ははっ」
(早く終わって……!)
優子は目を瞑り、手錠をかけられた両手を組んで、ひたすら耐える。
「フン、俺が憎いか? 憎い奴のチンポをマンコに咥えこんでる気分ってのは、どんなもんだ?」
優子の嵐が過ぎ去るのを願うような態度は、秋本は嗜虐心を刺激したに過ぎなかった。
秋本は優子の頬をネットリなめ上げる。
「中に出して孕ませてやるからな!」
「え、い、いや!」
思わず、優子は目を開いた。視界に入るのは腰を動きを速めた秋元の姿だ。
「ダメ、せめて外に!」
「黙れ!」
優子は、自分の中でペニスが脈打つのが分かった。
ドクッ ドクッ
秋本は怒鳴ると同時に、膣内に大量の白濁液を叩きつけていた。
「ふぅー」
行為が終わった後も、秋本はしばらく体を離さず、優子の上に居座っていた。
優子は秋本の下で嗚咽を漏らして泣いていた。それすらも秋本にとっては快感である。
唇を吸い、舌をねじ込んで絡ませる。
「よかったぞ、佐伯優子。お前のマンコは最高だ」
言葉を浴びせながら何度か腰を往復させ、最後の一滴まで注ぎ、やっとペニスを引き抜く。
奥に放たれた精子は、中々出てこない。秋本は指を突っ込んで、かき出すようにする。
ドロッとようやく現れたそれは、まるでゼリーかというほどに濃厚だった。
「ほれ、初めて中出しされた精子だ」
秋本は優子の口に精子を押し込み、ペニスも口で掃除させた。
優子はショックで動けず、膣口から白濁液を垂れ流したまま、
だらしなく両脚を開き、伸ばしている。
秋本は、まるで朝の出勤時かのように平静に、濡れたシャツ、
濡れたスーツを着た。まるで悪びれる様子がない。
「ここもそろそろ浸水だ。せいぜい達者でな」
秋本はコートを羽織ってワゴンを出て行った。鍵が掛けられる音がする。
「………」
一日のうちに、あらゆることが起こり過ぎた。
優子は何もできず、犯されたままの姿で虚空を見ていた。
(もう嫌だ。もう……)
秋本は、ここが浸水すると言った。
(このまま死んだって、もういい……)
例え生存しても、立ち直る自信がなかった。
その時、大きな揺れが車を襲った。優子が反射的に悲鳴を上げると同時に横倒しになる。
「……う」
体を打って呻く。だが、見ると後部の扉が衝撃のせいか開いている。
「………!」
光明が開けた思いだった。それまでが嘘のように、全身に活力がみなぎっていた。
歯を食い縛り、涙を流しながら這いつくばって、脱出した。
目前にある階段を上がる。上がり切ったと同時に津波が押し寄せ、
自分が乗っていたワゴンをたちまち飲み込み、さらっていった。危機一髪だった。
「まだ、死ねない……! 負けるもんか。お兄ちゃんを殺した人間を捜して、無実を証明するのよ!」
そして、秋本に犯されたことも全て白日の下に晒して、奴こそ刑務所に入れてやるのだ。
優子は前を見て、進んだ。
おわり